記事より~
害虫駆除会社「キャッツ」の株価操縦事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた公認会計士細野祐二被告(53)の控訴審判決公判が11日、東京高裁で開かれ、原田国男裁判長は懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)とした1審東京地裁判決を支持し、無罪を主張した被告側の控訴を棄却した。
原田裁判長は、60億円の「預け金」を計上した半期報告書の記載などについて、「虚偽と認められる」と認定。「適正な会計処理で、虚偽記載はない」とした被告側の主張を退けた。
1審の東京地裁は昨年3月、細野被告について、「会計知識を提供し、犯行に重要な役割を果たした」と認定し、有罪とした。
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当時、新日本監査法人のパートナーであった細野氏。
現在は、個人事務所と開設なされているようです。
「公認会計士 細野祐二 事務所」
http://www.kjps.net/user/khy/index.html
ここに今事件に対して細野氏の主張が掲載されています。
細野祐二氏コメント:2006年4月3日付
http://www.kjps.net/user/khy/watashino%20shuchu.html
詳細は読んでいただけばわかるのですが、このコメントのポイントとして以下の点が挙げられます。
・買収価額としての価額算定は適正なものだったこと
・粉飾とされている「預け金」と「貸付金」は、ともにB/Sの資産科目であり、財務諸表に与えるインパクトは少ないということ (損益インパクトはないということ)→したがって粉飾ではないということ
・社長以下関与者の供述が、事実とは異なるものであるとのこと→異なる供述をもとにして、裁判官が判決をしているとのこと
・粉飾決算の指南に対する謝礼金とされている一千万はM&A業務の対価であったということ→粉飾指南の謝礼金ではない
これにつきまして、M&Aファンドに対する「預け金」と社長に対する「貸付金」が、P/Lインパクトがないから問題ないだろうという主張はいかがなものだろうかと思います。
が、その主張はさておいても氏のコメントに記載されているように、ファンドとの間に契約書等が具備されていること、および当該ファンドの運営会社に対しての確認状において、問題なく同金額で回答されていたのでしたら、確かに「預け金」として処理するにあたって確証を得たと判断してしまうと思われます。
このことは、当時の調書をみることで、細野氏が言うように預け金として問題ことを検討しているか否かすぐにわかると思うのですが、実際はどうなんでしょうか。
また、氏が業務とした関わったM&Aに際して、購入したとされる株式。当時の社名ファースト・マイル社は、現在も「クラブネッツ」と名前を変えて現存しています。
「クラブネッツ」HP
当時の株価算定価額の適正性まではわかりませんが、すくなくとも株式購入に当たってはまったくのダミー会社みたいなのを60億円にて購入したと言うことではなく、事業性のある会社のM&Aであったということはわかります。
いろいろと双方の言い分が異なるなかで、今回このコメントを読んでみて細野氏の主張にたいして、個人的には確かになと思う部分も多分にあります。
しかしながらどうしても解せない部分があります。それがM&Aの報酬の部分です。これにつき、細野氏のコメントにおいて以下の記述がありました。
(以下原文引用)
本件においては、公認会計士の正当なM&A業務の対価である1千万円の報酬が、粉飾決算の謝礼金であると認定されています。この報酬を現金で渡した社長が、報酬は粉飾の謝礼金で、支払時期は粉飾決算の確定直後であると証言したためです。一審では、社長の現金の入出金記録を示して、これらの時期に社長の金庫に1千万円の現金がなく、証言は虚偽であることを立証したのですが、裁判所は必ずしもそうは推認できないと判定しました。
上記コメントを読む限り、細野氏は謝礼金とされている一千万の支払時期を問題としており、これにつき社長の現金保有状況とあわないだろうと言っています。
が、現金で報酬が支払われたことまでは否定していません。本当に一千万がM&A業務の対価としての報酬であるのならば、現金で一社員が受け取るってあるのでしょうか。法人としてM&A業務を受けていたとことを前提としてとしてしまっていますが、個人としてM&A業務を請け負っていたとしたら、また問題でもありますし。
どちらにしても、この点においては細野氏に落ち度があると思われます。