2024年、全国民の3人に1人以上が65歳以上になる。2033年、3戸に1戸が空き家になる。2040年、自治体の半数が消滅する――。 【写真】年収300万円未満の家庭、3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! 将来の人口を分析してみると、日本の未来はかなり正確に予測できるのだ。人口減少問題の第一人者・河合雅司氏によるシリーズ100万部の大ベストセラー『未来の年表』があばいた「不都合な真実」の正体。

「ダブルケア」という深刻な悩み

写真:現代ビジネス

 「老老介護」の傾向は要介護者が70代になるまで続く。「国民生活基礎調査」(2016年、熊本県を除く)によれば、65歳以上の「老老介護」は54・7%。75歳以上の「老老介護」も30・2%と、初めて30%台に突入した。年齢階級別でみると「70~79歳」を介護しているのは、同じ「70~79歳」が48・4%と最も多い。  ところが、要介護者が80代になると、50代による介護が32・9%(女性21・7%、男性11・3%)と急増する。70代を介護する50代(8・6%)の4倍だ。60代も22・6%(女性15・4%、男性7・2%)だ。配偶者が亡くなった後、自身が要介護になると、50代の娘か息子の妻の世話になる人が多いということだろう。80代以上の高齢者が増え続けることを勘案すれば、「地域包括ケアシステム」を機能させるには50~60代に大きく頼らざるを得ないが、問題は50代、60代の女性が引き続き介護の担い手となり得るのかという点だ。  60代のほうが50代に比べて配偶者の介護にあたる可能性が大きいとすれば、とりわけ期待されるのは50代の女性となる。家族の介護に割く時間を見ると、要介護5では「ほとんど終日」と「半日程度」を合わせて69・0%だ。要介護4は67・5%、要介護3も48・9%に及ぶ。総務省の「就業構造基本調査」(2012年)では、50代女性の有業率は50~54歳が73・2%、55~59歳は65・0%である。半数はパートやアルバイトだが、「地域包括ケアシステム」が普及したとしても、家族の拘束時間が極端に短くなるとは考えづらく、中重度の要介護者を抱えて仕事もしていくのはどう考えても厳しい。政府は労働力不足の対策として、女性の活躍推進に力を入れるが、その成果が上がれば上がるほど、在宅介護の担い手不足が深刻化する。  将来的には、状況はさらに深刻化する。未婚化も懸念材料である。上昇カーブを描く女性の生涯未婚率は、2025年には18・9%になると推計されている。彼女たちは、働かなければ自分の生活を維持できず、介護離職や休職をしようにもできない。50代女性が介護の中心となるのが困難な時代が来るだろう。  もう1つ見落とせないのが晩婚・晩産の影響である。2016年の第1子出生時の母の平均年齢は30・7歳だ。第2子以降の誕生も考えれば、「50代で子育て中」という人は増える傾向にある。これでは、とても介護にまで手が回らない。現状でも、育児が一段落する前に年老いた親が要介護状態となり、育児と介護を同時に行わざるを得ない「ダブルケア」に直面する人は多い。内閣府が2016年4月に、政府としては初の推計をま とめたが、ダブルケアをしている男性は8万5400人、女性は16万7500人の計25万2900人に上っていた。  年齢別では40代前半が27・1%で最も多いが、30代後半が25・8%、30代前半も16・4%で続く。約80%が働き盛りの30~40代であった。  育児と介護の両方を主に担う者は、男性が32・3%に対し、女性は48・5%だ(2016年の内閣府の調査による)。より多くの負担が女性にかかっている。仕事をしていた人の うち、業務量や労働時間を減らさざるを得なかった女性は38・7%で、その半数近くが離職に追い込まれている。  晩婚・晩産の影響の中でも、とりわけ経済的・肉体的に厳しい環境に置かれるダブルケアの悩みは深刻だ。少子化で相談できる兄弟姉妹や親族がおらず、精神的に追い詰められる人も少なくない。  「育児と介護」という組み合わせだけではない。両親が同時に要介護状態になり、介護する側も60代といったケースも見られる。これは晩婚とは無関係だ。ひとりっ子同士の結婚が珍しくなくなった今、夫と妻の親が同時に要介護となる「ダブルケア」もある。  「ダブルケア」のさらなる問題点は、親の晩婚・晩産が世代を超えて子供に影響を及ぼし得ることだ。50歳と40歳の両親から生まれた子供が20代後半で結婚したケースを考えれば分かるだろう。その子供は晩婚でないにもかかわらず、結婚時に両親が高齢化しているためダブルケアに直面する可能性がある。これは、夫が晩婚で妻との年齢が大きく離れた「年の差婚」でも起こり得る。  最後に、晩婚・晩産の誤算はダブルケアだけではない。夫の定年退職後も、子供が大学などに在学するケースでは、早くから収入面の計画を立てておかないと、学費の支払いと生活資金確保の両立を難しくする。人生設計に"予期せぬ悩み"をもたらすのだ。晩婚・晩産といえば「少子化の要因」としてばかりクローズアップされるが、このように「超・高齢者大国」とも密接に関わっているのである。