男たるもの時として、旅立たなければならない時があります。


11月4日(日)は僕はwichaを連れて、人生の発車間際の始発列車に乗り込みました。

僕達ふたりは故郷を離れて旅路に出ました。














それから奥多摩の『年券』を使って釣りをすることにしたのでした。















この日の奥多摩はニジマスの放流日であり、放流エリアとなる青梅駅で下車しました。














渓流のシーズンは本来9月末で終了なのですが、ニジマス釣りのみ12月まで可能なのであります。













もう海釣りがベストシーズンなのでそちらに行きたいのですが、『年券』を買ったのに今年はまだ1匹しか魚を手にしていないので、とりあえず遊びがてらwichaを連れてやってきたのであります。










ところが初めてのフィールドで良く考えずに入った最初のポイントは、かなりの急流で水深が深く勢いよくルアーが流されます。

しかも餌釣りの釣り糸がこちらの目の前まで流れて斜めに入るので、ルアーを投げる場所も確保できないので全く釣りになりませんでした。


その後で動いても良さそうなポイントは全て餌釣り師が占領している為、魚がいないところで釣りをするしかありませんでした。










持っているルアーもエリア用のスプーンばかりで、急流の中で思うように動かせるものではなく苦戦を強いられました。



wichaは隣でルアーをバンバン無くして、ラインを絡ませまくり、直ぐに釣りに飽きてしまいました。


こちらもwichaの無くしたスプーンの殉職に涙を流したり、絡まっている糸をほどいたりとオマツリ騒ぎにペースを乱されていました。












wichaにやる気を取り戻させるために、僕は絶対に1匹釣ってやろうと思って頑張りましたが、1回だけ魚のチェイスがあったのに見事にバラしてしまいました。





wichaはどこでそんな科白を覚えたのか、「俺は世界一不幸な男だ!」と叫びながら、僕にまとわりついて釣りの邪魔をし始めました。


雨も振ってきたので、どうせ釣れない釣りなので、僕は『世界一不幸な男』を連れて早々に切り上げて帰ることにしました。











惨敗の霧雨が降り続く中を僕達ふたりは肩を並べて歩きました。



暫くして僕は、wichaに「世界一不幸な男だから、歩いて帰るんだろ?」と言いました。

「世界一不幸な男は、世界一不幸なことに電車には乗れないよね?」とご指摘をしました。


すると『世界一不幸な男』は、「いや、俺は今から世界一幸福な男だ!」と主張の変更をしました。


僕はwichaに向かって、「世界一幸福な男だから歩いて帰るんだろ?」と言いました。


wichaは、「どうしてだよぉ~?!」と語気を強めて言葉を発しました。


僕はwichaに向かって、「世界一幸福な男なら歩いて帰っても直ぐに100万円を拾うから、それで帰えれるだろ?それにリムジンに乗ったお金持ちが家まで送ってくれるかもしれないだろ?」と言いました。


それを聞いたwichaは、「ああ~、俺は何て世界一不幸な男なんだぁ~!!!」と叫びました。


そんなwichaに向かって、僕は『世界一不幸』とも言える象徴的な光景を指し示しめしたのでした。
















それから懐かしい駄菓子屋さんを発見して、「パパはお菓子買うけど、wichaは『世界一不幸な男』だからいらないだろ?」と言ってやりました。


wichaはプンプン怒って、僕に殴りかかってきました。












結局、直ぐにwichaは僕の『くすぐりの刑』に降参して、仲直りした僕らは公平にじゃんけんをしました。


駄菓子屋さんでのお小遣いは僕の子供の頃から、100円までと相場は決まっていましたが、wichaがじゃんけんに勝ったので150円まで賃上げしました。


懐かしさのあまり、こちらもついつい駄菓子を購入してしまいました。












昔ながらの『そろばん』を難しそうに弾くお婆ちゃんをぼんやりと眺めながら、懐かしさを感じると同時に計算が合っているのか不安を覚えてしまう未熟者の自分がいました。


その横で『世界一不幸な男』は興味深く、お婆ちゃんがそろばんの珠を弾くのを眺めていました。











電車に乗る前に僕達ふたりは腹ごしらえがてらに、駅前のお蕎麦屋さんの暖簾を潜りました。












とろろ蕎麦を頼むととろろの中に普通に鶏の生卵が入っていました。

だからお蕎麦を啜ると生卵の味しかしませんでした。









そんな僕の隣にいたwichaは突然、お店のお姉さんに向かって、「何でお店の中に蝿が沢山いるんですかぁ?」と失礼極まりない質問を浴びせかけていました。


暫くすると罪のない蝿たちは、厨房にいたお爺さんに蝿叩きでペシペシされていました。



そんな『世界一不幸な蝿たち』を眺めながら、世界一美味しいお蕎麦をふたりで啜りました。










また遊ぼうね?







(おしまい)