【雇用延長時代を生きる健康術】

 平均寿命が右肩上がりだが、次は健康寿命の延伸が課題となっている。

 「歯、目、関節の3つがキーワードです。この3つを早い段階でいかに守るか。それが健康寿命を左右すると考えます」

 こう指摘するのは、東京医科大学病院トータルヘルスケアセンターの山科章センター長。心臓病の診断・治療のエキスパートで、今年7月、同センターで人生100年時代をサポートする新たな健康診断プログラムを導入した。

 「若い頃からパソコンやスマートフォンなどで眼を酷使し、歯は虫歯にならないと歯科へは行かず、仕事が忙しくて長年運動不足。そういった方々の健康寿命は縮まるリスクが高い。危機をいかに回避するか、予備能力を高めるかが重要です」

 失明原因第1位の「緑内障」は、40歳以上の20人に1人が発症するという。緑内障は目のスクリーンともいうべき網膜の神経が変性・死滅するが、早期段階では自覚症状が乏しい。健診などで目の検査を受けることで、早期発見・早期治療がなにより。

 一方、長らく歯科を受診していないと、無自覚の状態で歯周病が進行してしまう。厚労省の2016年「歯科疾患実態調査」によれば、歯周病の目安となる4ミリ以上の歯周ポケットの保有者は、55歳以上で5割を超える。歯周病を放置すると抜歯の原因になることに加え、歯周病菌が肺炎などの感染症や、糖尿病や認知症などとの関わりが深いことは、以前このコーナーで紹介した。とにかく放置がよくない。

 「私たちが行っているオーラルフレイル検査は、歯周病などの口の中の状態のみならず、噛む力、発声力、嚥下(えんげ)や唾液量など、総合的に調べています。話す力が弱まれば会話はうまくできなくなり、噛む力が弱くなれば食事も制約されます。トータル的な健康の底上げが必要といえるのです」

 関節にしても、運動不足や肥満などで「変形性膝関節症」と診断されると、膝の治療はもとより、ダイエットや周辺の筋力アップを勧められるだろう。トータル的な機能改善が予備能力を高めることにつながる。しかし、これまで放置してきたことを一気に改善するのは難しい。

 「人生100年時代には、予防でいかに健康資産(予備能力)を高めるかが大切ですが、日本では予防は自費診療になることが多く、受けづらい側面がある。仕組みを変えて普及させないといけない。それが、将来の医療費削減にもつながると思います」

 山科医師による「健康資産アップ術」を別項に掲げた。自らの身体能力を高めて老化や病気に抗(あらが)い、いくつになっても元気に仕事を続け、楽しい生活をキープしよう。(安達純子)

 ■健康資産(予備能力)アップ術

 □眼科や歯科を定期的に受診し状態を把握する

 □歯周病を放置しない。歯科で自分に合ったブラッシング法を教わる

 □運動習慣を持つ。通勤の速歩や自宅でのスクワットでは、タイムや回数を測って向上するように努める

 □趣味を楽しみ仲間と交流する。地域交流もOK

 □子供や孫とゲームなどをして、自分の判断力や集中力が落ちていないかをチェック。落ちている場合は改善を心掛ける

 □年1回の健診を活用し、メタボリックシンドロームなどの病気を改善・予防する