初めて出会う男性のことを知るのに「どんな仕事をしているか」は気になる要素のひとつですが、職業だけで「どんな人か」まで決めつけてしまうと、時には痛い目を見ることも。今回は、男性の職業に対して“激しめの先入観”を持っていた女性のお話です。

 

30代で「銀行員、公務員、経営者」の3人と付き合った

 美紀さんは大阪にある編集プロダクションで働いている女性です。そして、37歳までずっと実家暮らし。私は美紀さんとオンラインで話しただけですが、表現豊かでコミュニケーション力の高い女性だと思いました。 「仕事は楽しいんだけど、忙しいし、給料はいうとびっくりされるぐらい少ないです」と、実家暮らしの理由を説明してくれました。  美紀さんは「出会いがないわけではない」といいます。30代では3人の男性と交際してきたそうです。 「一人目は前の会社の同僚の友達で20代のころから付き合っていた銀行員の男性です。穏やかで真面目な人って思っていたのですが、怒ると壁をグーで殴ったりすることがあって怖かったです。初めは私に手を上げたわけじゃないからって思って付き合ってたんですが、やっぱり無理だと思って31歳の時に別れました。  その後、30代では自然な出会いが少なくなるかもと思って婚活パーティーに参加したんです」  美紀さんの次の彼氏は34歳の公務員。ところが、付き合ってしばらくして「選挙があって忙しい」と言われて会えなくなります。そのまま彼からの連絡が途絶えてしまい、1年しないうちに自然消滅したそう。

 

デートは素敵だったけど、他にも彼女がいたかもしれない

 3人めは33歳のころに参加した婚活パーティーで出会った、49歳で離婚歴がある建設関係の会社経営者。年齢差は気になったけれど話し上手で、デートでは素敵なお店やクルージングに連れて行ってくれたそうです。 彼の会社の本社は北陸にありましたが、たびたび仕事で大阪に来て大阪にもマンションを借りていたといいます。関西在住の美紀さんとは出張の時に会っていましたが、地元にある彼の家に連れて行ってくれることはありませんでした。 「本当にそれは彼氏なの?」 「そうなんですよ。彼は口がうまくて、言いくるめられちゃうんです。独身だとは思うんですけど、地元にも彼女がいたのかもしれない。一緒にいると楽しいんですけどね」  彼に直接確認はしなかったのでしょうか。 「自分でも反省しているんですが、彼と付き合う前のデートで『どれぐらい付き合ってから結婚したいの』と聞かれて『2年ぐらい付き合ったら』って言っちゃって。それで、2年待ったら結婚するかもしれないのに今確認してぶち壊したらいけないと思って、何も聞けなかったんです。結局、2年少し付き合って別れました」

 

 

 

今まで“だめんず”を渡り歩いてきた自覚はない

「そして……独身のままアラフォーになったと」 「そうなんです」 「こう言ってはなんですが、ずいぶん“だめんず”ばかり渡り歩いてきたのですね」 「え? あ、そっか。そう言われると“だめんず”ばっかりですね!」 美紀さんは元彼は何人かいるけれど、歴代彼氏から大事にされていなかったという自覚があまりありません。  そんな彼女ですが、最近地元の友達から「田中君」(仮名)という男性を紹介され会ったそうです。田中君は同い年。昨年まで東京で働いていて、関西にUターン転職してきました。 「悪い人じゃないと思うんですけどね。“都落ち”したのかなって思うと、あまり仕事ができない人なのかなとか思っちゃって」 「都落ちって! 東京では何の仕事をしてて、今は何をしているのかとか戻ってきた理由とか聞いたの?」 「いや聞いてないです」 「相手に興味を持ってそこは確認した方がいいんじゃないの。都落ちって決めつけなくても」 「そうですね。次に会ったら田中君に聞いてみます」

 

「イオンモールでデートなんて普通ないですよね」

「でも、なんていうか全体的に向上心がなくてマイルドヤンキーっぽいんです。  30代の大人のデートなのに2回目のデートで行ったのが地元のイオンモールなんですよ。普通は梅田とか京都とか提案しませんか?」  田中君にまつわるやりとりから、美紀さんが今までどのように男性を評価してきたかが少しずつ垣間見えてきました。 普通のデートは梅田なんて思っていると、またデートのエスコートだけ上手で女慣れした“だめんず”を掴んでしまうと思いますよ。結婚生活の幸せ度合いと、おしゃれなデートスポットを知っていることって関係ないですから。あと、向上心がある男性がいいんですか?」 「そうですね。できたらそういう男性と結婚したいです」  美紀さんの理想は「会社経営者のように向上心があって尊敬できる男性か、大卒以上で公務員とか銀行員とか安定している仕事に就いている男性」なのだそうです。そういう男性とうまくいかなかった過去から学ぶべきことがあるはずなのに、美紀さんにはそれが見えていません。 「そういう男性が、アラフォーで実家暮らしの美紀さんを選ぶメリットってどこですか?」 「え! 考えたことなかったです。そう言われたらないですね」 「田中君だって実際に美紀さんのことを知っている友達が紹介したってことですよね。紹介する人だって釣り合いを考えるでしょう」 「そうですよね……」

 

 

デートに適した服も持っていなかった

 田中君とは次も会う約束をしているそうです。場所は近くの商店街だそうです。 「行きたいお店や場所があるなら女性から提案したっていいんですよ」 「もう決まっちゃったし。今回は商店街でもういいですよ」 美紀さんに、デートで着ていく予定のコーディネイトの写真を送ってもらいました。黒のライダースジャケット、黒のロングスカート、靴もバッグも黒です。 「地元だからって手抜きしすぎ! 全身、真っ黒じゃないですか」 「だめですか? スカートだし、いいかなって思ったんですけど」  美紀さんは手持ちの服がほとんど黒白、カーキばかりでした。銀行員や公務員や経営者と付き合いたいという割にコンサバな服もほとんどないのです。大急ぎで明るい色のトップスを買ってデートに間に合わせました。  デートで田中君の仕事のこと、地元に戻ってきた理由いろいろ質問したそうです。エンジニアとして東京で就職したのですが、会社が合併し仕事が忙しくなり、たまたま転職を考えていた時に大阪の会社でご縁があって地元に戻ってきたそうです。

 

歪んだ先入観を見直してみたら

 次のデートで美紀さんは海遊館(大阪にある水族館)に誘いました。半日一緒にいられるし、観覧車があるから2人きりにもなれるデートスポットなのだそうです。 田中君は観覧車の中で「結婚前提に付き合って欲しい」と告白してくれたそうです。  そこからが早かった。紹介してくれた友達にお礼を伝え、実家に連れて行ったときに親からは「こんな素敵な人を逃さないように!」と念押しされたとか。  数か月後には家探しが始まり、お互いの実家の近くにマンションを借りて結婚生活がスタートしました。週末はイオンモールへ一緒に出掛けているそうです。あの時に、「マイルドヤンキーっぽい」なんて断ってしまわなくて本当によかった。美紀さんは自身の歪んだ先入観を見直したことで、大きく前進できました。