■「マイルール人間」のるりこ

 

 何年婚活をしても、なかなか結婚が決まらない人には、特徴がある。 

 

 「私は、高い理想を掲げているわけではない」というのだが、相手の条件の理想は高くなくても、自分の中で確固としたルールがあり、相手を見る目が非常に厳しいのだ。  る

りこ(39歳、仮名)は、36歳の時からアプリで婚活をしてきた。筆者の結婚相談所での婚活は、1年になる。婚活歴でいうと約4年。1年前に面談に来たときに、こんなことを言っていた。 

 「私は、結婚しても仕事は続けたい。だから、男性に高年収を求めているわけではありません。私と同じくらいでいい。見た目も普通でいいんです。清潔感があって、パートナーを思いやれる優しさがあれば十分です」

 

 

 男性に高年収や見た目の良さを求める女性が多いなか、そこにはこだわらないというのだから、お見合いもさぞ組めるだろうと思っていた。しかし、結婚相談所のサイトに登録をしてみると、申し込みをかけてくる男性をなかなか受けようとはしなかった。  そこで、筆者はこんなアドバイスをした。  「まずは、どんどんお見合いしてください。リアルにお会いして話してみないと、お相手の人となりは、わかりませんから」  すると、るりこが言った。

 

 「いいなと思った方は、実家暮らしが多くて。アプリで活動してきたときに、実家暮らしの男性は食事や洗濯や部屋の掃除を親任せにしている人が多かった。母親に何でもやってもらっている男性は、結婚したら私のことを母親代わりにすると思うんです」  男性のPR文章に、「家事や育児は分担します」と書かれていたとしても、「そう書いているだけ」とつれなかった。  ならば、来る申し込みを待つのではなく、どんどん申し込みをかけてみるように勧めてみた。こうして、この1年のうちにいくつかのお見合いをしてきたのだが、1つも成婚まで進展はしなかった。

 

 

■同じ価値観を持つ人はいない  

 

相手に望む年収などの条件は高くないのに、なぜ成婚にまで至らないのか。そこにいつも自分が作ったルールがあったからだ。  お見合いが決まると、「このお見合い場所は、お相手寄りですよね。中間地点にしてください」「遠方の男性は、まずはZoomでのお見合いを希望します。もしくはお相手が都内に出ていらっしゃるのなら、対面でお会いします」「新宿の〇〇ホテルのカフェは、テーブルとテーブルの距離が近いので、隣の人に話し声が聞こえてしまいそうです。そこでお見合いを設定するは、やめてください」……。

 

 お相手のプロフィール自体の理想は高くなくても、自分で決めたルールがあって、そこに相手を当てはめようとする。お付き合いに入ってからも、相手が自分の意にそわない発言をしようものなら、そこで一刀両断して“交際終了”を出していた。  るりこに限ったことではないのだが、自分の中に決めごと(マイルール)が多い人は、婚活で成婚していくのは難しい。 

 

 結婚とは、それまでまったく違った環境で育ってきた者同士が、1つ屋根の下で暮らすということだ。自分のルールや判断基準で相手を見て、そこに当てはまらなければ批判したり拒否していたりしたら、永遠に結婚はできない。

 

 

 「結婚するなら、同じ価値観を持っている人がいい」とは、よく婚活者がいうことなのだが、同じ価値観を持っている人間なんて、実は存在しないのだ。

考えていることが大まかに同じだったとしても、突き詰めて話していけば、どこかズレが生じる部分が出てくる。  マイルール人間は、そのズレが見つかったときに、正しいのは自分で相手が間違っていると主張する。 

 

 婚活で結婚できる人というのは、小さなことにこだわらない人。相手の考え方が自分と違っていたとしてもそれを許容し、相手を認めてあげる人なのだ。

 

 

■「見切りを付けられない」ひろし 

 

 婚活で成婚を決めるには、“3回の壁”がある。お見合い→ファーストデート→セカンドデートと計3回会って、4回目のデートに進めるカップルは、その後真剣交際に入り、成婚していく可能性が高くなる。  そして、この3回の壁を越えるのに、時間をかけてはならない。  婚活がうまくいっていない人は、お見合いから交際に入るものの、1回目か、2回目のデートで交際が終了している人が多い。  これは人間の心理だ。

 

 お見合いで1時間程度話をしたときに、「もう一度会ってみたい」、もしくは、「お見合いだけではよくわからなかったから、もう一度会ってみたい」と思う相手とは、次につながる。一方、最初のデートで、お見合いのときとは違い、印象が悪かったという相手とは、1回目のデートで交際終了となる。  そして、1回目のデートでは良くも悪くもなかったので、「もう1回会ってみようか」と、2回目のデートをする。そこで、良くも悪くもないという感想だと、もう次に会おうという気持ちにはならない。

 

 また先述したが、3回の壁を越えるのに時間をかけてはいけない。  お見合いから最低でも1週間後には、ファーストデートをする。できればウィークデーの真ん中の水曜日か木曜日、会社終わりに軽く夕食を食べ、週末にまたデートができるようなカップルは、もうそこで3回の壁を達成しているので、成婚まで進んでいく確率も高い。  ひろし(45歳、仮名)は、さとえ(35歳、仮名)とお見合いの後に、仮交際に入った。結婚後に子どもを望んでいたひろしにとって、35歳のさとえは、なんとしても仮交際から真剣交際、そして成婚へと進めたい相手だった。

 

 

 ところが交際に入ったものの、次のデートがなかなか決まらなかった。ひろしが、週末のデートを誘っても「今週末は、地方に住んでいる叔母の家に行く用事がある」、次の週末は「土曜日は母の付き添いで病院に行く」、次の週末は「友達との約束がある」などと言って、お見合いから3週連続で、週末に予定が入っていた。  ファーストデートができたのは、お見合いから1カ月後だった。そして、そのデートの別れ際に、ひろしは「来週もお会いしませんか?」と誘ったのだが、「予定がある」と断られ、次に会えたのが、ファーストデートからまた1カ月後だった。

 

 

■お見合いから2カ月経っても… 

 

 結局、お見合いをしてから、2カ月以上が経ったのに、デートができたのはたったの2回。  ひろしは、筆者に言った。  「予定が入っているというのは口実で、別のお見合いをしているから、週末は忙しいのではないでしょうか?」  さとえは、もしかしたらひろしの言う通り、別のお見合いをしていたのかもしれない。  「どちらにしろ、会うペースが1カ月に1回のお相手とは、結婚まで進展しませんよ。交際終了にしたほうがいいのではないですか?」

 

 

 筆者はこう言ったのだが、ひろしには未練があった。  「私は今さとえさんとしかお付き合いしていないし、これを断ったら誰もお付き合いする人がいなくなってしまう。それに、35歳の女性とお付き合いできるのは、滅多にないこと。子どもが欲しいと思っている私にとっては貴重なお相手です。先方からお断りが来るまでは、このまま交際していたいです」  

確かに相手が断ってこないのだから、可能性はゼロではない。しかし、このように超スローテンポで交際をしているカップルが、成婚に至った例をこれまで見たことがない。

 

 

 相手が断ってこないことにすがって、形だけの交際を続けていると、そこには後ろ髪を引かれる思いがあり、次の行動を起こそうとする気持ちにストップがかかる。ひいては、時間が無駄になるだけなのだ。 

 

 お見合いから交際に入った時に、メールやLINEをしても返信が遅い相手、会うのが1カ月に1回程度というような動きの鈍い相手は、こちらから見切りをつけて、次の交際に進んだほうがいい。  結局、3回目のデートができないままにまた1カ月が過ぎた。

 

 

 そして、さとえの相談室から「お付き合いさせていただいておりましたが、結婚に対する価値観が違ったようです」という連絡が来て、この交際は終了となった。 

 

 3カ月間のうちに会えたのが2回では、結婚への価値観をすり合わせる十分な話し合いはできなかったと思うのだが……。  結婚相談所の場合、お見合いの後に入るのが、仮交際(プレ交際)。この期間はほかのお見合いをしてもよいし、何人と仮交際をしてもよい。そこから、“この相手となら、真剣に結婚に進んでいける”と思った人が現れたら、1対1の真剣交際に入る。

 

 

 これを「結婚相談所では、二股三股交際を奨励しているのか。けしからん」という人もいるのだが、婚活での出会いと生活圏内で出会った自然な出会いとは、出会いの性質が違うので、このルールがある。  

 

自然な出会いは、お互いの人柄を知ってから、恋人として付き合うようになる。婚活の場合は、プロフィールを交換して1時間程度のお見合いをして仮交際をスタートさせるので、相手の人柄を十分にわかっていない。仮交際は、相手の人柄を見極める期間なのだ

 

 

 なので、多人数と付き合えるし、また新しいお見合いができる。それだけに同一線上に並んだライバルが複数いるということになる。 

 

■「受け身のまま」な、けい 

 

 

 けい(50歳、仮名)は、大学時代から付き合っていた2つ年上のあきら(仮名)と卒業後にすぐに結婚した。  インカレで知り合った2人だったが、女子大に通うけいはスタイルのいい美人、有名私大に通うあきらは背が高くハンサムだったので、サークル内では美男美女のカップルだといわれていた。

 

 

 けいは結婚後、20代で男の子を出産した。けいが子育てに追われている中で、モテるあきらはたびたび浮気を繰り返し、それがバレるたびに大げんかになっていたようだ。そして、息子が大学1年になった時に離婚をし、夫婦は別々の人生を歩むこととなった。  入会面談にやってきたけいが言った。  「離婚から4年が経って、息子も就職して独立をしました。母親の役目もひと段落。これからは自分の幸せを考えて、一緒に人生を楽しめるパートナーを探したいと思います」

 

 

 年齢には見えない若々しいけいは、登録をするとたくさん申し込みが来た。いくつかのお見合いをしたのだが、その中で1つ年上のこういち(仮名)を、とても気に入ったようだった。  お見合いの後に2度ほどデートをしたようだったが、その後、こういちからの連絡が途絶えた。不安になったけいから、「ご相談したいことがあります」と面談の申し込みがあった。  「お見合いを終えて、1回目、2回目のデートまでは、頻繁にメールが来ていたし、お誘いもあったんですが、2回目のデートを終えてから、パタリと連絡がなくなりました」

 

 これは交際が終了するときの前兆だ。案の定、翌日には、こういちの相談室からは、“交際終了”の連絡が来た。そして、終了理由にこう書かれていた。  『LINEの返信も遅く、反応も薄い。こちらをどう思っているか気持ちが読めなかったので、こちらから連絡を入れないようにしたら、まったく連絡が途絶えてしまったようです。この調子では、成婚までは進めないと判断したとのことです』  この終了理由を告げると、けいは唖然とした顔で言った。

 

 

 「来たLINEにすぐ返信するのは、なんだか結婚に焦っている印象を与えて、品がないと思ったんです。デートをするにしても、お誘いを待っていました。男性は、好きな女性は追いかけたいのが本能じゃないですか」  大学時代に周りの男性からモテて、初恋の男性と結婚をしてしまったけいにとって、恋愛は男が追うもの。女は待って、男性が追ってきたら、そこではにかみながら答えるもの。そんな古い恋愛方程式が出来上がっていたのだろう。

 

 

 筆者は、けいに言った。「婚活市場には、けいさんと見た目、年齢、経歴など、同じ条件のライバルがたくさんいるんですよ 同一線上に立った時に、どういう女性が男性から選んでもらえると思いますか?」。  そしてこう続けた。  「女性からもマメに連絡をしたり、お誘いをしたり、デートのお礼が言えたり、小さな贈り物ができたりする。ただ待っているだけではなく、男性から選んでもらえる積極的な努力のできる女性が、婚活では勝ち残るんです」

 

 

■婚活を成功させる3つのコツ 

 

 男性が女性を誘って当たり前、LINEは男性から来るのが当たり前、デート代は出してもらって当たり前、そんなふうにお姫様感覚で受け身でいる女性は、年代を問わず、婚活市場では選ばれないのだ。 

 

 いかがだっただろうか。婚活で成婚を決めていくには、 

 

 ・マイルールを作らず、相手を許容する気持ちで臨む。  

 

・連絡の遅い相手、なかなか会えない相手には見切りをつける。  

 

・待ちに徹しないで、積極的に選んでもらえる努力をする。

 

 婚活で成婚したかったら、この3つを忘れないでほしい。