「このたびはご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」
今思えばステージに立った時、はるごんはすでに少し泣いていた。
「今回の握手会は体調不良ということでお休みさせていただいたのですが、実は違う理由があります」
「あの事件の後、握手会をするのが怖くなってしまって、大丈夫だとわかっていても、なんだか怖くて」
「握手会だけじゃなく劇場公演も出れなくなってしまって。。。」
事件のことを思い出したのか、申し訳ない気持ちからなのか、思わず言葉を詰まらせて泣いてしまった。
会場からはがんばれー!と声が上がる。
「それで、いろいろ考えて、、、このまま握手会とか劇場公演に出れないままAKBにいるよりも、一歩を踏み出そうと思いました」
すでに会場はざわついていた。
僕も次の言葉はわかっていた。
「なので、、、私、仲川遥香は、AKB48を卒業します」
えー!?という大きな声がいたるところから聞こえてきたが、僕は声を出せなかった。
信じられなかった。
はるごんだけは卒業しない。
ありえないことだけど、ずっとそう思っていた。
「あと、もう一つ理由があります」
はるごんは涙を流しながらも、しっかりした口調で話を続けた。
「実は、、、好きな人ができました」
会場が大きくざわついた。
「この人と付き合えるならAKBを卒業してもいい、そういう人ができました」
すでに混乱状態だった僕はあんまり驚かなかった。
ただただ、はるごんの立つステージを遠くから眺めるだけ。
「裏切り行為だと言われるかもしれませんが、これが自分で決めた道です」
「その人にはまだ想いを伝えてなくて片想い中なんですけど。。。」
「これからは今までしてない分、誰よりも素敵な恋をして、女優仲川遥香としてみなさんの前に立ちたいと思っています」
「ファンの人は減っちゃうと思うんですけど、こんな私でも応援してくれる人がいれば嬉しいです
今までありがとうございました!」
はるごんの顔は清々しく見えた。