パートナーが家事を手伝ってくれない」「働き方やキャリアに口出しされる」「仕事と育児の両立がつらい」。こんな経験から「パートナーができたら、仕事と家庭、どちらかをあきらめなくてはいけない」と、考えてしまう人は少なくありません。 ですが、パートナーがいても、仕事と家庭を両立し、自分らしい人生を送ることはできます。そう語るのは、パートナーシップに関する社会課題を解決し、2人らしい生き方を支援する活動を行う、起業家のあつたゆかさんです。 この記事の写真を見る

あつたさんは「パートナーと家庭の共同経営者になり、フラットな関係で家庭の運営方針について相談する。そんな対話によって、2人は協力しあえる最高のチームになれます」と言います。あつたさん初の著書『仕事も家庭もうまくいく!  共働きのすごい対話術』から、そのヒントを紹介します(全3回、今回は1回目です)。  「共働きなのに、私ばかり料理してるよね?  なんでやらないの?」  「そう言われても、毎日残業で忙しいんだよ!」

 「私だって忙しいなかやってるのがわからないの?」  「そうやってイライラするから嫌なんだよ。じゃあもう明日から外で済ませてくる」  「そういうことじゃないでしょ……」 ■モメるのは「共同プロジェクト」が増えるから  このやり取りを見て、「ギクッ」と感じた人もいるのではないでしょうか。  「恋人同士のときはラブラブだったけど、生活をともにするようになると衝突が増えてしまった……」  そんなお悩みを聞くことは多く、たしかに結婚後や出産後に関係性が悪くなってしまうケースは少なくありません。ですが、ライフステージの変化はきっかけでしかなく、家庭内のチームビルディングがうまくいっていないことが根本の要因である場合が大半なのです。

 「食事は誰が、いつ作るか」「ゴミ捨てや掃除は誰がやるか」「もし転勤になったらどうするか」「家計の管理はどちらが行うか」――。  交際や結婚を機に共同生活をはじめると、それまでにはなかったさまざまな課題が現れます。家事だけでなく、キャリアプラン、ライフプラン、マネープランなど、長期的に計画、実行していく「2人のプロジェクト」が盛りだくさんになります。  会社では、経営陣がさまざまな人と協力してプロジェクトをこなし、事業を運営していきます。同じように家庭内でも、複数のプロジェクトをパートナーと協力して運営していかなくてはいけなくなります。つまり共働きの2人は、家庭の「共同経営者」になる必要があるのです。

 

 

 社会現象を巻き起こしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』をご存じですか?   このドラマで、ともに暮らすみくりさんと平匡さんは、度々「会議」を開きます。向かい合ってテーブルにつき、差し迫った課題について、お互いの意見や要望を伝え合っていました。  たとえば、夫の平匡さんが転職に悩む回があります。安定しているA社か、給与はいまの半分になるが新しい挑戦ができるB社か。家計にも影響が出るため、パートナーに反対されてモメそうな悩みです。

 ここで2人は「経営責任者会議」を開き、フラットに話し合います。結果、妻のみくりさんも働くことにして、その代わりに、家事も分担することに。お互いに納得できる結論を導いていました。  ほかにも、お互いに大変なときには外部サービスを利用したり、スキンシップが足りないと感じたら「ハグの日」を制定したりなど、お互いに意思確認をしながら解決策を導いていきました。「夫婦とはこうあるべき」にとらわれず、お互いの気持ちを知ること、伝えることを大切にして方針を決めていたのが特徴的です。

 「夫だから」「妻だから」と、性別によって役割を定める時代ではなくなり、どちらかが「主」でもう一方が「従」の関係は成り立たなくなりました。そのため私たちは、パートナーと「共同経営者」となり、何事も対等な立場で話し合って決めていく必要が出てきたのです。 ■家庭の「共同経営者」になるためのポイント  2人が家庭の「共同経営者」になるために大事なポイントが、4つあります。1つめは「ビジョンを共有する」ことです。

 家庭を1つの会社と見立てたとき、自社の共同代表2人の目指す方向が食い違っていたら、経営方針は定まらず、いずれ2人は仲違いしてしまうでしょう。家庭も同様に、2人のビジョンを共有することが大切です。  たとえば、社会貢献のために働きたいのに「なんでそんなに給料が低いところに転職するの?」と反対されてしまったり。家族との時間も大事にしたいと思っているのに「もっとキャリアアップとか昇進とかする気ないの?」と言われてしまったり。お互いの「働く目的」を知らないと、時間の使い方や家事のやり方、お金の使い方など、日常のちょっとしたことでもすれ違いやすくなってしまいます。

 

 相手の背景を理解することで「どうすれば、2人の理想が実現できるか」に目を向けられるようになるでしょう。ビジョンに正解はないため、2人で方向性を無理に一致させる必要はありません。お互いを理解するために、まずは聞き合ってみることが大切です。お互いが大切にしていることがわかると、意思決定もスムーズになっていきます。  2つめのポイントは「優先順位を洗い出して実行する」ことです。  仕事でも、ゴールを達成するためにタスクの優先順位づけをし、そのうえでどんな打ち手を選定するかを決めますよね。2人が目指す生き方や働き方を共有したら、優先順位を整理して、実行に向けて少しずつ動いていくことが重要です。

 私のところに相談に来た方のなかにも、「優先順位を決めた」ことで、理想を実現できた人がいます。  共働きのミレイさんとケンゴさんは、それぞれ正社員として働いていましたが、出産を機に長時間労働の職場に対してモヤモヤするようになりました。子供ができたことで優先順位が変わり、お金よりも働き方を重視したいと思うようになったのです。  そこで2人は、自分たちがいま何を大事にしたいかの優先順位を洗い出し、これからどうするべきかを話し合いました。その結果、家族との時間を大切にしたいミレイさんはウェブデザインの勉強をしてスキルをつけ、好きな時間や場所で仕事できるフリーランスに。ケンゴさんも、リモートワークがしやすいIT系企業への転職を決意しました。

 お互いにフルリモートで柔軟な働き方ができるようになり、思い描いていた「仕事のやりがいを感じながら家族の時間も大切にできる生活」を実現できました。「共同経営者」として2人のビジョンを話し合ったうえで優先順位を決め、実行に向けて動いていくことで、大切にしたいものを守っていけるのです。 ■こまめな情報共有で前提や背景を共有  3つめのポイントは「情報共有」です。企業でも家庭でも、毎日が意思決定の連続であり、その際に大切なのが「情報共有」です。2人が同じレベルの情報を正確に共有することで、適切な判断ができます。

 

家庭運営がうまくいっている夫婦は、お互いの体調や職場の状況、同僚や上司の名前、子供の様子など、こまめに情報共有をしているなと感じます。  「部長の資料のレビューが細かくて大変でさ」  「あーあの山田さん?  前もグラフの細かいところ指摘してきたって話してたよね」  というように、お互いに違う職場で働いていても、相手がどんな人と働いているか、どんなプロジェクトを担当しているか、仕事へのモチベーションは高いのか低いのかなど、把握できているのです。

 お互いの状況を共有することで、家事のやり忘れがあっても「この間、担当プロジェクトが忙しいって言ってたな」など、相手の背景が想像できて思いやりも生まれるようになります。  2人の間に情報格差があると、建設的な対話ができなくなってしまいます。どこに引っ越しするか、住まいはどうするか、結婚式はどこで行うか、保育園はどうするかなど、結婚生活は共同プロジェクトの連続です。2人で情報を集め、お互いが収集した内容はこまめにシェアしましょう。SlackやLINEなどのチャットツールを利用して共有するのもおすすめです。

 最後のポイントは「PDCAを欠かさない」ことです。  「転職してみたら、思ったよりも残業が多かった」「育児の負担が予想よりも大きく、料理するのは難しいことがわかった」など、いったん決めた方針がしっくりこなかったり、うまくいかなかったりというケースもあるかもしれません。  仕事のプロジェクトでも、遅れている業務があれば追加で人や時間を投下したり、業務フローを変えたりと、改善が必要ですよね。ビジネスの基本であるPDCAが、家庭運営でも必要なのです。どちらか一方が「うまくいかないな……」とモヤモヤを感じたときには、すぐに現状を共有し、打ち手の再検討をしましょう。

 また、お互いの状況や環境に起きた変化にも目を向け、共有しましょう。  たとえば、パートナーに「夕食の下ごしらえまでは済ませておいてほしい」とお願いしたのに、帰宅すると用意ができてなく、イライラしてしまった場合。でも実は、パートナーは体調が悪かったのかもしれません。相手の事情を知らないとイライラしてしまいますが、お互いの状況を理解できていれば、別の打ち手を提案できます。 ■計画は2人の手段であり目的ではない

 

計画は2人の理想を実現するための手段であって、目的ではありません。無理に遂行しようとして2人の仲が悪くなってしまっては、本末転倒です。対話によって計画を立てることは大事ですが、対話によって計画を変更することも同じくらい大事なのです。  2人が「共同経営者」になるための4つのポイントを紹介しました。  ビジョンと課題を共有して、実現を前提にして対話して優先順位を決め、必要な情報を共有して具体的なアクションを選び、PDCAで改善していく。フラットな関係でこれらのコミュニケーションができれば、2人で協力して家庭を運営していけるでしょう。

 お互いを理解し合い、キャリアと家庭の理想を実現するには、日々の対話や情報共有、意見のすり合わせなど、地道な努力が欠かせません。簡単なことではないかもしれませんが、「パートナーは最強の味方」ということを忘れないでください。  1人で悩むよりも、2人で考えたほうが、きっと、理想の実現がぐっと近づくはずで