1)タワーマンションは水害にも大地震にも弱い。電力供給が途絶えれば、生活できない住形態である。
(2)武蔵小杉に林立するタワマンの資産価値が、あの浸水被害が原因で資産価値を大きく下げることはない。少なくとも、可視的には価格が下がらない。ただし、しばらくは買い手が現れず、売買が成立しにくくなる可能性はある。
被災したタワマン自体は今後「事故物件」扱いになる。その記憶が薄れるまでは、売買が成立しにくいだろう。売却を急げば再販業者が3割引きくらいで買い取るかもしれないが、一般客へ被災前の価格水準での売却は当面成立しにくいと考えるのが妥当。
(3)タワマンの資産価値そのものが下落することはない。台風19号で目立った被害を受けたのは2棟だけ。台風通過エリアのタワマン全体からすれば1%にも満たない。いわばこの2棟は、かなり「不運だった」とみなしてよいレベル。
だが、2020年も再び強力な台風がやってきて、どこかのタワマンに浸水被害が発生したらどうなるのか? また多くのメディアがそのことを取り上げるだろう。結果、多くの人が「タワマンはやっぱり台風(水害)に弱い」と考え始める。2回も同じような被害が発生すれば、仕方がないだろう。
そうなったら、今までタワマンを購入しようとしていた人々も、躊躇するはずだ。新築タワマンは売れ行きが鈍り、中古は売買が成立しにくくなる。そして必然的に価格は下落気味になる──と悪循環に陥る懸念はぬぐえない。
新築マンションは原価積み上げ方式で販売価格が決まるので、売り出し価格が下がるまでは2年以上かかるが、中古は個人が売り主であることがほとんど。売り急げば、価格を下げざるを得ないのだ。
仮に、武蔵小杉の駅周辺エリアでもう一度内水氾濫による浸水が生じた場合、あのエリア自体の不動産価格には、2019年とは比べものにならないくらい下落圧力がかかる。武蔵小杉自体が、人々の“脳内ハザードマップ”で「危険エリア」に指定されてしまうだろう。
もっとも、内水氾濫の原因追及や、その対策には関係各所が最大限の努力を払って再発防止に努めるだろうから、そういったことは起こりにくいとは考えたいが、もし再びタワマンが台風被害に遭ったら、その後はかなり悲惨なことになるのは確実だ。
そもそも、「タワマンは災害に強い」と考えられていたのが、意外な弱さが露呈してしまったのが、あの台風19号による武蔵小杉タワマンの被災だった。
私は著書『限界のタワーマンション(集英社新書)』の中でもはっきりと指摘しているが、タワマンは災害に弱い。電力供給が途絶えると、そこには人が一昼夜を過ごすことも困難になるのがタワマンなのだ。電力が途絶える状況が、地震による停電だけでなく水害によっても発生することが分かったことが、台風19号の大きな教訓だ。
そうでなくても、タワマンという住形態には様々な問題を含んでいる。私はタワマンという集合住宅は日本人にとってまだまだ完成度が低い住形態だと考えている。今のままでは50年以上存続させることすら難しい。昨年、武蔵小杉の水害で被災された方にはたいへん気の毒だが、タワマン自体に多くの関心が集まり、その脆弱性を社会に広く知らしめたことには意義があったと思う。
2020年に入り、タワマン市場は今のところ暴落の気配は窺えない。ただ、すでに危険を察知した投資購入者たちは売却を急いでいる。2018年あたりから目立ち始めた外国人の売りも、2020年の五輪閉幕を睨みながらさらに加速しそうだ。私の周りの投資家たちも、転売目的のタワマン購入を控え始めた。売りに回った人も多い。
2020年の後半は、一般の方々にもはっきりとタワマン価格の下落が見て取れる状況が現れることが予測できる。さらに言えば、タワマンの脆弱性をさらけ出すような事件や災害が発生すれば、それをきっかけに大きな下落圧力が発生することは十分に想定できる。
2000年頃から始まった「タワマンブーム」は、20年の節目でひとまずの終焉を迎えるのではなかろうか。つまり2019年はターニングポイントの年であった可能性が高い。
今年、タワマンを購入しようとお考えの方は、もう一度あの住形態がどういうものかをしっかりと認識していただきたいと思う。そして、今保有しているタワマンを売ろうかと迷っている方に改めて申し上げたい。また何かが起こって“タワマンリスク”が広く世間に知れ渡る前に、素早く売ってしまったほうが賢明だろう。