<<自分の家族が、自分の大切な人が「がん」と診断されたらあなたはどうしますか。

巷には数多くの健康本が出版されています。その中には、「がんにならない方法」が書かれたものもありますが、身近な方ががんになったときの対処法について書かれた本は稀かもしれません。

今や2人に1人ががんになる時代。6月6日発売の新刊『がん外科医の本音』では、著者であり、現役のがん外科医である中山祐次郎氏が、“がん”が再発してしまう理由をはじめ「がんについての疑問」に本音で答えています。その一節を個々で紹介します。>>

※本稿は中山祐次郎著『がん外科医の本音』(SB新書)より一部抜粋・編集したものです。

がんはなぜ「再発」するのか?

ここでは「がんはなぜ再発するのか」について考えましょう。この疑問は「がんは切れば治るのか」という疑問に密接に関連しています。

がんの再発とは、簡単に言えば「見かけ上、がんが体から無くなったが、再び出てきてしまった状態」を言います。

ここで「見かけ上」と断ったのは、前項の手術の話にも関係してきます。なぜなら治療をした結果、ある患者さんの体の中からがんが完全になくなったかどうかを判定すること自体が不可能に近いからです。どういうことでしょうか。

私たちがん治療の専門医は、CTやMRI、PET検査などいろいろな検査で体内のがんの状況を把握します。治療の前、そして治療中、さらには治療後数ヶ月と実にさまざまなタイミングで何度も検査を行い、がんがどこにあるかを確定させるのです。

しかし、ここで出てくるのが、検査の限界という問題です。検査結果では「がんは無し」と判定されても、細胞レベルで見ると体内に残っている可能性があるのです。

CT検査では、放射線を使って体の中をかなり詳細に見ることができますが、それでも放射線被曝との兼ね合いで通常5ミリメートルおきの断片的な画像しか撮りません。

ですから、この一枚と次の一枚の間に、たまたま2ミリメートルの大きさのがんがあったら、発見できないのです。2ミリメートルのがんはまだ大きいものですが、その何百分の一の大きさであるがん細胞が数十個こぼれ落ちていたとしたら、これはどんな検査でも発見できません。

こういった検査の限界があるため、厳密な意味で「患者さんの体から、がんは完全にいなくなった」と言い切ることには無理があるのです。

がんはがん細胞がいくつかあるだけで無限に増殖していきます。

ですから、「再発した」という言葉の意味は、「患者さんの体からがんは完全にいなくなったが、再び出てきてしまった」ではなく、「患者さんの体からがんは完全にいなくなったように検査上見えたが、実は細胞レベルでは残っており、それが再び増殖してしまった」のほうが正確です。

ですから「がんはなぜ再発するのか」という問いには、「そもそもがんは完全に退治できておらず、わずかに残っていたがん細胞が再び増えて検査でも見つかるようになっただけである」と答えられます。

 

悪性とは何が悪性なのか?

がんは悪性であると言いますが、いったい何がどう「悪い」のでしょうか。「がん」という言葉はほぼイコール悪性腫瘍と言えますが、「悪性」という言葉にはこんな意味が込められています。

1.勝手に増える(自律性増殖、アポトーシスの消失)
2.周りを壊したり同じ人の中で血液やリンパ液を介して遠くに移ったりする(浸潤・転移)
3.栄養を奪う(悪液質 )

これらの性質があるものを、「悪性」と呼ぶのです。反対語は「良性」ですが、良性と悪性の線引きは実はあいまいです。良性でも勝手に増えたり、周りを壊したり、遠くに移ったりすることがあります。

基本的には「良性腫瘍は命に別状はなく、悪性腫瘍は命に関わる」と考えてよいでしょう(例外はあります)。脳にできる良性の腫瘍である髄膜腫 などは、できた場所のせいで脳の機能に悪影響を及ぼすことがあります

がん細胞は非常にタフなもので、過酷な環境でも死に絶えず、どんどん増えていきます。つまり再発する力が非常に強いのです。

感染症と比較してみても、それは際立ちます。代表的な感染症であるインフルエンザは一度治ってしまうと再発はまずありません。感染性腸炎でも、1ヶ月経って再発したということは極めてまれです。しかし、がんは1年、2年、がんによっては10年ほど鳴りを潜めて人体に居続け、じわじわと増殖するという嫌な性質があるのです。

生活習慣で本当にがん予防できるのか

まず、もっともシンプルな疑問があります。そう、「がんは予防できるのか?」というものです。結論から言えば、「がんを完全に予防することはできないが、がんにかかる危険性を半分くらいに下げることはできる」のです。

突然ですが、「生活習慣病」という言葉をご存じでしょうか。これは、こういう名前の病気があるわけではありません。簡単に言えば「生活の習慣によってかかってしまう病気たちをまとめたグループ名」です。

もともと成人病と呼ばれていたのですが、成人だけがなるわけではありませんし、成人であっても生活の改善で防げるため、その名前は不正確だろうとなり、1996年に名前が変わったのです。

正確な定義は「食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が深く関与し、発症の原因となる疾患の総称」(厚生労働省ホームページより)です

この生活習慣病には、肥満や高血圧、糖尿病などが含まれます。そしてあまり知られていない事実として「がんも生活習慣病の一つに入っている」のです。

そう、がんは生活の習慣でかかってしまったり、逆に予防ができたりという病気だということです。これ、驚いた方も多いのではないでしょうか。私は自著で「がんは遺伝子のダメージによる病気である」と言っていますが、その一方で「がんは生活習慣病である」とも言えるのです。