コロナ禍が長引き、テレワークの導入などで、上司と部下のコミュニケーションがうまく取れない、という声も聞こえてきます。
そもそも、テレワーク以前に、上司の話を部下が聞かないのには理由がある、と話すのはカリスマ経営コンサルタントの小山昇社長。株式会社武蔵野を18年連続増収に導き、750社以上を指導し、『儲かる会社のコミュニケーションの鉄則』を刊行した小山氏が、上司と部下が良好なコミュニケーションをとるための基本中の基本について解説します。
第1コミュニケーションと第2コミュニケーション
武蔵野は、はじめて幹部(課長)になった社員を対象に、「新任課長研修」(社内研修)への参加を義務付けています。
幹部になると、今までの仕事のやり方、考え方を変える必要があります。この研修は、「幹部の仕事とは何か」「幹部と一般社員の役割の違いは何か」「どのように部下とコミュニケーションを取ればいいか」を実践的に学ぶ場です。
2019年からは、ケア・ライフケア事業部統括本部長の由井英明を中心に、「新任課長研修」を社外向けにプログラム化。「実践新任幹部塾」と名称をあらため、公開しています。
その研修で教えているのが、第1コミュニケーションと第2コミュニケーションです。
・第1コミュニケーション……あいさつ、声かけ、日常会話、上司からの自己開示など、仕事以外の話
・第2コミュニケーション……褒める、叱る、仕事の話第1コミュニケーションがないのに、いきなり仕事の話をしたり、部下を叱ったり、褒めたりしても、部下には響きません。まず大事なのは、第1コミュニケーションを通じて、上司と部下の間で信頼関係を築くことです。
上司から心を開いて自己開示し、あいさつや声かけを通じて部下に関心を持っていることを伝えることで、はじめて上司と部下の信頼関係ができます。
上司のほうから歩み寄った結果として、部下は仕事の話も聞いてくれるようになる。普段、ろくにあいさつも声かけもしてくれない上司があれこれ言っても真摯に聞こうと思わないのは、部下の立場に立てばすぐわかることです。
ところが、上司になったら、それを忘れて、仕事の指示しかしない人が多い。そんなことでは部下は動かないし、業績も伸びません。
実践新任幹部塾を受講したパートナー企業の社員の方は、自分と部下の間で起こった変化を、次のように報告してくれます。
「頑張れとか言わないようにして、その代わり細かな指示をするように工夫しました。そうしているうちにコミュニケーションで、プライベートなことでも部下が話してくれるようになりました」
「カフェの話から、彼氏と別れそうです、という話までできて、最終的には彼氏と別れたという報告までもらうことができたので、たくさん話せているのかなと思いました」
「最近元気がない3年目くらいの子と話をしました。野球や最近、起きたことを話しました。そのときは、そのまま終わったんですけど、2日後あたりに相談があるということで、話を1対1で聞いて、仕事で伸び悩んでいるという相談を受けました」
部下と飲みに行くときは極力、カウンターの店を選ぶ
武蔵野では上司と部下が第1と第2のコミュニケーションを取るために、上司と部下が2人で飲みに行く「サシ飲み」を費用を会社持ちにして、制度化しています。
「サシ飲み」の際、上司はできるだけカウンターのお店を選んでいます。
対面だと相手の表情が見えやすい分、上司の顔色をうかがいかねない。ですが真横に座れば表情は見えないし、距離が近くなって壁がなくなり、自分の本音を話しやすくなります。対面よりも部下から得られる情報量が圧倒的に多い。
また、新任幹部塾では、由井英明が部下の話を聞く際の大切な心得も教えています。
「傾聴の4原則」です。
①相づちを打つ
②うなずく
③相手の目を見る
④驚きの表情を見せる相手の話に相づちを打ったり、うなずくことで、相手はぐっと話しやすくなります。
また、相手の目を見ながら話を聞くことも大事です。部下が報告に来ているのにパソコン画面を見ながら話を聞くような上司は論外です。
驚きの表情は、相手が悲しんだら一緒に悲しみ、喜んだら一緒に喜ぶことです。時々、部下が喜んでいるのに仏頂面で聞いている残念上司もいるので、ここでもやはり原則を押さえた「訓練」が必要です。
部下の話は、いきなり「評価」せず、まず「受容」する
そして、傾聴でいちばん大切なのは、相手の話を「評価」せずに、「受容」することです。しかし、これができない人が多いのです。
【部下の話を受容できない会話】
部下:「X事業部の件ですが、◯◯という方法に変えるとうまくいくと思うのですが」
上司:「それは、人数がかかりすぎてダメだよ」部下の話を「受容」することなく、すぐに「評価」してしまっては、部下は次から提案をしなくなります。
「傾聴」→「受容(承認)」→「気づき」
このサイクルを回さないといけません。
【部下の話を受容している会話】
部下:「X事業部の件ですが、◯◯という方法に変えるとうまくいくと思うのですが」
上司:「そうだね、そういう考え方もあるかもしれないね」(受容)
上司:「いつも、いろいろと考えて提案してくれてありがとう」(承認)
上司:「ところで、◯◯という方法だと、人数がかかりすぎるかもしれないよね。人数を増やさないでできる方法はないかな? そのあたり、また聞かせてくれる?」(気づき)部下にとって上司に話をするのは、「とても緊張する行為である」ことを忘れてはいけません。もちろん、部下の提案がいつも有益なものとも限りません。それでも、部下が勇気を出してしてくれた提案を、即座に評価・否定すれば、部下は、提案という行為そのものを否定されたように感じる。そうなると、部下の積極性、自主性は殺されてしまいます。
社長や上司の「聞く姿勢」はそれほど、大事なのです。
驚いたのは、実践新任幹部塾の生徒が傾聴ができるようになって、別居中の奥さんが帰って来てくれたことです。「聞く姿勢」は会社に限らず、家庭でも大事なのです。
1on1ミーティングでは、人は育たない
昨今、人材育成を効率的に行う手法として、多くの企業が、1on1ミーティングを導入しています。1on1ミーティングは、定期的に上司と部下が行う1対1の面談です。
武蔵野も、上司と部下が1対1で対話をする「評価面談」(個人面談)を義務化しています。会社によって1on1ミーティングの時間に差があります。「30~60分程度」の実施時間を設けているケースが一般的です。
ですが私は、「30~60分では長すぎる」と考えています。わが社の評価面談は、原則「10分」です。面談は、「短い時間で終わらせる」ほうがいい。時間が長くなると、それだけ不確定要素が増えて、不公平で不正確になります。
面談は、短ければ短いほど正確です。1on1ミーティングは、「時間は短く」「回数を多く」が基本です。コミュニケーションをよくするには、接触した回数が決め手になります。コミュニケーションは、「質より量」が大原則です。
どんなコミュニケーションを取ったか(=質)よりも、どれだけ多くコミュニケーションを取ったか(=量)のほうが大事です。
コミュニケーションは、「感情」と「情報」のやりとりです。
「○○さんを好きだ(嫌いだ)」「自分は、こう思う」「それについては不快だ」という感情。
「こういうことがありますから、こうしてください」「お客様は、こう言っておられます」「ライバル会社はこうです」という情報。
この「感情」と「情報」のやりとりの回数が、会社の業績に正比例します。
半期に一度面談をしたくらいでは、社員の気持ちをカバーすることは難しい。半期に一度、1時間の面談より、1回10分でいいから、毎月面談をしたほうが上司と部下の価値観はそろいます。
その点、わが社は、毎月の面談のほかに、直属上司と部下による「サシ飲み」や、ほぼ初対面の幹部社員と夢を語る「夢の共有」などを仕組み化しています。これは接触回数を増やすためでもあるのです。
