【脳梗塞 徹底予防と最新治療】 コロナ自粛により一日中暖かい部屋で過ごしていると、寒さを忘れそうになることがある。だが、朝起きたときの洗面所やトイレ、外出したときなど、急な冷え込みに襲われたとき起こりやすいのが脳梗塞だ。
「寒い場所へ薄着の状態で行くと、血圧が急上昇します。それに起因して脳梗塞を起こすことがあるのです。特に動脈硬化が進んでいる方は、上着の着脱などで寒暖差に気をつけましょう」 こう話すのは、日本医科大学神経内科学分野の木村和美大学院教授。数多くの脳梗塞の診断・治療を行っている。
「動脈硬化は加齢でも進みますが、それを後押しするのが生活習慣病です。昨年来のコロナ自粛で、体重が増えた方、血圧や血糖値などのコントロールが上手く行っていない方は、脳梗塞予防も心掛けてください」
動脈硬化は、血管が硬く変性した状態で、血管壁に脂質などで生じたアテローム(粥状硬化)というコブに血栓ができ、脳の血管が詰まると脳梗塞になる。 脳梗塞の血栓は、脳の血管だけに生じるわけではない。
「よくあるのは、首の頸動脈(けいどうみゃく)にできた血栓が脳の血管に流れて、詰まるケースです。患者さんの首に聴診器を当てると、血管のアテロームによる狭窄(きょうさく)で、ザーザーと雑音が聞こえるのですぐにわかります」
頸動脈のアテロームは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、さらには肥満の状態で生じやすい。
ただし、アテロームがあっても無症状なので本人は気づかない。木村教授のような専門医が、聴診器を当てて異常を察知し、超音波検査(頸動脈エコー検査)で詳しく調べることで、頸動脈の狭窄がわかるのだ。 「
生活習慣病の方は、アテローム以外に、心房細動に起因した心原性脳塞栓症にも注意が必要です。この脳梗塞は重症化しやすいのです」 心原性脳塞栓症は、心臓でできた血栓が血流に乗って脳へ至り、太い血管を詰まらせる。血管のアテロームではなく、心臓の動きが異常になる心房細動で、心臓によどんだ血液に血栓が生じて、脳の血管に飛ぶのだ。
「心原性脳塞栓症も、血栓溶解療法(t-PA)とカテーテルでの血管内治療の併用で、救える命は増えました。しかし、後遺症が出る可能性は高い。それだけに、予防に努めていただきたいのです」 心原性脳塞栓症の原因の心房細動も、生活習慣病や肥満との関係が深い。
また、細い血管があちこちで詰まってしまう「ラクナ脳梗塞」も、しかりである。
「脳梗塞は主に3種類(別項参照)ありますが、いずれも生活習慣病の関係が深い。コロナ自粛で食生活が乱れた方は、注意が必要です。
ぜひ見直してください」 心房細動は2月に起こりやすいという。次回詳しく紹介する。(取材・安達純子)
■「3つの脳梗塞」を知っておこう 【アテローム血栓性梗塞】血管壁に脂質などで生じたコブのようなアテロームに生じた血栓が血管を詰まらせ血流を止め、脳梗塞になる 【
心原性脳塞栓症】心臓の異常な動きの心房細動で、心臓内によどんだ血液の中に生じた血栓が、血流に乗って脳の血管に到達して血流を止める。脳梗塞が重症化しやすいことで知られる
【ラクナ脳梗塞】脳の動脈から枝分かれした細い血管(穿通枝=せんつうし)が詰まる。脳の神経細胞が壊死する範囲は小さく、無症状のこともあるが、多発することもある。多発性脳梗塞とも呼ばれる