9mmポリスという珍しい弾薬を使ったSIG Sauer P230 | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

マカロフは9mmマカロフ(9mm×18)という弾薬を使うことは別の項目で書きましたが、もともと9mmウルトラとしてドイツで開発されたものを参考にした弾薬です(弾丸の直径は少しちがいますが)。同じ9mmウルトラから派生した弾薬が9mmポリス(9mm×18)で、西ドイツで1970年代に開発されました。これは.32ACP(7.65mm×17)や.380ACP(9mm×17)よりも強力で、9mmパラベラム(9mm×19)使用の拳銃よりもコンパクトな警察用ハンドガンを西ドイツ警察が要求したからです。こうして、9mmポリス弾をつかうSIG Sauer(シグ・ザウアー) P230が開発され、警察のトライアルに提出されました。しかし、結局は9mmパラベラム弾ながらコンパクトな設計のH&K PSP(P7)やSIG Sauer P225(P6)が採用され、P230は採用されませんでした。やはり、威力の大きな9mmパラベラムが選ばれたわけで、9mmポリスは中途半端と判断されたわけです。なお、9mmポリスと9mmマカロフは同じ9mm×18と表記されますが、弾頭の直径などがちがうため、互換性はありません。

P230は西ドイツ警察には採用されませんでしたが、.32ACPと.380ACPはホームディフェンス用として市販されました。後でステンレススチール製のP230 SLが作られ、これが映画によく登場します。たとえば、リメイク版の「グロリア」(Gloria、1999年)では主人公のグロリア(シャロン・ストーン)がステンレス製のP230を使います。そのほか、「ラスト・アクション・ヒーロー」や「コピーキャット」にも登場するようです。

また、日本の要人警護警察官のSPや皇宮警察ではそれまで使用していたワルサーPPKから、SIG P230JPに替えています。盗難防止用のランヤードのリングがグリップ下部に追加されたり、マニュアルセーフティー(安全装置)も新設されています。口径は.32ACPで、貫通弾が二次被害を起こすのを防ぐために、32口径を採用しています。日本の警察専用ですので、とうぜん日本のテレビドラマや映画にしか出てきませんが、そのものずばりの「SP」で、全員がこのP230JPを使用します。刑事ものテレビドラマでは定番で、「BOSS」、「交渉人」、「SPEC」などで、P230またはP230JPが使われています(もちろん、すべてモデルガンをベースにした、プロップガンです)。

なお、P230の後継にはP232というマイナーチェンジモデルがありますが、あまり使われていないようです。


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