40代、50代の結婚と再婚は、当事者が子どもを授かりたいか否かでも、活動の仕方が大きく変わってくる。
40代前半の多くの女性が、「できることなら子どもを授かりたい」と願っている。有名タレントの40歳を越えてからの出産ニュースも聞くようになった昨今であるし、不妊治療の助成金も43歳未満までなら出るので、「最後のチャンスに懸けたい」と思うのは、至極当然のことだろう。
一方で男性は、40代、50代、また60代になっても、“わが子をこの手に抱きたい”と思っている人たちは多い。こちらもまた60歳を過ぎて父親になった有名タレントのニュースに触発されているのかもしれない。
出産を視野に入れている婚活者は、男女ともに1日も早い結婚を望んでいる。そんな中で、女性は“なるべく歳の近い男性”を希望し、男性は “できることなら30代、上は41、2歳くらいまで”と希望しているので、互いに求め合うベクトルがすれ違ってしまい、婚活を非常に難しくさせている。
一方で、もう子どもはいらない。残りの人生を一緒に歩いていくパートナーが欲しい、という婚活者は、ゆとりを持ってお相手選びをすることができる。ただ時間制限がないぶん相手選びの目を厳しくしてしまうこともあるし、期限が決められていないと活動する気持ちも緩くなる。
40代、50代の婚活者は増えてはいるものの、成婚に結びつく確率は非常に厳しいのが現状だ。
現在、私のところで婚活中の香代(仮名、40代後半)も、お見合いはできるものの、なかなか結婚相手に巡り合えないでいた。
入会してきたのは、一部で緊急事態宣言が開けた5月の半ばだった。3月に入ってテレワークが増え、世の中の動きが止まった緊急事態宣言期間中に部屋で1人で過ごし、猛烈に寂しさを感じたという。香代は、再婚希望者だった。
「40代前半のときに、結婚相談所で知り合った年上の雅也(仮名)とお見合いですぐ結婚を決めたんです。2人とも子どもが欲しかったので、相談所を成婚退会後、すぐに入籍をしました」
ところが、一緒に暮らし始めてみると、あまりにも生活していく価値観が違っていた。
「元夫は2年前に、持ち家を購入していました。お付き合いをしているときに、2度ほど遊びに行ったことがあったのですが、どの部屋も物であふれ返っていました。
家具とか電化製品は最低限度のものしかないのに、部屋には雑誌や趣味の雑貨が驚くほどたくさんあって、キッチンには、買いだめしたラップ、アルミホイル、食器用洗剤、ティッシュがまるで倉庫のように積まれていました」
それだけではなかった。クローゼットに入りきらなかった服が部屋の壁にも掛けられ、階段の手すりにもスーツやコートがぶら下がっていた。また通販品が送られてくる段ボール箱も捨てずにとってあった。
「『どうしてこんなに物がたくさんがあるの?』と聞いたら、『買った物には、1つひとつに思い出があるからね』と言うんです。『通販の段ボールには思い出はないでしょう?』と言うと、『いつか使うかもしれないじゃない』と。
さらに、驚くほどたくさんあるラップや洗剤は、『どうせ使うものだから、安売りしているときに買っておくんだ』と平然とした顔で言うんです。ただこのときは、“男の一人暮らしだし、家は散らかっていても仕方がない。私が結婚後に片付ければいいや”くらいに思っていたんです」
香代は、整理整頓が得意なほうだったので、「私の手にかかれば、この家も見違えるくらいきれいになるだろう」と高をくくっていた。
何よりも、1日も早く結婚生活をスタートさせたかった。子どもを産むタイムリミットを知らせる時計が、頭の中でカチカチと鳴り響いていたからだ。
結婚して1年弱で離婚
「私はもともと荷物が少ないほうだし、あんなに物のあふれた家に行くのだから、必要最低限の物だけを持って、引っ越しました」
そして、“これぞ腕の見せ所”とばかりに、部屋の片付けを始めた。
「2人が休みの日に一緒に片付けをしたんですが、彼の古い洋服を捨てようとしたら、語気を荒らげて怒られました。『初めてもらったバイト代で買ったものなんだ。勝手に捨てるなよ!』と。結局部屋にある物は、ほとんど捨てられず、1部屋を物置部屋にして、そこに物を移動させるだけで終わりました」
香代にとってはゴミに見えるものでも、雅也にとっては思い出が詰まった宝ものだったのだ。
さらに、一緒に生活を始めてみると、毎日のように通販で買った品物が届いた。それは、限定品のフィギュアだったり、タイムセールで買った服だったり小物だったりするのだが、品物だけでなく段ボールも捨てずにとっておくので、片付けたはずの部屋がたちまち物であふれ返っていった。
また一緒に生活してわかったことだが、雅也は自分のためにはお金を使うのだが、人のためにはお金を使おうとしなかった。
「生活費は、きれいに折半でした。結婚前は、外で食事をすると私の分も支払ってくれたのに、結婚してからは自分の分しか出さなくなりました。あるとき、2人で牛丼チェーン店に行ったら、自分の食券だけ買ってさっさと席に座り、それを店の人に出していました。
妻に350円の牛丼もごちそうできないのかと思ったので、『結婚前は、ごちそうしてくれたのにね』と嫌みっぽく言ったら、『ああ、仲人さんに婚活中は出すように言われていたから』と。それを聞いて心底あきれました」
聞くに堪えかねるような悪口を言う夫
もう1つ結婚してわかった嫌な面があった。家でテレビを見ているときに、出演者をこきおろすのだ。
「〇〇も昔は、キャーキャー言われていた二枚目俳優だったけど、フケたよな〜。おでこがかなり後退しちゃって、もうじーさんだな」
「ブヨブヨの裸をさらして、粉だらけになって金稼ぐお笑いタレントって、プライドがないのかね」
「国会議員が不倫? ふざけんな! この税金ドロボーが」
付き合っているときには、こんなふうに人を悪く言うような一面はなかったので、本当に意外だった。あるとき、聞くに堪えかねて香代が言った。
「どうしてそんなにテレビに出ている人たちを悪く言うの?」
すると、雅也は平然とした顔で言った。
「相手に聞こえているわけじゃないから、何言ったっていいじゃない。ネットに匿名で誹謗中傷を書いたりするのは悪質だと思うけど、自分ちでテレビに向かって言っても、誰に何の迷惑もかけてないだろう?」
「そばで聞いている私は、いい気持ちがしないよ」
「じゃあ、聞かなければいいじゃない」
「一緒にいたら、聞こえちゃうでしょ」
こんな会話をしているうちに、本当に虚しくなってきた、と言う。
子どもが欲しかったから、結婚を急いだ。しかし、子どもを作るためにはその行為をしなくてはならない。一緒に暮らすようになってから日に日に雅也に嫌悪感を覚え、一緒のベッドにも寝たくなくなり、夫婦関係はどんどん冷めていった。
結婚当初は、“不妊治療をしてでもいいから、絶対に子どもが欲しい”と思っていたのが、“子どもは欲しいが、雅也の子どもは欲しくない”と思うようになり、離婚することを決めた。離婚を切り出し、ゴネられたらどうしようかと心配していたが、雅也も香代との生活にストレスを感じていたのだろう。すんなりと離婚に応じた。
結婚生活はわずか1年弱だった。
入籍前に一緒に暮らすのも1つの方法
そこから、出会いもないままに年月が経ち、香代はもう子どもは授からないであろう年齢になっていた。私のところで婚活を始めるときに、こんなことを言っていた。
「焦ると人を見る目が曇ると思うんです。だから、今回は、“いいな”と思う人が現れたら、しっかりと人間性を見極めたいと思っています」
近年、40代、50代の登録は増えているので、お見合いはスムーズに組めた。まずは、最初の1カ月で5人ほどお見合いをしたが、“交際をしたい”と思う人は、なかなか現れなかった。
「相変わらず、婚活市場でお相手を選ぶのって厳しいですね。この間の方は、話をしている間、視線がチラチラと動いて、私のことをまったく見ませんでした。今日の方は、コロナに異常なほど神経質で、お見合い中もマスクを外さなかった。マスクを取ると顔の印象がガラリと変わることがあるじゃないですか。
コーヒーを頼まれたので、飲むときにマスクを外した顔が見られるかなと思っていたら、マスクを手でつまんで浮かせて、コーヒーをズズズーッと飲んでいました。思わず吹き出しそうになりましたが、必死で笑いをこらえましたよ。結局マスクを取った顔を一度も見ることはできませんでした」
そして、5回のお見合いを終えて、香代はこんな感想を漏らした。
「以前は、子どものタイムリミットがいつも頭にあったので、うまくいかないと失望したり、ストレスがたまったりしていたのですが、それがない今回は、精神的にとても楽です。あのマスクを外さずコーヒーを飲んだ人も、昔だったらイラッときたかもしれないけれど、今回は笑い飛ばせましたしね」
その後も、振ったり振られたりのお見合いを続けていたのだが、9月にお見合いをした利正(仮名、51歳)と仮交際に入り、2カ月の付き合いを経て、真剣交際に入り11月22日のいい夫婦の日にプロポーズをされた。
熟年結婚はますます盛んになるだろう
成婚退会のあいさつに来た香代が言った。
「彼は、ケチではないし、人のためにお金が使える人でした。物を買い込むタイプでもなかった。ただ一緒に生活してみないと、わからないことがたくさんある気がするんです。
相談所は、これで退会させていただきますけど、今回は焦って入籍をせずに、『1年くらいは婚約期間にしよう』と彼と話をしているんです。一緒に暮らしてみて、お互いに嫌なところは直していくし、2人で過ごす時間も大事にしながら、自分の時間や趣味の領域は侵さないように暮らしていければと思っています」
これぞ、大人が選択する結婚ではないか。熟年離婚も増えているが、今後は熟年結婚もますます盛んになっていくだろう。
平均寿命は年々延び、人生100年時代と言われている今日だ。自然災害に見舞われたり、コロナのような新型ウイルスが蔓延したり、予期せぬことがいつ起こるかわからない。そんなときに、1人より2人。人生を共に歩むパートナーが隣にいたら、心強いのではないだろうか。