子猫の名前も漸く決まり、子猫を迎え入れる準備は着々と進んでいきました。


さて、猫を飼うことを決めた2回目の金曜日の朝がやってきました。



僕は早朝、胸の高鳴りを感じて少し早起きしました。朝日の射し込むカーテンを映画館の劇場員みたいに開けて、気持ちの良い朝の景色を眺めながら猫の気持ちさながら、猫の鳴き声でヴォイス•トレーニングを開始しました。


甘えた声や挑発的な声、欲っしているような声や第1ボタンまで外した状態の声、それから怒っている声や声にならない嗚咽のような声など、じっくりと丁寧に発声していきました。













腹式呼吸を駆使して『猫なで声のブログ』に相応しいヴォイス・トレーニングは継続されました。


だからBz'のヴォーカルが使用している『ラマーズ法専用マシーン』を駆使して自分を追い込んだりもしました。





これから『猫の飼い主』になるのだから、猫たちとの円滑なコミュニケーションを取る練習をすることは飼い主として当たり前だと僕は思うし、別に褒めて欲しいからしているのではなく、この事はリスナーの皆さん達の胸の奥にでもしまっておいてください。


そんなこと海外旅行へ行く前に『英会話』を付け焼き刃のように覚えるトラベラーの皆さんと同じですよ?













それに実は僕、自慢じゃないけど高校生の時に、「信号待ちしてるお婆さんの荷物が重そうだったから、当たり前のことしたら遅刻しました!」と真顔で言ったこともある男なのです。



だから特別なことなんて何にもしていないし、あんまり僕のことを褒めないでくださいね?


本当に褒めたりされると照れるから止めてください・・・





でも今日は特別に少しだけなら
褒めても良いよ?





特別だよ?













それから朝シャンで濡れた髪をオーガニック•コットンのタオルで拭いながら、『猫のいる風景』と出会ったときに自然と優しそうに目を細めることが出来るように、鏡の前で何度も『優しそうに目を細める』練習を反復しました。




『明星』や『平凡』で昔のアイドル達が魅せるようなキラキラとした笑顔ではなく、ただ自然と優しさが滲み出る微笑のように、内省的重さが感じられるぐらい適度な『優しそうに目を細める』練習を僕は繰り返しました。













逆光を朝靄が包み込む眩い光の中で、僕は幾度となく優しそうに目を細めました。



僕が恍惚とした状態で目を細めながら、手際よくほうれい線を思い浮かべていると・・・
















「お前、意外とネイティブみたいな発音できるにゃん?」



「こんな優しそうに目を細める人間なんて、私たち見たことないにゃん(ΦωΦ)」





「罪ねェ〜私って?」



「そんな貴方の過去、私、全部知りたくなっちゃったわ・・・ウフフッ♥」




というマッチ売りの少女が微かな炎の中に見た光景が僕の網膜を刺激したりもしました。














僕は鏡の前に立ち、まるで子猫でも見るかのように自分の顔をみつめました。それからもう一度ゆっくりと優しく目を細めながら、猫の鳴き声でヴォイス•トレーニングに励むのでした。



僕の研ぎ澄まされた声は猫のようにするりと世界の隙間へと滑り込み、遠い異国の地で肩を寄せ合う人々の隙間を埋めていきました。




世の中の人たちが皆、猫なで声で話し合えることが出来たなら、もっと世の中は幸せになれるのになと僕は思いました。












おしまい(ΦωΦ)