まだ1度も釣糸を垂らしてさえいないのにも関わらず、既に1度死にかけてしまった過酷なご状況に、流石のこの僕もこの釣行で無事に帰れるかどうか不安に陥りました。
それから僕は吐血した口の中の液体を吐き捨てるような口調で言葉を投げ掛けました。
「この釣りで無事に帰れるかなんて考えてるようじゃ全然だめだ・・・」
「そうさぁ~?そうなんだ!!」
僕は今自分が五感の根幹で感じている気持ちが単なる予感などではなく、確信なんだと悟り自ずと武者震いが起こりました。
「これは単なる釣りなんかじゃなくて、戦いなんだ!」
「だから生きて帰れる保証なんて何処にもない!」
僕は逃げ恥チックな自分の弱虫と対峙して、そんな自分を強く励ますように自分自身に言い聞かせました。
「御免、そうだよね?」
「アメブロで僕の記事を読んでる多くの良い子の皆のことを思うとそんなちっぽけな自分が恥ずかしく思うよ・・・?」
日本でも危険そうな地名ネーミング・ベスト10にランキングしそうな『戦場ヶ原』で、僕は危険な任務を遂行する覚悟を決めました。
このときの僕は精神状態的に常軌を逸しており、単なる木道が『デス・ロード(死の道)』のように見えていたのであります。
僕は入念にフライタックルをセットして、意を決して湯川の流れへ入水を試みました。
一見、とても穏やかな渓相に見えますが、いきなり深くなったり、脚を踏み入れると底無し沼のように地面に脚がめり込んでしまったり、デンジャラス・ゾーンがそこかしこに存在していました。
「たっ、隊長ォ~!?」
「おい!敵の銃弾の餌食になりたくないなら、頭を低く構えてしっかりと周りを見て進め!」
隊長は僕を見てこんなアドバイスをするなんて滅多にないことです。
それだけで、この『湯川』が恐ろしく危険な川だということが判別できます。
それに戦国時代は戦場と化した戦場ヶ原の多くの武士達の死体の山で埋められたこの川の温度が人肌で温められて『湯川』と呼ばれるようになったとの説もあるくらいです。
僕は頭を低く構えて、しっかりと周囲を観察しながら進みました。
けれども、次の瞬間・・・
「たっ、隊長?」
「隊長ォォ~!!」
to be continued・・・


