いまや2人に1人が一生の間にかかる「がん」。

医学の進歩により、がんから生還する人の割合は増えているが、まだまだ死亡率の高い恐ろしい病気であることに変わりない。

この病気の不思議な点は、同じがんにかかり、ステージも同じ、受けた手術が同じでも、ほどなく亡くなってしまう人もいれば、10年以上元気に生きる人もいるということだ。


早くに亡くなる人と長く生きる人とでは、何が違うのだろうか?


これを追究し、書籍『がんが治る人 治らない人』(あさ出版)にまとめた佐藤典宏医師(産業医科大学第1外科講師、外来医長)によれば、「5つの力」を総合的に作用させた人ほど、がんから生還して長生きしているという。

その「5つの力」とは、「受け入れる力」、「情報を集める力」、「コミュニケーション力」、「体力」、「免疫力」を指す。

本書でいう、「受け入れる力」は「がんである事実を受け入れ、ショックから立ち直り、治療へ向けて前向きな姿勢になれる力」を、「情報を集める力」は「がんに関する情報を収集し、ベストの治療法を選ぶ力」を、「コミュニケーション力」は「主治医や周囲の人との円滑なコミュニケーションをはかる力」を意味する。このあたりは、他の医師が書いた本でもよく語られ、理解されている方は多いと思う。

意外に思われるのが、「体力」と「免疫力」だろう。がんにかかれば、体力も免疫力も落ちる一方で、自身がどうこうできる問題ではないと思いがちだが、実はそうではないと佐藤医師は語る。例えば、入院中に筋力が低下するのは、がんの影響というよりむしろベッドに寝たままで身体を動かさないことが主因。そして、「手術前に全身持久力や筋力、および筋肉の量が低下すると手術後の合併症が増え、また手術による死亡率が増える」とのことで、積極的に運動することを奨励している。

 

 

■軽い有酸素運動とレジスタンス運動が効果的

では、どのような運動をどれぐらいすべきか?
本書では、「有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)の両方を組み合わせる」と、効果的だとされている。

有酸素運動とは、酸素を体に取り込みながら、時間をかけて行う負荷の軽い運動のこと。具体的には、「散歩(ウォーキング)、ジョギング、サイクリング、エアロビクス、スイミング」が挙げられているが、その中で特にすすめられているのが、ウォーキング。運動習慣のなかった人でも、手軽に始められるからというのがその理由だ。そして、毎日20~30分行うのが理想的とも。

レジスタンス運動は、筋肉が少なくなっている高齢者は特にやっておきたいトレーニングだという。ただ、ハードな鍛錬は不要で、1~2kgの軽いダンベルを両手に持って上げ下げしたり、重りを持たず自重で行うスクワットや腕立て伏せなど、数種類のメニューをこなせば十分。頻度は週に2~3回でよいという。

もし、習慣化が難しい場合は、スポーツジムに通うことを佐藤医師はすすめる。その場でトレーナーの指導を受けられ、様々な人と接する機会が増えるなど精神的なプラス面もメリットもあるからだ。ただし、本格的に運動を始める前に、主治医と相談することを忘れてはならない。

 

 

■「くよくよしない楽天家」は「免疫力」が高い

もう1つの重要な「力」である「免疫力」については、まず「くよくよしない楽天家」であることが、アドバイスされている。

がんのことを心配したり、不安に思ったりする時間をできるだけ減らし、できるだけ気持ちのいいことや楽しいこと(趣味や旅行など)をするように心がけてください(本書171~172pより)。

実際の話、英米で行われた調査では、楽観的な患者は死亡率(死亡リスク)が16~20%低下することが判明している。これは、前向きな気持ちが脳内物質のβ(ベータ)エンドルフィンの分泌を促し、これががん細胞をやっつけるNK細胞やT細胞の機能を高めるからだとしている。

逆にストレスは、こうした細胞の力を低下させる。そこで「免疫力」を高めるもう1つの方法として佐藤医師が提案しているのが、マインドフルネス瞑想。ガンに伴うストレスを減らすため、医療の現場で実践されているという。マインドフルネス以外にも、「ヨガ、お経を唱える、ロウソクの火を眺める」など、心が無になり落ち着きを得られるものであれば、なんでもよいという。

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「体力」や「免疫力」をアップさせる方法として、ほかには「良質なタンパク質をしっかりとる」、「体温を高めに保つ」、「自然のなかへ出かける」などあるが、これらを含め「5つの力」には、がんに限らず様々な病気の回復に効果があるという。何らかの病気に悩んでいる人は、本書を頼りに「5つの力」を高めていくとよいだろう。