フルサイズバイオリン
2024年 10月5日(土曜日)先月のメインイベントの一つであった、Sくんのバイオリンのサイズアップ。祝 完了!先生から、フルサイズの楽器は一生使っていく前提で探すので、希望の楽器が見つかるまでには、半年から1年くらいを要することもあることを伺っていた。とはいえ、私は今月からこの件に時間に割けないことがわかっていたので、できれば9月中に何とかしたいと思っていた。少しでもよい楽器を見つけるために楽器店を何件も走り回るような熱意は、正直私にはない(苦笑)。Sくんはあくまで趣味で弾いているだけだから、妥当な値段で妥当なクオリティーの楽器を購入できればそれで十分だと思っていた。先生からご紹介頂いた弦楽器専門店2件を訪問したところ、1軒目のお店でSくんがとても気に入った楽器があった。ドイツ製のオールドバイオリン。予算オーバーであるが、とりあえず1週間借りてきて毎日弾いた。Sくんがこの楽器をとても気に入ったので、2軒目のお店に行く必要があるだろうか(面倒だからできれば行きたくないのが本音 苦笑)と思って、先生に相談したところ、可能なら行ってみた方がよいとのアドバイスを頂いた。このお店では、Sくんが5挺弾き比べ、その中で一番気に入ったフランス製のオールドバイオリンを借りてきて、こちらも1週間、自宅で試し弾きをした。楽器としてはドイツ製のものを気に入っていたけれど、その楽器とあわせてつけてもらった弓がいまいちだったようで、Sくんは2軒目から借りてきたバイオリンの弓とケースを気に入っていたようだった。9年前に、今回の2軒とは違う楽器店で、1/10の楽器を4万円弱で購入し、学生スキームに加入して、1/8→1/4→1/2→3/4とサイズアップしてきた。サイズアップの度にこれまでに使っていた楽器を返却し、半額の2万円程度を支払うことで新しい/中古のバイオリンを手に入れてきた。これまで9年間に支払った楽器の総額は、おそらく10万円以下。日本の感覚だと破格の値段だと思う。これまで楽器にお金をかけないできたので、最後のフルサイズの楽器には多少のお金をかけてもいいのかなと思っていた。しかしバイオリンの値段というのは、かなり主観的に設定されている気がした。音色に客観的な基準を当てはめたり、音色の印象を値段に落とし込むことは、難しいと思う。素人には、値段が妥当であるかということは判断が難しい。だからこそ、社会的に信用が高いお店から購入した方がいいようである。日本の感覚だと決して高額というような値段でないバイオリンだけど、我々の当初の予算オーバーだし、値段が客観的に適正なのかもわからない。Sくんがとても気に入ったということ以外、楽器の価値を判断できず、先生にも見てもらった。音が響く、E線の高音がきれいに出る、古い楽器であるにも関わらずコンディションがかなりよいという点で、値段に見合う楽器だと言ってもらい購入を決めた。Sくんは、その楽器に出会った日から、「My first wife!」と言っているくらいだったので、大喜び。Мさんは、楽器になぜそんなにお金を出す必要があるのか、学生スキームに加入していたお店で2万円程度で買えるならそれでいいのではないかと、全く納得していなかったけれど、最終的には仕方なく合意した(苦笑)。私自身、Sくんが気に入ったからといって、予算オーバーの楽器を買ってやる必要があるのか、正直、その答えは出ていない。これまで9年間、自宅にいる際には、ほぼ毎日練習してきたことへのご褒美と思うことで、とりあえず、自分の気持ちを納得させた。本人がそれだけ気に入る楽器に出会えるということは決して当たり前ではないようなので、そういった楽器に出会えたことは、とても幸運だったに違いない。大切に使うんだよということで購入に踏み切った。ペグチューニングが苦手でこれまでその必要もなかったSくんの新しい楽器に、ファインアジャスターをつけてもらうべきか否かという点についても悩んだ。結局、ペグチューニングがうまくできない/時間がかかるということで、チューニングを雑に済ませそうなSくんの姿がありありと想像できたため、ファインアジャスターをつけてもらうことにした。購入後、A線のペグが簡単に緩んで、音がすぐに下がってしまうことに気づいた。購入時にも確認をお願いしたけれど、ファインアジャスターをつければ解決すると判断されたのか、特段の対応がなされなかった。だから購入後もこのA線問題は、私にとっては懸念事項/プチストレスだった。私がこの問題を楽器屋さんに伝えきれていないかもしれないと先生に相談したら、今時点の構造的な問題とその解決策をメールにまとめて下さった。それをもって再度楽器屋さんに連絡し、再度調整してもらうことになったのが、9月30日。翌日Sくんが学校帰りに一人で調整済みの楽器を取りに行き、その後は問題は解決したように見受けられる。以前の楽器に比べて音がきれいなのは、歴然としている。別室にいても、音が伸びる、艶がある、よく響いているのがわかる。Sくんはこの楽器を手にしてから、今の課題曲の練習を終えても、過去に取り組んだ曲や弾いてみたい曲を延々と弾いており、夜9時を過ぎていることもあるから、もう止めるように注意して、練習を終了させている。よい楽器との出会いも一期一会。。Sくんの人生に寄り添い、時に支えてくれるものになればとても嬉しい。Sくんには、この楽器を最大限に生かして、常に楽器の良さを伝えられるように弾いてほしいと思う。いつか私自身が、今この楽器を買ってあげることができて本当によかったと思えるといいな。