ピンクのハナミズキの花が陽光に照らされて、
その透き通る花弁を人々の目に焼き付けた


5月5日のこどもの日のことです。










この日はじじを誘ってお子達ふたりと笹川湖へバスフィッシングに出掛けました。


ボートを2艘レンタルして僕とRuki、じじとwichaに分かれて乗船しました。


久し振りのエレクトリック・モーターのボートにお子達ふたりはとてもウキウキしていました。












前日は釣具屋さんへ寄って、子供用の偏光グラスをご購入したり、近くの川でRukiとキャストの練習をして翌日に備えました。













こちらもお子達ふたりになんとか1匹でもバスを釣らせようと指導にも熱が入ります。












「おい!もっと荒々しく引かないと?」



「そうだ!荒々しくだぞぉ♪」



「パパ?難しいよ~?」




「もう少しジューシーさを醸し出してみろ?」



「パパ、緊張して胸がドクドクするよ?」



「いいぞ!荒引きでジューシー・・・」



「そして、ドッグだ!!」













熱心に指導を続けて、何故か自分がブラックバスを釣り上げてしまう大人気ない展開・・・












いや~、解説してるそばから釣れちゃいましたねぇ~?



「良いかお前たち、こうやってバスは釣るんだぞぉ~??」





何度か小移動を繰り返しバスを狙いました。

正確なキャストはもちろん、トレースラインやルアーの動かし方、更にはラインの処理など・・・


フィールドの状況を見極めながら魚の居場所を絞り、そしてバスの状況に合わせたルアーの選択や動かし方など、刻一刻と変わる状況にアジャストさせていくことがバスフィッシングには必要なのです。


後で見守りながらルアーを通すラインやルアーを動かすタイミング、リールを巻くスピードなど細かい注文を入れていきます。

なかなか要求通りに上手くいかないRukiは、自分の釣りにフラストレーションを感じ始めました。


結構、良い感じに出来ている時もあったので、粘り強く頑張って欲しいと思いました。



けれども何度やっても、何をしても釣れないRukiはとうとう釣りをすることに飽きてしまいました。



仕方なくRukiとwichaを交代させると、釣りに飽きたRukiは船のハンドコンを操作して遊び始めました。


途中、余りにも乱暴にボートの操船して、大声で笑うRukiに対して、1度だけ周りの迷惑になっていることと危険なのが分からないのかと注意をしました。

そんなこんなで釣れない時間が何時間も続きました。




だんだんと日が高くなってきて、wichaも暑さと釣れないせいでボートの上で寝てしまいました。


こちらもバスを何回か掛けてはいるのですが、なかなか歯車が噛み合わずに全てバラしてしまっていました。


スモラバを使っているのですが、GWで散々叩かれたバスは完全にスクープしてしまっているご様子でした。












日中は暑さでジリジリと腕を焦がしながら釣りをしていたのですが、暑さのせいかバスの活性も低く全く良いところが無いままでした。


少し日が傾いてきた時刻にwichaも復活をして一緒に釣りを始めました。



wichaはピッチングやフリップキャストなどは出来ませんが、基本のオーバーヘッドキャストで枯木が乱立しているエリアで、ちゃんと木と木の間に上手にルアーをキャストしていました。


時々、ラインがリールのスプールの中に入ってしまったり、絡まったり、根掛かりしたりしますが、そのときは僕の竿と交換して釣りを続けました。


そして朝3時半出発で寝ているお子達ふたりを車へ運んだのですが、何故か現地到着したときに着替えるのを拒否したwichaは未だにパジャマのままなのであります。












そして、魚がルアーに食いつく動かし方を実際に見せて、けれどもワザとバラシして子供達のために魚を残してあげる優しい父親の姿もありました。


「良いか?こうやって竿先をプルプルさせるんだぞぉ?」


「そうすると・・・こうだ!」



プルプル プルルッ        コンッ♪


グググゥ・・・



「あっ!パパ、掛かったァ~♪」


「スゲェ~!!」



プツンッ



「あっ!バレたぁ~・・・」



(ちくしょぉ~!!!)



(がっ、我慢・・・)



「なっ?」


(我慢だ!)



「なっ?こうやってシェイキングさせるとバスが口を使うんだぞ!?」




「そしてああやると魚はバレるから、今のは悪い見本だからな?」


「パパ、今のは僕に悪い見本を見せてくれたんだね?」



「あっ、あ、当たり前だろ!?何言っちゃってるんだ?笑わせるなよ・・??」



ソワソワ・・・



どうもスモラバは波動が強すぎて魚が警戒してしまうことに気付いた僕は、昔一世を風靡した3inchアライブシャッドのダウンショットリグに変えることにしました。


これならスモラバよりも弱々しい波動を出すことが出来て、スクープしている警戒心の強いバスも怖がらずに口を使う筈です。




すると僕がリグを作り終わって今から釣りをしようとしたタイミングで、wichaはまたまた根掛かりしてしまいました。



(おい?このタイミングかよ・・・?)


(がっ、我慢だ!!)




「こっ、これ使いな!?パパが根掛かり取っておくからさ・・?」



やっとさっきオマツリを直したと思ったら、今度は根掛かりだし、なかなか釣りになりません。

オマツリを直してリグを付け替えて、やっと今から釣ろうとしてた矢先に、今度は完全に根掛かりしちゃってるよ?


と思いながら根掛かりを外すのに悪戦苦闘していると・・・




「パパァ~!?」



振り向くとwichaの竿が弓なりにしなって、ラインが右に左に走りまくります。



「おっ、おぉぉ~い!?」


「竿を立てろ!!」


「バラすなよぉ~~?」


「ジャンプされるぞ!竿でいなせェ~!?」


激しく抵抗するバスのジャンプをなんとか耐え抜き、とうとう僕の持つラバーネットにバスは収まりました。




こちらもドキハラ状態で状況を見守っていたので、バスがランディングネットに収まった時には緊張が緩み、全身の力が抜けるような気持ちになりました。










もう少しドキハラ状態が続いていたら、全身の髪の毛が抜けていたかもしれない大変危険なご状況でした。





まさか本当に釣れるとは思っていなかったので、本当に吃驚しました。


そして最高の感動を味わい、wichaと喜びを分かち合いました。



最後まで諦めずに己を信じて

集中し続けて出した答えだと感じました。





やったね、wicha・・・











先程までトイレ休憩で舟着場に戻っていたじじとRukiも近くにいたので、皆で拍手喝采をwichaに浴びせました。



「wicha、マジかよぉ?」


こうなると兄としてRukiは悔しくて溜まりません。



僕としても昨日は一緒にキャストの練習をしたRukiにも釣らせてあげたいと思いました。


この感動をRukiにも分かち合えるようにwichaの釣ったアライブシャッドの付いた竿をRukiに渡して、最後の1時間弱で魚を釣らせようと目論みました。



目の前で弟に釣られたRukiも集中力を高めて、真剣に釣りを始めました。









客観的にみれば、釣りの技術はRukiの方が上です。


なんとか釣らしてあげたいと見守りながら、こちらは釣りをやめて激を飛ばしました。



これでふたりとも釣れれば本当に良かったと思えるのですが、大人が1日やっても釣れないときは釣れないのがバスフィッシングなのです。



無惨にも時間だけが過ぎていきました。











ただ木々は風に揺れて、木はその緑の葉を揺らし、水面は思慮深く沈黙を守り続けました。



結局最後までRukiの持つ竿は生命の息吹で湾曲することはありませんでした。














バスを釣ることは出来ませんでしたが、普段とは違う体験ができたRukiはそれなりに楽しそうにしていました。











こうしてお子達ふたりと親父と一緒に釣りが出来て良かったと思いました。









最後にお子達ふたりで記念撮影しましたが、ドヤ顔のwichaの姿とそれとは対照的に悔しさを隠して平静を装うRukiの何とも言えないアンニュイな写真が撮れました。


次は絶対に皆で釣り上げようね?




(おしまい)