渡辺和子著『目に見えないけれど大切なもの』を読みました。
​表題が示す「目に見えないもの」――信頼、感謝、祈り、そして人の心の陰影。それは形を持たないがゆえに、日常の忙しない流体の中で見落とされがちなものです。
しかし、それら目に見えぬものこそが、私たちの生に真の色彩と深みを与えていることに気付かされます。
​著者の紡ぐ文章は、過度な飾りを排しながらも、研ぎ澄まされた美しさを湛えています。
自らの傷や弱さを隠すことなく差し出し、苦難のなかにあっても静かに咲くことを説くその言葉は、押し付けがましさのない真の強さを宿しています。
​完璧であることを求めるのではなく、与えられた時間を丁寧に生きること。それは、日々の些細な瞬間や、人との目に見えない結びつきに丁寧に向き合うことでもあります。
​喧騒から離れ、己の精神を静かに整えたいときに、そっと引き出しから取り出したくなるような、深い余韻を残す一冊です。