ウィーン交響楽団/コンツェルトハウス | ウィーンコンサート三昧

ウィーンコンサート三昧

ウィーン在住だったMusikの、ウィーンにいるとき用オペラ、コンサート日記。

指揮 フィリップ・ジョルダン

ソプラノ Ricarda Merbeth
メゾソプラノ Monika Bohinec
テノール Nikolai Schukoff
バス Günther Groissböck

合唱 Wiener Singakademie

ベートーヴェン 交響曲第9番

すっかり日本の年末の風物詩となった「第九」ですが、
Musikが知る限り、ここ数年のウィーンではウィーン交響楽団が
ジルヴェスター前から1月1日にかけて演奏するくらいです。

指揮はウィーン響次期首席指揮者のフィリップ・ジョルダン。

Musikは実演に接した曲で回数が一番多いのがこの第九ですし、
興味はいかにこの曲を再現するのか、という点に集中してしまいます。

弦は16型、チェロ・バスが下手の対向配置、合唱団は100人以上で
最初から座って待っていました。ソリストはオルガンの演奏台の前に。
オーボエ以外の木管とホルンにはアシスタントもついています。

このような大編成でコンツェルトハウスの大ホールとなると、
ベートーヴェンの残したメトロノームのテンポに合わせるのは
ほとんどの部分で無理が生じるというものです。

が、指揮者の今までの演奏の傾向からしていわゆる伝統的な慣習は
打ち破りにかかってくるだろうな、という予感はありました。

1楽章、速めではありますが、ベートーヴェンの指定には
少し届かないくらい。そのテンポで音響が溢れてしまう箇所は
音を抜いたり、長さを短めにすることで処理していました。

使用楽譜はベーレンライターかと思うのですが、ところどころ
修正を施しているようでした。もしくはブライトコップフの新版?

2楽章はほぼ指定のテンポ通りですが、大きな3拍子に聴こえる
ところは少しテンポが落ちます。これ、どういう意図なのだろう。

3楽章、流れをよくしようとするのと急いて聴こえないようにとの
バランスをうまく取ったテンポ。美しい音はキープしていました。

4楽章、冒頭が少し遅めで始まるのですが、チェロ・バスの
レチタティーヴォでさらに少しゆっくりになった落差があまり
感じられず、これはなるほど、と思いました。

最後のMaestosoは指揮者は速めのテンポにしたかったようですが、
1拍を倍に取るテンポのままというか…。

全体を通して思ったのはバランスがいいな、というコメントに尽きます。

テンポを速めに、全体をすっきりと構築しようとしますが、
無理に音響を壊すことはなく、急くこともなく、停滞もせず。
伝統的な演奏から脱しようとする、ひとつの形であると思いました。

なんだかとても分析的な文章になってしまいましたが…(いつもか?)
Musikは以前はこの曲に熱狂を求めていたなーとか、
いつの間にこんな冷静に眺めるような聴き方になったんだろう、とか、
でもこういう聴き方も楽しんでいるな、とか、いろんなことを
思いながら帰ってきました。

ジルヴェスター、ニューイヤーはこうもりで、ウィーンフィルの
ニューイヤーには行かないことは予告しておきます(笑)。

2011年の記事はひとまずこれまで。
みなさま、よいお年を!