汗ばむ季節に気をつけたいのが体臭です。周囲の表情の変化をうかがい、「『加齢臭がする』『おっさん臭い』と言われているのではないか」と神経質になっている中高年男性はいませんか。人間の皮膚の表面には、体臭の元となる“皮膚ガス”が発生しているといわれ、その種類は300以上。においは「チーズ」や「使い古された油」など、年代によって変化します。中高年男性を中心に体臭が生まれるメカニズムやその対処法について、ライターの西川敦子さんが、東海大学理学部化学科教授の関根嘉香さんに取材しました。【毎日新聞医療プレミア】
リョウさん(43歳)にはちょっとした悩みがある。最近、体臭が強くなってきたのでは、という疑念が頭から離れないのだ。立ち話をしていると、女性の部下や同僚はわずかだがあとずさりする。愛想のよい笑顔を浮かべながらも、彼女たちの表情は固まっているようだ。「なんかにおう」という心のつぶやきが聞こえてくるようで、最近は女性と接するのが苦手になってしまった。
――もしかすると、ちょっと汗臭い? いや、香り付きの汗拭きシートをこまめに使っているし。
もんもんとしていたが、ある朝のこと、中学生の長女の一言で疑念は決定的なものになった。「お父さんの後で洗面所を使うのはイヤ! おっさん臭いんだもん」
――おっさん臭い? それって、一体どんなにおいなんだ? 何が原因なんだ?
リョウさんは衝撃から立ち直れなくなってしまった。
◇仕事中、背後から近づく女性に警戒を
一言で「おっさん臭い」といっても、人により、シチュエーションにより、そのにおいは千差万別だ。
「じつは人間の皮膚の表面からは“皮膚ガス”という気体が発生しています。皮膚ガスが鼻に届くと、においとして感じられるわけです」
こう説明するのは、東海大学理学部化学科教授の関根嘉香さん。皮膚ガスにはいろいろな種類があるが、現在の研究では少なくとも300種類以上存在することがわかっているという。発生ルートは3パターン。
「皮膚表面で反応して出るものを“表面反応由来”といいます。汗の中の成分や、皮膚の表面にいる常在細菌が皮脂をパクパク食べて、その食べかすからガスが出るのです。汗や皮脂に紫外線が当たって化学反応が起こり、皮膚ガスとなることもあります。このほか発生ルートとしては、汗腺や脂腺など皮膚腺を通じて放散する“皮脂腺由来”、血中の成分が皮膚から直接放散する“血液由来”があります」
皮膚ガスは年代によっても変化する。
「若いうちは活発に動くこともあり、汗のにおいが強いもの。ところが男性の場合、30代になると急に皮膚表面から“中年男性臭(ミドル脂臭)”が出てくることがあります。これはジアセチルという成分が原因。皮膚の常在細菌であるブドウ球菌が汗の中の疲労物質、乳酸を代謝、分解することで出てしまうのです」
乳酸から生まれるだけあって、そのにおいはチーズによく似ている。
「『このにおいがたまらなく好き』という人もまれにいるかもしれませんが、大抵の人は苦手でしょうね。ジアセチルは揮発性があるので、体温によって発生する上昇気流に乗り、頭の上に集まりがちです。オフィスなど広い空間でも、25センチ以内に近づくとにおいに気づかれます」
座ってパソコン作業をしているときなどに、「ちょっといいですか」と後ろから声をかけられたら、立ち上がって話をしたほうがよさそうだ。でないと、頭から立ち上るにおいが相手を直撃することになる。また、ジアセチルは狭い空間では広がりやすく、寝室など密室はこもりがちなので要注意だ、と関根さん。
さらに年を取ると、今度は“加齢臭”と呼ばれる皮膚ガスが出てくる。においのもとはノネナール。皮膚表面の皮脂が酸化して生まれる物質である。
「老化により、皮脂の酸化に対する抑制力が落ちると、加齢臭の元になる物質の分泌量が増える。加齢による活性酸素の増加も影響しているといわれています。人によっては早くて30代半ばくらいからにおいだし、50代くらいからどんどん強くなります。“おじいさんのにおい”“使い古された油のにおい”などいろいろな表現がありますが、“古本のようなにおい”といえばわかりやすいでしょうか」
◇シトラス系の香料が逆効果に?
若い時は汗のにおい、30代になればチーズのにおい、さらに中高年になると古本のにおい――どうやらにおいにまつわる男性の悩みは尽きることがなさそうだが、忙しいビジネスパーソンはほかにもいろいろな皮膚ガスを発している可能性が高い。
例えば、疲れたときに出る “疲労臭”。
「筋肉を動かすとき、エネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)が使われると、酵素反応によって血中にアンモニアが発生、汗腺などを通して皮膚ガスになります。運動したときはもちろんですが、重いカバンを抱えて駅の階段を上がったりするようなときも出ることがあります。汗のにおいだけでなく、ツンとしたアンモニア独特のにおいまでしてしまうのですから、困りますよね。アンモニア臭は、ストレスを感じている時にも出ます。夜勤中の医師を対象に行った実験では、緊張状態のとき活性化する交感神経が優位になると、アンモニアの放散量が増えることがわかりました」
実験では、アンモニアは交感神経が鎮まったあとも出続けることが分かった。帰宅ラッシュの通勤電車がにおうのもうなずける。
皮膚ガスを減らすためには、どんな対策を講じればいいのだろうか。
「たばこやお酒を控え、ちゃんと睡眠をとること、運動すること、肉や魚の食べすぎに気を付け、抗酸化作用のあるポリフェノールやビタミンCをたっぷり取ることが挙げられますが、一番いいのは朝晩入浴することです。もちろん朝はシャワー浴でかまいません。汗や皮脂を洗い流せるだけでなく、血行が促進されリラックスできることでにおいはかなり抑えられます」
なお、香水や香料入りの制汗剤も効果はあるが、皮膚ガスの種類によって合わないものもあるので注意が必要だ。たとえばシトラス系の香りは加齢臭にはいいが、汗臭、疲労臭とは相性が悪く、かえって妙なにおいになってしまう。中年男性臭にもシトラス系の効果は期待薄だ。中年男性臭や汗臭、疲労臭を解消したければ、森林調の香りを選ぶといいだろう。
◇「皮膚からアンモニア臭」の原因は
それでもにおいが気になるようであれば、背後に体調不良や病気が隠れていないか疑ってみるべきだと、関根さんは指摘する。
例えば、空腹時に発生する「アセトン」は、脂肪や脂質が代謝されるときに生じ、血液から皮膚表面、吐く息などに出てきて甘酸っぱいにおいになる。糖質制限ダイエットのし過ぎ、あるいは糖尿病の悪化を示すサインのこともあるというから見逃せない。皮膚から漂うアンモニア臭は、ひどい便秘など腸内環境の悪化、または肝機能の低下が原因のこともある。
ただし、病気が原因の場合は別として、体臭を過剰に気にするのは禁物、と関根さん。
「男性は女性より体表面積が大きいですから、その分、皮膚ガスの総量も多めです。女性に比べ、どうしてもケアが行き届かないこともあるでしょう。とはいえ、生きているからこそ皮膚ガスが出るのであり、においは個性ともいえます。気になるのは当然ですが、あまり深刻に思いつめるとストレスのもとですよ」
夜の入浴に加え、毎朝シャワーを浴び始めたリョウさん。少しだけ早起きしなければならないが、その分、飲み会を控え、夜早めに帰宅するようになった。一緒に夕食を囲む時間ができたせいか、長女も学校や塾での出来事を笑顔で話してくれる。相変わらず、先に洗面所を占拠する父親に文句タラタラだが……。
――あのな、お父さんが臭いのは家族のために毎日がんばっているからなんだぞ。
そんなことを直接娘に言いはしないが、いつか“お父さんのにおい”を懐かしく思ってくれる日がくることを願うリョウさんだった。
確かに周りの中年以降の親父さんは臭すぎます
特にメタボ親父さんは臭すぎます。 女性だけではなく 家族からも嫌われていますよ。
臭い人は元から臭いが立たないと駄目ですね。
匂いで周りを迷惑はかけてはいけませんね
気をつけませんと