【ここまできた男性不妊治療】 男性不妊の治療において、「生活習慣の改善」は大前提になる。
それは生活習慣が精子形成に悪影響を与えている場合があるからだ。
特に喫煙は、精子数を減らしたり、精子のDNAを損傷したりする。喫煙者はまず禁煙を強く指導される。
肥満も男女ともに不妊のリスクになる。男性では肥満による精巣温度の上昇や精子のDNA損傷により、精液所見が悪化する。
精子を作る精巣の造精機能は熱に弱いので、長風呂やサウナを避ける、通気性のいいパンツ(トランクスなど)をはく、なども改善すべき生活習慣になる。
精子形成や射精を障害する可能性のある薬剤を使用していれば、不妊治療中は中止する。
東邦大学医療センター大森病院・リプロダクションセンター(泌尿器科)の永尾光一教授はこう話す。 「男性型脱毛症の治療薬『フィナステリドやデュタステリド』(内服薬)はジヒドロテストステロンの男性ホルモン作用を抑える働きがあるので、使っていれば不妊治療中だけ中止してもらいます。市販の塗り薬である『ミノキシジル』は、影響はないので使えます。
また、男性不妊の人は、男性ホルモン(テストステロン)の補充療法(注射)をしてはいけません」
男性ホルモンを補充すると「元気な精子が作られる」というイメージがあるが、男性不妊では逆効果になる。それはテストステロンを直接投与すると、脳下垂体が「これ以上は精巣を刺激する必要はない」と判断してしまい、精巣を刺激するホルモン(FSHとLH)の分泌が低下し、精子や自身の男性ホルモンを作る働きが抑制されてしまうからだ。
では、男性不妊患者の約30%前後にみられると推測される原因不明(特発性)の「乏精子症・精子無力症」に対して、精液の所見を改善させる何かいい薬剤はないのか。
「漢方薬やビタミン剤、血流改善薬などが処方されることがあると思います。
しかし、どれも精液所見や妊娠率を改善させる明確なエビデンスはなく、あくまで医師の経験的治療で効果はあまり期待できません。
男性不妊の薬物療法で大きな効果が期待できるのは、『低ゴナドトロピン性性腺機能低下症』という疾患に対して行われるホルモン補充療法くらいです」 それでも少しでも造精機能をサポートする薬を望む患者は少なくない。
その場合、永尾教授は抗酸化作用のある「コエンザエムQ10」や精子の生成や性腺機能に必要な「亜鉛」のサプリメントをすすめているという。
あまり効果が期待できない薬物療法を長く続けると、女性が妊娠できる期間を減らしてしまうことになる
。半年くらい続けて精液所見が改善しなければ、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療を検討すべきという。
一方、性機能障害は保存的治療が有効。EDならED治療薬で約7割は改善する。
マスターベーションでは射精できるが腟内で射精できない腟内射精障害では、手で陰茎を刺激し、射精直前に腟に挿入する方法や、カップに精液を取って針なしの注射器で腟に注入する方法などがあるという。