みのるとの約束だった。
僕は教室の後ろの台所で皿洗いをしていた。自分のではない。みのるの食器だ。勝負事に負けたのである。仕方なしにチャーミーグリーンを使っていた僕に森さんが声をかけてきた。
「何してるの?」
「いや、ちょっとね。いろいろあって…」
何か悪い事が見つかったかのような笑みを浮かべて僕は振り返った。
森さんはクラスのアイドル的存在だ。彼女の笑顔はチャーミングで魅力的で、背は低いけどそれがまた可愛くて僕は好きだった。
使っていたチャーミーグリーンが切れたので僕は教室から出て、第3区画まで歩いた。学校律第76条、チャーミーグリーンが切れた時は必ず自分で交換すること。隣の人のを無断でしようしたり、友達との貸し借りは禁止。破った場合は、精神系の中級罰則が設けられている。
僕は審査官の日野君に空になったチャーミーグリーンを渡した。
「早いね」
日野君はそう言ってカウントボックスに僕のチャーミーグリーンを入れてくれた。
「抱負は?」
マイクを向けられる。
「カレー汚れを充填的にいきたいですね。前は卵だったので」
全校生徒に僕の声が流れた。
「おめでとう。君なら出来るよ。でも皿の裏には気をつけて。よくこびりつくから」
僕は礼を言って新しいチャーミーグリーンを受け取った。
教室に戻ると、一角で歓声が上がっていた。
ロトト6だ。世間で流行っている博打である。賭け事が嫌いな僕はそこを見ないように通り過ぎようとした。
が、そこに森さんがいるのを見て足を止めた。当てたのは森さんらしい。
僕は幻滅する一方で、森さんの意外な一面と向きあった。賭け事をする妻は嫌だ、だけど賭け事をするくらいの思いきった姿勢は評価出来る。
クリア。視界良好。
僕の未来設計に変更点は見られないようだ。
森さんは嬉しそうに、今日はパーティよ、とはしゃいでいた。
僕は、残りのお皿に手をつけ始める。左手にはチャーミーグリーン。右手にはスポンジ。左後ろの森さんを意識しつつ、華麗にステップを刻んだ。
タンタタン。
ゴシゴシ。
タタタンタン。
ゴシゴシ。