決して耳には馴染まない機械音が断続的に響いてる。
私がここで何か言ったところで周りにはほとんど聞き取れないだろう
工場の片隅で愛を叫ぶ、という台詞が頭に浮かびふわりと消える
何もかもが馬鹿馬鹿しく感じ、また作業に没頭していく
精神は事切れ、やがて何の感情も抱かないロボットと化す
そう、私はロボット。ただ仕事をこなしていればいいのだ。
楽なもんじゃないか。これで金が貰えるのだ。
そんなときだった
永続的に続くかと思われる機械音に混じって小さな歌声が聞こえてきた
綺麗なソプラノ声。どこかで聞いたことのあるメロディ。
きょろきょろと周りを見渡してみてもその音源は見当たらない。
ついに耳がおかしくなってしまったのか、と思いつつも気になって仕方がなかった
結局その日は、それで終わった。ホントにそれだけで終わってしまったのだ。
誰が歌っているかは分からずじまい。不思議と時間は早く過ぎた。
次の日もまたその声を聞いた。
私は気になりつつも、それ以上は探索しないことにした。
こういうのは知ってしまうと駄目なのだ。
秘密は秘密のままが一番良い。これは友人の受け売りである。
見かけによらず年配のおっちゃんが歌っているのかもしれない
まぁそれはそれで微笑ましい光景ではあるが。
そんな想像を逞しくしながらその日もまたあっという間に過ぎた。
次の日も、また次の日もその声を聞いた
私はだんだんと楽しくなっていた
この声は私が聞いたことのある曲ばかりを歌ってくれるのだ。
おかげで工場の仕事にも精が出た。
しかし、同時に私は疑問に思う。
この声は皆にも聞こえているのだろうか、と。
次の日、私は意を決して聞いてみた。
声のことを。社員さんやバイト仲間にも聞いてみた。
すると答えはNOだった。皆知らないという。
そんな馬鹿な…。
ここ何日か私はずっと聞いていたというのに、周りは誰も知らないなんて。
背筋が寒くなる。まさか霊の類…?
次の日、声はまだ聞こえている。
私はさすがに怖くなっていた。
この工場には何か得体の知れないものがいるのでは…?
そうだ!今私は聞こえてるのだから、皆も聴いているはず。
私は自分の仕事をほおって、駆け出した。
よし、まだ声は聞こえてる。これで確かめられる。
私は期待と不安が混じったまま、近くの上司へと駆け寄る。
そして、すいません、と声をかけた。
「あなた、何歌ってるの?」
え?
「だから歌うの辞めなさい。仕事中なんだから」