◆20-30階クラスのタワマンを選択肢に

 正直、マンションの建物本体にはさほどの差は見受けられない。地震が多いこの国では、世界に類を見ないほど厳しい建築基準法が整っており、これに従えば建物は大抵の物が充分に強度を持っていると言えるからだ。
 もちろん、先日話題に挙がったL社の“手抜き”とも呼べる杜撰な施工は論外だし、D社のような“不適合”という管理上のエラー問題を除外すれば、基本的にはほとんどが強固であると考えられる。

 では何をもって見極めればよいのか。

 ひとつには、経済的な価値観の近い人達が集まるマンションというのが目安になるだろう。「マンションを買うなら管理を買え」、一度は耳にしたことがあるのではないか。土地の完全な所有権を持つ一軒家と異なり、区分所有建物というのは、赤の他人同士が、長期にわたって鉄筋コンクリートの箱を共同管理していくものである。もちろん必要に応じて、補修保全を施していかねばならず、かかる費用も頭割りだ。

 しかし管理組合にも多数決に近い民主主義が反映されるため、反対意見が出るとその計画も立ち行かなくなる。そしてここで出てくる反対意見について、深く追及していくと、往々にして金銭的な制約に行き着いたりするのだ。

 これを避けるには、価格帯に大きな差が出ていないマンション、階層で言えば20-30階クラスのタワマンまでが検討の対象となり得るだろう。
 この規模までは、同じ床面積であれば価格差が最大でも1000万円くらいに納まり、今の低金利で借り入れていればローン返済額はせいぜい月4万円ほどの差額である。

 これが50階規模になると、節税のために高額をつけられた部屋を除いても、同一マンション内での価格差が大き過ぎて、住民間の経済格差があることは否めないのだ。是非ともタワーマンションの中では規模が抑えられたものを選択肢に加えていただきたいものだ。

◆湾岸エリアがおすすめできない理由

 ふたつめとして、住宅街という環境が周りにあるマンションを挙げておきたい。基本的には「複数の世代が住む」ことがコミュニティには必須である。人は平等に歳を取っていくからだ。


 新たな開発が呼び水となり、ファーストバイヤー(初めて物件を購入する人)である新婚・子育て世代が数百単位で押し寄せる様相は、実は過去にも例がある。ドラマの舞台となり一世を風靡した多摩ニュータウンだ。同世代が固まって住むことで、共通の子育て問題に対策も打てて、メリットもたくさんあったわけだが、当然、人は同じ様に歳を取る。

 マンション内のコミュニティがまんべんなく高齢化することは、管理組合が高齢化することであり、変化に対するバイアスがかかりやすくなる。しっかりとした管理が行き届かなかった結果があれである(ただし多摩ニュータウンは大規模な建て替えの合意にこぎつけ、新たな世帯を呼び込むことに成功した初めての事例でもある)

 

 

タワーマンションに関しては、外装の長期保全について、大手ゼネコンでさえも尻込みしているのが現状であり、建て替え等という選択肢はまだ誰も想定出来ていない。高齢になったあなたが組合で立ち上がったとしても、多摩ニュータウンの事例はあくまでも参考にしかならないのだ。

 同様な世帯の偏りという観点からすれば、湾岸エリアのタワーマンションはあまりおすすめはできない。埋立地に乱立して呼び込んだ世帯の子どもたちが、既に入りきらない小学校がある。臨時で増設しているものの、正式に建設するには至らない、完成する頃には彼らは中学・高校へと進学していくので、その後は持て余してしまうからだ。

 東京オリンピックの閉会後に、周辺が上手に活用されるとしても、このエリアはある程度人が離れるとも推測される。それを悲観するのではなく、新たな世代を呼び込む機会と捉えられればよいのだが、少なくとも私にはその名案が浮かびかねるのである。

◆ジムなんて必要?豪華な共用設備に注意

 三つ目には、付随する共用設備の内容であろう。専用部分は個人の裁量だが、共用部分に絢爛豪華な設備がある物件は要注意だ。

設置費用はもちろんのこと、維持管理費も当然に所有者たちの出し合う管理費からまかなわれており、それは使用頻度とは無関係だからだ。時間を持て余しているならいざ知らず、ローン返済のある雇われの身であれば、その元を取るのは至難である。

 



 購入前に、自分が昨年1年間で通ったスポーツジムの頻度やスパに行った回数、親戚や友人が泊まりに来た回数を振り返ってみればよいだろう。必要最低限のものがあれば、後はきちんと管理さえしていけば、資産価値の激減は予防することができる。このような豪華な設備という観点では、供給している法人によってはっきりと差が出ているので、検討する際は是非とも注意して比較してみてほしい。



◆武蔵小杉のタワマンは要注意?

 最後に、具体的な場所を挙げることは憚(はばか)られるのだが、武蔵小杉周辺のタワーマンションについては、私は要注意だと考えている。

 階数について言及すると、40-60階にまで及ぶ超高層マンションばかりであり、先ほど述べた経済観念に差がある世帯が集まっていると言える。ここで起こる様々な階層間の摩擦は、日々の快適なマンション生活をむしばむ可能性が低くはない。

 また、設備に関しても、檜風呂やゴルフ練習場といった過剰とも言える共用スペースが確保されており、修繕とは別のコストが心配に見える。加えて、開発全般の問題がある。そもそも周辺において、大規模にまとまった開発が進められたわけではないのだ。

 建物の高さに関する規制を緩和することで、お金儲けの匂いを嗅ぎつけた大手デベロッパーが群がり、地域もそれを諸手を挙げて受け入れていった結果、街全体の将来像や課題に伴走して旗を振る人がいないのだ。建てて売れればそれでよい人達が、懐を肥やして通り過ぎていっただけの現象なのである。

 うたい文句にあるとおり、保育園など子育て向けのインフラ整備ができあがってはいるが、先述の通り子供はみな成長する。開発計画とは名ばかりに、てんで無計画についばまれた街を選ぶ際は、周りのタワーマンション同士でしっかりと道を切り開いていく気概も必要なことを忘れてはならない。