日本の豊和工業もライセンス生産したアーマライトAR-18アサルトライフル | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

フェアチャイルド社のアーマライト部門というと、AR-10、AR-15(M16)などを設計した天才銃器設計者ユージン・ストーナーを連想しますが、ストーナーは1961年ごろ同社を去ってしまいます。そして、アーサー・ミラーを主任設計者とするグループが新しいアサルトライフル、AR-18を1963年に開発するのです。このAR-18はストーナー設計のAR-15をベースにしながら、故障の少ないショートストロークピストンを採用して、ストーナーが採用したリュングマン機構から方向転換をしたのです。参考にしたのはUS M1カービンであり、発射ガスを直接受け止めるリュングマン機構で問題とされていたボルトキャリアの汚れ問題を解決しました。また、ボルトキャリアのハンドルはUS M1ガランドと同様に不完全閉鎖の場合には手動で前進させることが可能でした。このため、初期型M16のような不完全閉鎖は避けることができたのです(M16A1でボルトフォワードアシストアセンブリーが追加されましたが)。ほかの点ではAR-15を継承していて、5.56mm×45NATO弾を使うアサルトライフルでした。

アーマライト部門はこのAR-18開発を機に、アーマライト社を立ち上げ、AR-18を世界中の軍隊に売ろうと考えました。その一環として、日本の豊和工業(すでに自衛隊の六四式自動小銃を開発していました)、イギリスのスターリング、中華民国(台湾)、シンガポールのCISにライセンスして、生産をさせるようにしました。豊和工業では、7.62mm×51の六四式小銃の後継として、5.56mm×45NATOの小銃を開発しなければならなかったため、その研究も兼ねて、AR-18のライセンス生産を引き受けました。AR-18は生産後、すべてアーマライト本社へ送られていましたが、セミオートオンリーとしたAR-180は民間用(競技用、狩猟用)として、アメリカ市場を始め、全世界で売られることになります。しかし、不運なことに、豊和製のAR-180は北アイルランドのIRA強硬派によってアメリカで大量に買い付けられ、フルオート射撃可能なように改良されて、イギリス軍との戦闘に使用されてしまったのです。これが日本の国会で問題視され、武器輸出三原則違反として追及されたため、豊和工業はAR-180の製造を中止しました。

AR-18が登場するいちばん有名な映画はアーノルド・シュワルツネッガー主演の「ターミネーター」(第1作)でしょう。シュワルツネッガーが演じる未来から送り込まれたターミネーターT800がAR-18を乱射します。とくに、警察署での銃撃戦では、右手にAR-18、左手にフランキSPAS12ショットガンを持って、警察官たちを皆殺しにします。また、ピアース・ブロスナン主演の007「トゥモロー・ネバー・ダイ」でもブロスナンが使用します。日本の映画では高倉健主演の「野生の証明」で自衛隊が使用していますが、これは考証としては間違っていますね。自衛隊は制式小銃としては、六四式と八九式であり、AR-18はあくまでも研究用に少数導入しただけです。おそらく、豊和工業からAR-180を借りたものと思われます。



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