映画で知っている方も多いと思います。

E.M.フォスターが生前執筆していた原稿を死後発表した作品です。

表向きは一人の青年の成長を描いた渾身の作品ですけど、

当時同性愛は世間的にもタブー、法律的にも犯罪でしたから男性同士の恋愛を描いた「モーリス」は発表できなかったんですね。


話の流れは映画と一緒ですね。

小説ではモーリスの感情の機微、心の奥深くの気持ちまで

繊細に、時には抽象的に描かれています。


当時同性愛は宗教的にタブーとされていました、

モーリスにとって男性が好きというのは重要な事でしたけど

自分らしく生きることは難しかったと思います。

モーリスにとってカトリックとしての宗教観が

罪悪感などで彼を深く苦しめる要因の一つになっています。

思春期を過ぎるとモーリスは自ずと自分の気持ちを隠して生きるようになります。

また社会的な観念がより強い影響を持っていた時代、

「男はこうあるべき」、「立派な職業につき結婚すること」など社会的な制約がよりモーリスが自分に正直に生きることを難しくしていました。


クライブとの出会いがモーリスを変えました。

誰かを好きになること、

時には勇気のある行動一つで何かを大きく変えてしまうことがあるようにクライブと関わっていくうちにモーリスの価値観、信条、生き方そのものが変わっていきました。


ケンブリッジ時代の学生たちとの知的な会話、

自由な雰囲気、哲学・宗教に関しての独自の考察なども

この小説が持っている魅力の一つだと思います。


小説の後半、召使いスカダーとの出会い、

突発的で野性的な行動、

モーリスが自分でも気付いていなかった、

心の奥底で求めていたもの。


最後の結末も当時の価値観ではありえないことでしたけど。

希望がある終わり方だったと思います。


著者のはしがきではE.M.フォスターが「モーリス」を書くに至った経緯、物語の着想など詳しく書かれていて興味深かったです。

同性愛についても述べていてフォスターは社会のあり方が変化してより偏見、差別的になった現状(1960年代当時)に落胆していました。

当時満を持して書き上げた「モーリス」は出版されことはなく、著者の限られた友人たちのコミニティでひそやかに読まれていました。


また文末の松本郎さんによる解説も「モーリス」の物語の複雑な構造を詳しく論じていて面白かったです。同性愛者だったフォスターと「モーリス」との関係など読み応えがありました。