「お見合いするお相手には真摯に向き合う」が招くまさかの問題を取り上げます(写真:Mills/PIXTA)

結婚相談所でお見合いから交際に入り、自分ではうまくいっていると思っていたのに、相手から交際終了がくることがある。断られた側は、青天の霹靂かもしれないが、実は結婚への後ろ向きサインを、相手側はすでに出していたことが多い。 仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、相手側が出す、交際に戸惑いのサイン、後ろ向きのサインについて記そう。 【グラフでわかる】結婚離れ加速?「一生結婚するつもりはない」男女が急増するわが国の実態

■上場企業勤務、年収600万円の彼  そうた(34歳、仮名)は、筆者の相談所で婚活を始めて10カ月が過ぎた。大卒で、上場企業勤務。年収も600万円以上あり、お見合いも組めていたし、そこから仮交際に入ることもできていた。  結婚相談所の交際には、仮交際と真剣交際の区分がある。  仮交際期間中は、新しいお見合いをしてもいいし、何人と仮交際をしていてもいい。なぜ1人に絞らなくてもいいかといえば、仮交際は相手の人柄を見る期間だからだ。

 相手の人柄を知って好きになり、そこから付き合うようになるのが、生活圏内で出会った自然恋愛。ところが、婚活の出会いはそれまでまったく違う環境で生活していた2人がお見合いを通じて出会い、お互いのことを知らないままに仮交際に入る。人柄を知る時間が必要なのだ。  デートを重ね、“この人となら結婚に進める”と思ったら、真剣交際に入る。このときに複数と仮交際していた場合、ほかの人たちには “交際終了”を出し、そこからは1人と向き合う。

 そうたは、「僕はこれまで女性にモテた経験もないし、恋愛に不慣れだから、複数の女性と同時進行で付き合えるほど器用じゃない。1人と仮交際に入ったら、その人とのお付き合いを大切にしたいと思っています」と言っていた。  それだけに、1人と仮交際に入ると、複数とは付き合わず、ていねいに1人と向き合っていた。 ■順調な婚活をはばむ「3回の壁」  活動を始めて、最初にお見合いから仮交際に入ったのは、みさき(33歳、仮名)だった。

 

 ところが、仮交際に入り2度デートをしたところで、みさきから“交際終了”がきた。理由は「話をしていても波長が合わず、将来的な結婚を考えることができなかった」だった。  次に仮交際に入ったよしえ(34歳、仮名)は、1度デートをしたところで、お断りがきた。  婚活者から、「お見合いから仮交際に入っても、1度か2度会うとお断りがくることが多い」という声を聞くことがある。  仮交際に入った相手とうまくいくかどうか、そこを見極めるには、“3回の壁”がある。お見合いを1回目とカウントして、初デート、次のデートと計3回をスムーズに進み、4回目のデートができると、その交際はうまくいく可能性が高くなる。

 それは、なぜか。人間の心理を考えるとわかる。  まず、お見合いをして、可もなく不可もなしだった場合。  「お見合いだけでは判断できないから、もう1回は会ってみよう」となり、“交際希望”を出す。そして最初のデートに進むのだが、そこでも可もなく不可もなしなら、「もう1回会うか」と2回目のデートに進む。  しかし、3回会って可もなく不可もなしだった場合、また次に会おうという気持ちにはなりにくい。  そういうわけで、お見合いを終えて1~2度食事をしたあとに、交際終了になることがとても多いのだ。これが、婚活における“3回の壁”だ。

■見逃していた“交際後ろ向き”サイン  そうたは、最初のうち、なかなかこの3回の壁を突破することができずにいた。  ところが、次に仮交際に入っためぐみ(33歳、仮名)とは、4回目のデートに進むことができた。仮交際に入ってからというもの、頻繁にラインで連絡を取り合い、週末はデートをするようにしていたようだ。  生真面目な性格だったので、デートコースは念入りに組み立て、水族館→遊歩道の散歩→夜景のきれいな場所で夕食というように、めぐみを飽きさせない計画を立てていた。そこには、彼のめぐみとの交際に対する真摯な姿勢が表れていた。

 

 

 

 4回目のデートを終えたそうたは、「次のデートで真剣交際を申し込もうと思っています」と言っていた。ところが、数日後、彼の思いとはうらはらに、めぐみの相談室から交際終了がきた。  「やっと真剣交際に入る相手にめぐり会えた」と意気込んでいただけに、交際終了がきたことを知らせると、かなりショックのようだった。  だが、婚活に落ち込んでいたり止まっていたりする時間はない。「結婚したいなら行動あるのみ。お見合いをして、交際に入れる相手に出会っていくしかないですよ」と筆者はアドバイスした。

 そこからまた申し込みをし、お見合いをして、今度はひとみ(31歳、仮名)と交際に入ることができた。  ひとみとも3回の壁を越えて、4回目、5回目とデートをすることができた。5回目のデートを終えたところで、真剣交際を申し込もうとしたのだが、ひとみからも交際終了がきてしまった。  そうたと面談をすると、肩を落としながら言った。  「3回の壁を越えたから大丈夫だと思っていたのに、なかなかうまくいかないものですね」

 そこで筆者は、「お付き合いを進めていくなかで、お相手側に最初の頃とは違う変化を感じたことはなかったですか?」と聞いてみた。  そうたは言った。「LINEの返信が、だんだんと遅くなっていました」。  最初は、そうたがLINEを朝か昼に入れると、その日のうちに返信があった。それが、2回、3回とデートを重ねていくうちに、翌日返信がくるようになったり、丸1日放っておかれて、翌々日に返信がきたりするようになっていた。

 「ただ、返信を負担に思ってほしくなかったので、『返信はできるときにしてください』と言ってあったから、遅くなっていたのは気にしないようにしていました」 ■LINEの返信速度は気持ちの表れ  LINEの返信速度は、気持ちの表れだと思ったほうがいい。相手からLINEがきたときに、相手に興味があったり、嫌われたくないと思ったりしたら、なるべく時間を空けずに返信をしてくるはずだ。  最初のうちは早かった返信が、付き合いを続けていくうちに時間の間隔が空くようになったら、それは相手が交際に疑問を感じてきた、または、交際に後ろ向きになってきたという表れだ。

 

 なかには「私はLINEが得意でないし、早く返信できるほうではない」と、遅いことを肯定する人がいるのだが、そういうタイプは婚活ではまずは結婚できなし、相手からも選ばれないことが多い。  そうたは、1人と向き合っていたが、多くの婚活者は仮交際のときには複数の相手と交際をしている。  すぐに返信してくる相手、なかなか返信してこない相手がいたら、どちらが選ぶか?  2人に同列の好感度を抱いていたら、すぐに返信をしてくる相手を選ぶだろう。

 人にはそれぞれ性格があって、そうたのように「自分は器用ではないから、複数の異性と同時並行で仮交際をすることはできない」というタイプもいる。だが、筆者は仮交際では複数と交際をすることを勧めている。  これは、先にも記したが、自然に出会って気持ちを通わせ付き合うようになる恋愛結婚と婚活での結婚は、性質が違うからだ。 ■仮交際では複数と付き合える理由  仮交際中の同時進行は、二股、三股をかけるための時間という意味合いではなく、相手の人柄を知って、自分と相性が合う相手かどうかを見極める時間なのだ。

 付き合う相手が1人だと、相手からLINEの返信が遅くても、デートをしたときの反応が悪くても、それを“よし”としてしまう。  相手の気持ちが薄れてきている兆候があっても、それを見ないふり、気づかないふりをして、なんとか結婚までたどり着けないかと、その交際に執着してしまう。  ことに男性の場合、デート代や食事代をすべて支払っていたりすると、そこまで使った時間とお金をムダにしたくないという気持ちが働いて、交際に終止符を打つのがもったいなくなってしまう。なんとかこの交際がうまくいかないかと、すがってしまう。

 婚活で成婚するためには、自然恋愛とは違う婚活の性質を認識して、仮交際期間中は、まずは“3回の壁”を意識しながらも、そのなかで相手が出してくるサインを見逃さないようにすることが大事なのだ。  ただ、婚活のテクニックもさることながら、そうたのように真摯にお相手に向き合っている男性は、必ず相性の会う女性と出会い、結婚していくというのも、またいえることだ。