ウチヤマは千葉でサーフィンをしていて、吉祥寺に着いたのは夜だった。





FXRのライトにシゲドウが照らし出されていた。





シゲドウは軽く手を上げた。






ウチヤマはFXRをシゲドウの隣に付けると、エンジンを切った。






サングラス越しに、ウチヤマの表情は窺えなかった。






「ウチヤマくん、俺、九州に帰るわ」





「ああ」





ウチヤマは短く相槌を打った。





「ひとつ謝らなければ、と思って」





シゲドウが言った。





ウチヤマは黙っていた。





「オオカワさんは、あと一歩でオグラくんを潰せた」





ウチヤマは無反応だった。





「俺は、オオカワさんの使いで、ウチヤマくんとオグラくんを潰す為に送り込まれたんだ」






「・・・」





ウチヤマは無言だった。





「でも、ウチヤマくんは俺の指を取り返してくれた。だから、」






「いいよ」






ウチヤマが遮った。






「えっ?!」






シゲドウが顔を上げた。






「おまえが何で来たのか知ってンヨ?だから、どうした?」






「じゃあ、なんで?」






ウチヤマはタバコをくわえた。





同時に空を見上げた。






満天の星空だった。






タバコに火を点けた。






煙を吐き出すと言った。





「トモダチだろ?気にすんな」






「ウチヤマくん・・・」






シゲドウは涙ぐんでいた。






「九州まで、気を付けて帰れよ?」






火の付いたままのタバコを投げ捨てると、FXRのエンジンをかけようとした。






「そうだ、コバヤシくんから電話があって、」






「コバヤシ?なんだって?」






ウチヤマはシゲドウを見上げた。






「ベトを忘れるな、と伝えてくれって」






「ベト?」






一瞬、記憶を辿った。






ああ、名刺がポケットに入ったままだった。






何でも屋か・・・。






「なあ、シゲ」






ウチヤマが言った。






「オオカワのエモノって、なんだ?」






シゲドウは一瞬、首から吊られた左手を見た。






「日本刀だよ・・・」






「・・・そうか」






厄介だな、とウチヤマは思った。






じゃあな、と言って、シゲドウと別れた。