温海温泉 (上山場外発売所) | ☆まけうまブログ★

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徒然なるままに日暮らしスマホに向かひて心に浮かぶよしなしごとを競べ馬の有様とともに書きつらねる自己満ブログ。
前半はよしなしごと、後半はレース回顧。
競馬道は一にも二にも検証の積み重ね。怠ればハズレ馬券が山と成す。

ブログネタ:メールを無視するのはどんなとき? 参加中


風景を文章で正確に表現するのは難しい。
灯台の風景や県境碑なんか写真で載せちゃえば簡単なのだが…
しかし、自分は言葉の力を信じている☆

…というのは半分本当だけど、実際の所は携帯の充電も補助充電パックも完全に電池切れして、撮りたくても撮りようがなかったというのが真相。
その間、メールも完全にシカト⇒返信しようがないんだからしょうがない。


さて鼠ヶ関。

[一夜干しって、汽車で持って帰っても悪くならないっすか?]

茶をシバいていたおっ母ァ二人と、赤いTシャツのオッサンのいる円卓に声をかける。
この地方では、レールの上を走るものは全て[汽車]と呼ぶのだ。

[今日中だったら…]

[とりあえず今日の夜には着く予定だけど]

[氷のペットボトルさ巻いて縛っとけば大丈夫だべ]

という訳で、三枚千円の一夜干しを買う。

[汽車で来たんですか?]

珍獣でも発見したかのような顔で、おっ母ァの一人が訊いてくる。
この辺のくだりは庄内弁のイントネーションに頭で変換していただこう。

[汽車でぶらり一人旅がぁ?]

赤いTシャツのオッサンが話に乗って来た。
この人は[会長]と呼ばれていた。漁業組合か何かの会長だろうか…短い白髪頭に、鬼瓦のような顔を日焼けさせて豪快に笑う。
会長の船でしか釣れない珍魚もあるらしく、実は凄腕の猟師の親玉のようだ。

袋詰めしたイカの一夜干しをペットボトルと一緒に新聞で巻いている間に、自分は赤シャツの会長さんと四方山話をしていた。

どこから、何でここまで来て、この後、どこに行くのか?おまえの職業は何で、今は休みなのか?…とりあえず相手の興味が尽きるまで、こういう旅の時は聞かれることになる。

[一日どごまでも乗って2500円?ほぃづぁ安いなぁ]

ちょうどその時、車で買い出しに出ていたおっ母ァの一人が戻って来た。
昼飯を買って来たらしく、いなり寿司や助六がテーブル一面に並べられた。

[チェ~]

と会長が寿司を指差す。

[チェ、って分がっか?]

寿司を豪快に頬張りながら、聞いて来た。
一瞬、チャイやフォーが頭をよぎってしまったのだが…

[山形だど、ケー、だが?]

ああそういうことか。
[ケー]⇒[食え]がなまって短縮型になった言葉だ。

[こっつは、カ、キ、ク、ケ、コがやんねくて(言えなくて)、チャ、チィ、チュ…ってなんのよ]

おっ母ァの一人が、解説しながらゲラゲラ笑って、テーブルに会長と自分への冷たい水が置いてくれた。
せっかくなのでいなりを1つ摘ませてもらう。

おっ母ァたちは、寿司に手をつけない。
どうやら4パックほどの寿司は全部会長の昼飯なのだった。

やがてイカが手元に届いたのだが…
今まで会長に話していたことを、別のおっ母ァに聞かれて、また話す。

[だから、青春18きっぷで一人旅だってよ。東京から夜行で新潟に来て、日本海を上って、ついでに女のケツも追いかけて…]

先に話を聞いていた会長が、横からツッコミがてらに、いらない独自解説を入れて笑うという、いかにもな展開。

そのうち、会長と自分の前に、[どうぞ~]とカップ麺(マルちゃんでかまる味噌)が無造作に置かれた。

いなり寿司にカップ麺…
これを食ったら、もはや寿司屋で新鮮な魚という野望は完全に不可能じゃないか?

[なに、東京から夜行バス?で、その切符、年齢制限ないの?一日2500円で、どごまでも行ぐい(行ける)の?]

会長⇒イカの準備をしてくれたおっ母ァAとB⇒買い出しから帰って来たおっ母ァCと、出入りが激しく話に混ざって来るから、話がわかっていない相手には、またそこから説明するしかないという…。

やり取りを書いていたらキリがないのだが、地元ネタから性格ネタに、ふてぶてしくも豪快なキャラが絡み合って、話がまるで止まらない状態。

口は悪いが、変な所で親切なのは、いかにも山形の父ちゃん母ちゃんだなぁという感じ。

そのうち会長に、市からのテレビの取材協力要請の電話が来て話し込んでる間に、また通りすがりの漁業のオッサンがまた一人乱入して来て、もはや部外者には収拾がつかない状態。

それでも混ざっていられる空間なのが不思議だが…

[あら、イカ買ってけだんだどれ?]

おっ母ァCは、帰る寸前まで自分を客だと認識してなくて、乱入してきた通りすがりの変な一人旅の兄ちゃんだと思って話し続けていたのだった。

何もない灯台の麓だけど、居座ってみると妙な魅力のある土地であった。

もはや満腹で寿司屋でランチは食えそうもなく、暑い道を駅に向かう。

郵便局に寄って、ATMで所持金を引き出す。
ホリエモンが何と言おうと、全国統一ネットワークで手数料がかかならないゆうちょ銀行は素敵だ。
どんな田舎だろうと古い集落には必ず郵便局がある。
それにしても、ATMのエアコンって何でこんなに気持ちいいんだろう☆


2分ほど遅れて、温海温泉ゆきのバスが来た。
乗るの?と世にも不思議げな顔をした運転手がドアが開ける。
客は他に誰もいない。
市から補助金が降りているのだろうが、何もなかったら潰れてそうな路線だ。

鼠ヶ関の狭い路地を抜けて、国道7号に出ると、今度は線路と入れ替わってこっちが海岸沿いに走る。
途中いくつもバス停を過ぎるが誰も乗って来ない。
鼠ヶ関漁港の周辺と違って、道の駅には車やバイクが大量に立ち寄っている。

早い話が、ここに立ち寄れば全部済んでしまうということだ。
車で来れば、暑い日差しの中を、こんな不便な思いはしていない。
その代わり、会長やおっ母ァたちにいなり寿司やカップ麺を振る舞われることもなかっただろう。

この周辺に訪れる中では、おそらく1%ほどの稀少な旅人に自分が入っているのは間違いなさそうだ。

あつみ温泉駅まで来て、ようやく爺ちゃん婆ちゃんが5人ほど乗って、そのまま山を縫うように温泉街へ。

温海は千年前から存在する古い温泉場。
南側に温海川が流れ、小綺麗に整備された河畔と山あいとの狭い一角に温泉街が形成されている。
俗化していない分、何とも落ち着いた風情のある温泉の街なみだった。

神社前のバス停から、共同浴場の正面湯に歩く。
草津や蔵王にあるような、浴槽にカランだけの簡素な入浴施設。
部外者は200円を賽銭方式で箱に投入して入る。
先客は2人。
見た所、お湯は無色透明…これはヤバい。

本当に温泉?とか言ってるとえらい目に遭う。
伊東や伊香保のように、古い温泉場の無色透明のお湯ほど強烈に効くのだ。

六郷温泉で買った花王石鹸で汗を流して、空いてる場所に体を沈める。

ぐぉおおおッ!

温海というだけあって、思わず顔が歪んで硬直するほどの熱さだった。

[さぁ、こっちへ。いっぱい水出して入った方がいいですよ]

先客のオッサンが苦笑いしながら、埋めるための水の出る場所を空けてくれた。

しかし、それでも5分と入っていられない。
脱衣所に飛び出して、ぶら下がっていたDOCOMOショップのうちわで扇いでいたが、どれだけ出ても止まらないほどの汗が吹き出す。

空けてくれたオッサンも一緒にうちわで扇いでいるが、もはや拭いても止まらないから諦めてクールダウンを待つ態勢。

しかしこれで入浴終了では、ここまで来た甲斐もないので、もう一度湯舟に突撃する。
さっきよりは体が慣れたが、それでも長時間入るのは絶対に無理だ。

汗だくになって飛び出すと、もはや茫然とうちわで扇ぐしかない状態。

それにしても、激烈に効く[本物]の温泉であった。

あつみ温泉駅に行くと、始発の酒田ゆきがもう来ていた。
ガラ空きだった。
時間帯的に、鶴岡あたりから乗ってくる帰りの高校生のための列車なのだろう。

温泉に浸かったせいか、気付いたら列車の揺れで爆睡。
起きたら高校生を満載していて、余目に着く所だった。
ここで乗り換えて、清河八郎の故郷や、最上川下りの船着き場を通って新庄に抜け、それから山形ゆきに乗って県庁所在地に向かい、そのまま勢いで2つ先の茂吉記念館前まで行って、上山競馬場跡地の場外で大井の馬券でも買っちゃおうかな?と思っていた。

しかし、漆山という、新幹線の待ち合わせで11分も停車する山形市内最初の駅で煙草を吸っているうちに、戸崎も的場先生も遠い世界に霞むほど疲れが襲って来た。

この区間は、新幹線と普通の電車が一緒に走る。
踏切で止まってると新幹線が走ってくるし、普通電車はアホみたいに速い。

同じ高校のチョチョシビリくんがこの駅の近所に住んでいて、たまに訪れたもんだけど…
この辺りもずいぶん昔と変わってしまったな。

そして電車はやがて県庁所在地の中心部に滑り込み、自分は乗り慣れたバスに乗って、見慣れた風景の中に帰っていった。