どうせ、このまま時間が経てば私はあなたを許してしまう。
どうしても、嫌いにはなれない。
そして、それをきっとあなたも分かっているんだよね…?
「理佐ぁ〜〜〜〜〜!今日一緒に帰ろう!?てか泊まりおいでよ!」
「いいけど…あかねんは?いいの?」
「あぁ!いいのいいの!茜は大丈夫!」
愛佳のクラスに迎えに来た私を余所に、今日もまたそうやって私との約束なんかすっぽかして理佐を選ぶんだ。
茜は大丈夫?そんな訳ないじゃん。口ではいくらでも大丈夫って言えるよ。でも、心は悲鳴を上げている。
余裕な振りをしている私も悪いんだけどね。
「あ〜〜〜理佐可愛いっ」
「はいはい。」
こっちの気も知らずに、まったく悪びれた様子もなく理佐にゾッコンな愛佳を見て少し呆れてしまう。
それでも私は笑っていて、自分でも自分が理解できない。
だけど、面倒に思われたくないし今日はもういいや。
——————翌日…
「茜!今日は一緒に帰ろう?」
「今日は菜々香と帰るから」
「え?今日は一緒に帰るって約束したじゃん!?」
「…愛佳自分が何言ってるか分かってる?」
「…は?意味わかんないし」
私の中で、何かが切れた。
——————ガシッ
涙を堪えながら愛佳の手を引き、開いている教室へと入る。
「なに、はぁ、はぁ、、、どうしたの、、」
「約束、破られてどう思った?!」
「え?」
「恋人に約束破られて、いい気持ちした!?」
「いや…いい気はしない…」
今まで我慢していた思いを、泣きながら訴える。
そんな私を見た愛佳は困惑していて、眉はハの字だし目には涙も浮かんでいる。
「私がなんとも思ってないとでも?」
「ごめん…。茜なにも言って来なかったから大丈夫なんだと思ってた…ごめん。」
「自分勝手すぎるよ!」
「ごめん……。嫌いになった…?」
私が愛佳のことを嫌いになるはずがないって分かってるのに、そんなことを聞くなんて、本当にずるいよね。
「嫌いになるわけない」
「ん。」
「私には愛佳しかいないの。愛佳が全てなの。」
「ん。」
「それくらい、大きなことなの。」
「そうだね。苦しくさせてごめん。」
愛佳の香りがふわりと漂い、私の体を優しく包む。
「大好き。」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそう言われ、私を抱きしめる力だけはだんだんと強くなっていく。
私も不器用だけど、愛佳も不器用だから…今まで苦しくて…
それでもやっぱり愛佳が好きで。愛佳の傍で毎日を過ごしたくて。
「茜。」
「ん?」
「……菜々香との約束忘れてない?」
「ふふ、本当は約束なんてしてないよ。」
end