こちら


田中:では、なぜ乳酸がこの持久力アップにつながるのか、東京大学大学院の八田教授と詳しく説明していきます。こちらに筋肉の模型を用意しました。開けますと、このように筋肉の断面図になっています。
筋肉の中には 速筋線維と遅筋線維、この2つの線維があります。そのうち、この持久力に大きく関わるのが遅筋線維なんですよね?
八田さん:そうなんです。2つ線維がありますけれども、遅筋線維の方が持久力にあふれている。マラソン選手はこれが多いということは知られています。速筋線維の方は、あまり持久力がありません。短距離選手がこれが多いということが知られています。
武田:スピードがあるということですね。
八田さん:そういうことですね。
田中:今回のテーマの「乳酸」がどこでできるかと言いますと、この速筋なんです。長年、疲労をもたらす物質だと言われてきた乳酸が、エネルギーに変わる仕組みとはどういうものなのか。鍵を握るのが、ミトコンドリアです。このミトコンドリアというのは、遅筋に多く存在するんです。この速筋で作られた乳酸は、ミトコンドリアのいわば餌となるんです。このように乳酸を食べるかのように使って、遅筋の新たなエネルギーとなり持久力を発揮するというわけなんです。
更にトレーニングを重ねますと、乳酸が増えるんです。そうしますと、それが刺激となって、実はミトコンドリアも増えるんです。そうすると、乳酸を食べてエネルギーがどんどんと出てきて、これを続けていきますと、持久力がアップするというわけなんです。
武田:VTRの中で、萩野さんの乳酸の値が19.8で、すげえという声が上がってましたけど、最高はどのぐらいなんですか?
萩野さん:最大、多い時で24ぐらいあります。
武田:24!ということは全身ミトコンドリアだらけということなんですか?
萩野さん:どうなんですかね?先生。
八田さん:競泳のトップ選手、萩野さんのように強い方はミトコンドリアが多い。これは間違いありません。そして一方で、今、お話に出ましたように乳酸がすごく上がるんです。ということは、速筋線維も多いんです。速筋線維も多いし、ミトコンドリアが多いということになります。これは、実は競走馬に共通した特徴なんです。競泳も競馬も2~3分のきつい運動ですから、それに勝つためには速筋線維のスピード、そして、遅筋線維の持久力、両方兼ね備えてるということが必要です。萩野さん、まさにそういう性質があると思います。
武田:ミラクルボディーなわけですね。
八田さん:そういうことです。
武田:萩野選手のようなアスリートだけではなく、私とか、あるいは高齢者のような方も乳酸を意識したトレーニングが役に立つんですよね?
八田さん:そういうことです。乳酸がミトコンドリアを増やしてくれる。これは別に年齢に関係ありませんので、皆さんがトレーニングする時でもある程度、乳酸が出るような強度、それの適切な強度を知るっていうことが非常に大事です。
武田:私たちでもできる乳酸を生かしたトレーニングとは、一体どういうものなのか、取材してきました。

武田キャスターが体験取材 “乳酸”生かしたトレーニング法

武田
「乳酸を効率よく使うためのヒントを、東京大学で探りたいと思います。」
どのくらいの強さの運動を行うのが、効率的なトレーニングになるのでしょうか。
東京大学大学院 八田秀雄教授
「今日はこれから走っていくなかで、乳酸がたくさん出るようになる強度を測る。」
武田キャスター、走る速度を段階的に変え、乳酸の値を測定します。まずは、分速100メートル。
武田
「このくらいのペースだと、ちょっと早歩きで散歩しているくらいで非常に楽です。」
3分後、乳酸の値は…走る前とほとんど変わらず、1.1ミリモル。この計測を、速度を上げながら7回繰り返しました。測定した結果です。分速145メートルと160メートルの間。ここを境に乳酸が一気に増え始めていました。乳酸が多く出始める「乳酸いき値」と呼ばれるポイントです。
八田教授によると、この「乳酸いき値」を上回る速度で走れば、乳酸が十分に出て、ミトコンドリアの増加を促すと言います。
東京大学大学院 八田秀雄教授
「トレーニング効果を得ようと思ったら、ある程度強度があったほうがいい。乳酸が出始める強度(乳酸いき値)を超えるところでやったほうが結果は早く出ます。」
目安となるのは、「乳酸いき値」より少し速い速度。武田キャスターの場合、分速160メートルです。
武田
「息が少し上がってきました。」
ややきついと感じる速度ですが、ペースを保つことはできます。もっと速度を上げれば、より効果的と思われるかもしれませんが…。
武田
「足がついていかなくなりますね。後ろにおいていかれそうに。」
これでは走り続けることができません。八田教授は、自分の「乳酸いき値」を把握できれば、トレーニングをより効率的に行うことができると言います。
東京大学大学院 八田秀雄教授
「トレーニングで大事なことは、量じゃなくて質なんです。質の高さというのを乳酸が(いき値より)少し出てるかどうかということで判定しています。」

“乳酸いき値”で効率アップ!市民ランナーの新トレーニング法

「乳酸いき値」を活用すれば、短い時間で効率的にトレーニングを行うことができます。週に1回、出勤前に集まるランニングサークルです。
「効率よくスピードトレーニングをすることで、短縮した良い練習ができると思います。」
胸には、この装置。
会社員 古山誠さん(55)
「胸にベルトをつけまして、いろんな値がとれます。乳酸いき値もそのひとつです。」
この男性の乳酸いき値は1キロ4分23秒、分速にすると228メートルです。「乳酸いき値」より少し速い速度で1キロを5回、休憩をはさみながら走ります。サークルに入る前は、ほぼ毎日、月400キロもの走り込みを課していましたが、今では半分以下に短縮。それでも記録は大幅に伸び、フルマラソンで念願の3時間切りを果たしました。
会社員 古山誠さん(55)
「短い時間、短い距離で練習をするけれども、強度の高い練習をして、それまで練習していたときよりも、あれっ走れるじゃん。」
出勤前の僅かな時間で練習終了。
「これからどちらに?」
会社員 古山誠さん(55)
「これから会社です。午前中1件、午後2件会議があります。」
1日の時間も有効に使えるようになったと言います。

高齢者も乳酸で体力アップ!“インターバル速歩”とは

走るのが難しいという高齢者でも、無理なく取り組める乳酸を意識したトレーニング方法があります。
「はい、速歩です。」
高齢化率が全国で最も高い秋田県。ここで取り入れているのが「インターバル速歩」です。3分間の早歩きを5回、合わせて15分。息を整えるための、ゆっくり歩きをはさみながら行います。
ポイントは、早歩きの速度。
「(最大速歩の)70%のスピードで歩くことが、乳酸が出てくるスイッチになるそうです。」
目安は、全力で歩く速度の70%以上の速度。高齢者は筋力が低下しているため、走らなくても十分乳酸が出るというのです。目安の速度に達していれば、腰につけたアラームが知らせてくれます。「インターバル速歩」を週に4回、5か月間続けると、持久力を示す指標の1つ、最大酸素摂取量が9%高まることが分かっています。
参加者(66)
「続けやすいです、走るより。どんな人もできると思います。」
参加者(65)
「雪下ろしあるでしょう、冬。前は疲れたなと思っていましたが、体力がついたなと思っています。」

明日からアナタもできる“インターバル速歩”

田中:あなたもできる「インターバル速歩」のポイントをお伝えします。まず、ポイント1、「ややきつい」と「きつい」の間。早歩きの速度は、こちらを目安にして下さい。歩いた感覚を「とても楽」「楽」「ややきつい」「きつい」の4段階に分けて、「ややきつい」と「きつい」の間ぐらいが乳酸が出る速度だと言われています。
武田:私も確かにそうだったんです。
田中:ポイントの2つ目、「正しい姿勢で大股歩き」。速く歩かなければと気が焦って、腰が曲がって前かがみになってしまいますと、腰を痛めてしまう原因にもなるんです。なので、腕は軽く後方に引く感じで振ります。そうしますと、胸を張った正しい姿勢になります。そして、大股で歩くようにしてください。
そして、ポイントの3つ目、「速歩は1日15分以上」。VTRでは3分の早歩きを5回と紹介しましたけれども、連続で行うのが難しいという人は何回かに分けて、1日で合計15分以上、早歩きをすれば効果に差はありません。大事なのは、週4日以上を目安に続けて行うことだそうです。
武田:八田さん、「ややきつい」と「きつい」の間が乳酸が出る目安ということでしたけれども、機械がなくても感覚に頼って判断してもいいんですか?
八田さん:一応、「ややきつい」辺りから乳酸が出始めるということは大体分かっていますが、感覚ですと、誰しもそうだと必ずしも言えないことはあります。
武田:3分ごとに感覚をとるということですけれども、この意味は何なんでしょう?
八田さん:最近は、比較的短い時間で終えられるということ。それから、初めから15分、30分やろうと、これは無理だよと思っちゃう方々が、3分でいいんだよ、それを繰り返しましょうということで積み重ねられるということがあります。
武田:乳酸をうまく使えるようにするトレーニングですけれども、萩野さんはどのように練習に取り入れているのですか?
萩野さん:試合前は、400メートル個人メドレーという種目に出るので、競泳の中では長い距離の方の部類に入るんですけれども、これを100メートルを4本であったりとか、50メートルを8本にして、同じ400メートルでも短く分けてそれを何本か繰り返すということをやっています。
武田:高齢者の方々がやっていたようなことを?
萩野さん:自分たちもやっています。
武田:オリンピック選手もやっているということなんですね。一気に400メートル泳ぐ練習はしないのですか?
萩野さん:ほとんどしないです。きつすぎてしまって、とてもじゃないですけど耐えられない。もし、できたとしても、次の日、同じことができないんです。なので、やはり毎日続けることが大事なので、短い距離で何本も繰り返して、常にトレーニングを続けるということが大事かなと思います。
武田:八田さん、これは理にかなっている?
八田さん:そうですね。高い乳酸レベルを作っておいて、その中でやっていくというのが1つの方法です。
武田:しかも、一気に長い距離を泳ぐのではなくて?
八田さん:そういうことですね。そうすると、より乳酸が高い領域で泳ぐことができるということです。
武田:選手としては、どうしてもタイムが気になるのではないかと思うんですが、タイムと同時に乳酸という1つの目安があるということですよね。これは、どういう意味があるんですか?
萩野さん:練習の中では、たくさん乳酸を出したい練習の時と、そんなに出したくない乳酸の時があります。ゆっくりな泳速(=泳ぐ速さ)で泳ぐことによってフォームを整えたりとか、いろいろあるんですけれども、その中で、ゆっくり泳がなきゃいけない練習の時に乳酸を出してしまっても、それは次の日の本当に頑張んなきゃいけない練習の時に頑張れなかったりするので、乳酸が1つの目安にもなります。また、前回、同じメニューでやった時の乳酸の値はこれぐらいだったけど、同じぐらいのタイムで乳酸が少し下がったとか、高くなったけどタイムもよくなったってことになると、前回よりは自分のコンディションもよくなってきたし、試合に向けて調子も上がってきたっていう指標にもなるので、すごく重要視しています。
武田:乳酸とタイムを組み合わせて、自分の体調や練習の強度を調整していくと?
萩野さん:そうです。
武田:やっぱり乳酸大好き?乳酸は友達ということですけれども。
萩野さん:そうですね。大好きなのかもしれません。
武田:平井コーチが乳酸を測るのも、いつも楽しみにしているわけですね?
萩野さん:いや、乳酸を測る時の練習って、きつい練習が多いんですけども、乳酸の道具を先生が持ってきた時に、練習するみんなは「今日は、きつい練習か」って、一度、下は向きますけどね。まあ、やるしかないなと思って、みんな頑張ってやってます。
武田:オリンピックのような大きな大会になりますと、1日に予選、決勝があったり、萩野選手はいろんな種目にも出場しますので、たくさんレースがあるわけですよね。その中で、乳酸をどう生かして戦っていきますか?
萩野さん:長丁場になりますので、疲れはたまってくるものなんですけれども、その日の疲れをどういうふうに、例えば乳酸を自分の中で消化していって、次のレースにつなげていくかっていうのが長丁場のレースではすごく大事になってくるので、そこを意識して取り組んでいきたいなと思っています。
武田:オリンピック、2年後ですけれども、乳酸の力で…どうですか?決意は。
萩野さん:一番大切な友達でもあると思うので、友達のままで頑張っていきたいと思います。
武田:このやっかい者だと思われてきた乳酸。実は、実は私たちの体力向上、オリンピック金メダルにもつながる心強い味方であることが分かりました。萩野さん、乳酸の力で頑張ってください!

筋トレでも同じことが言えます。

キツイインターバル少なくして追い込むとそれだけ筋肉に刺激与えられます。

当然筋肉肥大に影響します。

特に自転車競技の足は太いです、乳酸利用していますから!

インターバル短くして追い込めば効果でかいですよ!