今年から女子のテニス中継(WTAツアー)が見られなくなったのをご存知だろうか。もちろんテニスファンなら周知の事実なのだが、それ以外の人達には事の重大さが伝わっていないようだ。昨年までWTAツアーを放送していたCSのスポーツ専門チャンネル「GAORA(ガオラ)」が、男子(ATPツアー)の生中継を大幅に増やした代わりに、女子のツアー中継をあっさり切り捨てたのだ。おそらくこんな事態が起こるのはテニスやバドミントン、ハンドボールなどの競技を常にマイナー扱いするこの国だけだろう。女子の試合がテレビで放送されるのは4大大会と国内の大会が2つ(東レパンパシフィックオープンと全日本選手権)だけである。夏のオリンピックもほとんどストリーミング中継だし、現在WTAツアーを見る方法は外国の違法ストリーミング中継しかない。こんなに異常な状況を放置している他のスポーツ専門チャンネルにも怒るどころか呆れる。日本人選手の活躍でスポーツを語るのは時代遅れだと分かっていても、どマイナー球技(もちろん野球を指す)依存を止めないこの国は最低のスポーツ観しか持ち合わせていない。女子サッカーの「なでしこジャパン」がW杯で優勝、五輪で銀メダルを取ったのにも関わらず国内リーグを始めとする根本的な部分の扱いは大して変わらない現状を見ても、この国における「女子スポーツ蔑視」は厳然たる事実だ。


 確かに男子の試合しか見ないテニスファンも少なからずいるが、女子ツアーに限って全く放送をしないというのは明らかに大問題である。テニス人気が衰えたわけでもなく、日本人がテニス嫌いになったのでもない。テニスというスポーツの価値観をかたくなに認めようとしないこの国の凡庸なメディア(1番悪いのがタダテレビ)のせいなのだ。