先日、ヨーロッパのメジャーな街に住んでいる知人とスカイプで対話した。その折、改めて言われたことがある。「榊さんの言うように、ヨーロッパ人は基本的にタワマンみたいなところには住みたがらない」と。
私は2年ほど前、『限界のタワーマンション』(集英社新書)という拙著を世に問うている。日本人はこれまでタワマン好きが多数派であったが、ヨーロッパ人たちの常識は少し違っているということを指摘した。
実際、ヨーロッパの主要都市の旧市街では、高層建築を見かけることはほとんどない。ロンドンには何棟かのタワマンがあるが、ほとんどが新たに開発されたエリアに立っている。
アメリカの大都市には日本のタワマンに類する集合住宅が多い。しかし、大多数のアメリカ人に好まれているかというとそうでもなさそうだ。
ニューヨークには金ピカに施されたトランプタワーがあるが、そこに好んで住んでいる人が、アメリカの上流人たちにリスペクトされているとは思えない。
日本では1997年の建築基準法改正以来、都心や湾岸エリアでタワマンがつくりやすくなった。だから2000年以後は雨後のタケノコのごとく建ち始めた。
拙著でも指摘したが、タワマンという建造物は区分所有として長期間存続するには、建物保守や法制度においてかなり無理がある。この宿命的な課題は、あと10年もすれば社会的な大問題となりそうである。
これまでは「つくれば必ず売れる」というのが、マンション業界における基本的なポジショニングであったが、将来的にはこの既成概念は崩壊する。
また、健康を維持する上で、超高層階に住むことによる不都合が、さまざまな角度から指摘されるようになってきた。子育ての面でもいろいろと煩わしさがあるとも言われる。
日本人はどうしてこれほどまでにタワマンに無防備なのかと、不思議でならない。日本人だけでなく、東アジア人一般も喜んで受けいれている。
しかし、やがてそれも終わるのではないか。18年10月に日本を襲った台風19号は、川崎市の武蔵小杉エリアに林立するタワマン1棟に、内水氾濫の被害をもたらした。電気が使えなくなり、いかに悲惨な空間であるかを広く世間に知らしめた。
日本人もそのような現実に気づき始めたのだ。変化は静かに始まっている。タワマンは近未来の住形態における絶滅危惧種になる恐れがある。