ソ連メロディアレコードの希少盤78rpm LPコンサートを聴いてきました。
激動の20世紀、ソ連という国家の歴史の中で育まれ、そしてソ連崩壊とともに地上から姿を消してしまったメロディアレコードのSP盤や初期LPが堪える、あの独特の深く、時に寂寥感すら内包した芸術性。
その響きを旧西ドイツのZEISS社のIKONスピーカーとアンプ、そしてELAC社のMIRACORDプレーヤーのヴィンテージオーディオによって失われた時代の幻の音が鮮烈に蘇りました。
メロディアレコードから流れる音は決してお仕着せの華やかさではありません。
それは余計なものを削ぎ落とし、スコアの核心へ、そして人間の魂の深淵へとまっすぐに向き合う本物の音楽でした。
このコンサートで心に残った巨匠たちの真実の音を拙い言葉でですがお伝えできましたらと思います。

ガリーナ·バリノワ(Galina Barinova)

気品に満ち、強靭でありながらも高貴な陰影を帯びた音色は、聴き手の表面的な感情を洗い流し、作品が持つ本来の厳格な美しさを表現しています。

ローザ·タマルキーナ(Rosa Tamarkina)

ショパンコンクールでの伝説的な名演をはじめ、天折の天才ピアニスト。
鍵盤から立ち上がる音は信じられないほど繊細でどこか儚く、それでいて心の奥底を激しく揺さぶる強烈な内省の力を秘めていました。

マリア·ユージナ(Maria Yudina)

スターリンすら恐れ、同時に深く敬意を評したという孤高の巨匠。
彼女のピアノは演奏を超えた祈りであり思想そのものです。
装飾を排し、骨格を剥き出しにしたような打鍵から響くのは時代を超越した真実の響きに他なりません。

現代のデジタル音源やクリーンなサウンドでは決して味わうことのできない、人間の精神の限界に挑んだ名演奏家たちの息遣い。
効率や豊かさの陰で、私たちが失ってしまった音楽の真の姿が確かにあのメロディアの黒い円盤の中に息づいています。
西ドイツの堅牢な職人技が光るオーディオはその歴史の澱に埋もれかけていた幻の音を再現し、精神の奥深くに響く時間でした。