ハルさんが月曜日に出社しなかったけど、無断欠勤を社長のトクさんは怒っていた。
火曜日、俺が出社すると、トクさんにハルさんのことを聴かれた・・・
本当に根掘り葉掘り、いろいろ聴かれた。
でも俺は何も答えることができなかった・・・黙り込むのが精一杯だった。
トクさんに嘘をつくことに胸が張り裂ける思いで、とても嘘はつけない。
黙り込むのが精一杯だった。
そんな俺を見てトクさんは・・・
「分かった話したくないのなら、今はなにも話さなくていい」
「でも気が向いたらでいいから、知ってること聞かせてくれると、ありがたいな・・・」
トクさんは優しい笑顔で言った。
トクさんの優しさが痛かった・・・本当に痛かった・・・
水曜日、俺は全てを話す決意をしていた。
仕事が終わったら、社員全員集めてほしいとトクさんに、その日の朝に告げた。
そして仕事が終わり事務所に帰ってくると、社員全員の前でハルさんのことを話した。
俺が話す前にトクさんが言葉を発した。
「ハルのやつ、葵ちゃんと一緒なんだろ?」
トクさんは葵さんが退社したこと、ハルさんの様子がおかしかったこと・・・
既に把握していた。
俺は全てを話した。
みんな一言も発せず、ただ黙って俺の話を聞いてくれた。
俺が話終わるとトクさんが言葉を発した。
「T.S・・・話してくれて、ありがとな」
「それにしてもハルらしいというか・・・相変わらずだわ」
少し呆れた顔で話す。
「みんなもハルが居なくなった経緯は分かったと思う・・・」
「みんなは、どう思う?許せねぇか?」
社員のみんなが口を開く。
社員のみんなは事務員さんを除いて、全員ハルさんやトクさんより年上だ。
「ハルらしいな、ほんとに」
「相変わらず、無茶ばかりしよるわ・・・」
「ほんと後先考えねぇで動くな・・・」
「中身はほんと子供な」
そんな声が聞こえてきた。
そして事務員さんが言う。
「でも・・・みんなハルさんのことが好きだよね?!」
そして、みんなが「もちろん!」「聞くなそんなこと!」「応援するに決まってんべよ」
俺は嬉しかった・・・みんなの言葉が嬉しかった。
トクさんが言う。
「答えは出たな」
「ハルは必ず戻る!それまで、みんなで踏ん張ってくれよ!」
「それから、このことは他言無用で頼むわ」
「俺からの頼みだ、よろしく頼む!」
みんなは、こう言って答えた。
「当たり前だ!社長!」
「そんな心配しなくても、誰にも言わねぇ!頭上げろ!」
トクさんは「ありがとう」と言って、深々と頭を下げた。
そして
「ハルのことは俺に任せてほしい!」
みんなが頷き、その話は終わった。
そして更に二日が過ぎた頃・・・
宗二さんから連絡がありました。
「どうらや新しい住処を見つけたらしい。ハルは京都だ!」
こう言ってハルさんから連絡があったことを報告してくれた。
宗二さんは、決して俺にも誰にもハルさんの新しい住所は教えてくれなかった。
「信じて待っていてほしい」とだけ言われた。
ハルさんの新しい住所を知っているのは、宗二さんと美香さんだけだ。
宗二さんと美香さんは、アパートの家具、家電などを新しい住所に送り、
アパートの引き払いなど、手続きを二人でやった。
それから一ヶ月くらい経過した・・・
その前に、一ヶ月の間トクさんが取った行動を話します。
トクさんはハルさんが居なくなってから、宗二さんと美香さんに何度も訪ね話を聞こうとした。
だけど宗二さんも美香さんも「かけおち」の経緯は話したが、
ハルさんの居場所だけは決して話さなかった。
そしてトクさんは仲の良い知り合いに個人で探偵をやっている人がいて、
その人に依頼しハルさんの足跡を追っていた。
分かっているのは岐阜駅に行ったという情報だけだったみたいです。
そして一ヶ月が経った頃、トクさんは突然こう言い出した。
「ハルを見つけた!京都で同じ業界で働いてやがる」
「俺は京都に行ってくる。後は頼んだぞ!」
と言って翌日ハルさんがいる京都へ旅だった。
俺は、このことを宗二さんに話した。
すると宗二さんもトクさんの後を追うように京都へ向かった。
ここからは宗二さんに聞いた話だ。
まず、ハルさんは・・・トクさんに一発おもいきり殴られたらしい・・・
その後、ハルさんと葵さんに事の真相を聞き納得したらしい。
ハルさんは京都でも、同じ職種に就きがんばっていたそうです。
葵さんは妊娠3ヶ月だそうです。
そして、葵さんの二十歳の誕生日に籍を入れる計画らしい。
そしてトクさんは、ハルさんと葵さんに、こう告げたらしい。
「おまえが帰って来るのを、みんな待っている」
「そのために俺が現状を打破してやる!」
「だから、そのときは帰ってきてくれ!」
「二人が住みやすい状況にするから、俺に少し時間をくれ!」
「だから俺の連絡があるまで、ここでがんばれ!」
「しっかり葵ちゃん守るんだぞ!」
こう言って、ハルさんと約束し帰ってきたらしい。
さすがトクさん・・・
俺は、このトクさんも尊敬している。
トクさんと宗二さんが帰るとき、ハルさんと葵さんは、何度も何度も泣きながら
「ありがとう、ありがとう、本当にありがとう!」
と二人に感謝の言葉は言ったという。
ハルさんと葵さんは、京都でも・・・
かけおちしたことに罪悪感を感じ、苦しんでいたようです。
そして、帰ってきてからのトクさんは、葵さんの妹「真美さん」を味方に付け、
何度も何度も、結婚に反対していた葵さんの兄二人に説得のため足を運んだ。
葵さんの二人の兄を説得するまで、なんと約1年半もの年月を要した。