土曜日に真美さんが帰国した。

 

よほど疲れていたのか、その日は帰宅後すぐ眠ったそうだ。

 

そして次の日の日曜日に、俺の家にハルさんと二人で挨拶に来てくれた。

 

 

 

 

この真美さん。

 

渡航前に勤めていた飲食店の仕事を辞めていた。

 

店長の引き留めもあったようだが、迷惑をかけるということで仕事を辞めていた。

 

そして俺は真美さんの帰国後、あることを決めていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挨拶に来た真美さんに

 

「うちの会社で働かないか?」と誘ってみた。

 

もちろん事前に社員全員の賛同を取り付けた上で、真美さんを誘った。

 

社員は全員なぜか喜んでいた。

 

もちろん社員じゃなくパート形式で事務員としてだ。

 

そしてハルさんに、このことを話すのも初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真美さんを誘った直後、真美さんに「ありがとう」と言われハグされた(笑)

 

嬉しいときは、いつもハグする女性なので、いつものことだった。

 

そして少し考える仕草を見せた。

 

すかさずハルさんが言う・・・

 

「マー坊・・・おまえの好きにしたらいいんでない?」

 

「拙者は賛成でも反対でもないけど、おまえの意志を尊重するよ」

 

相変わらず掴めない人だ・・・ハルさんの本心は?と、俺は思った。

 

すると真美さんが答えた。

 

「気持ちは嬉しい、でも、せっかくだけど自分の仕事は自分で探すよ」

 

「ありがとね、T,Sちゃん!」

 

真美さんは、どこか寂しそうに笑いながら言った・・・

 

しかしだ!俺も一度断られたくらいで引き下がれない!

 

俺は更に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真美ちゃん・・・あのさ・・・」

 

「この会社はハルさんが築いたもので俺の仕事の基盤になっている」

 

「その会社で働けば、ハルさんが今まで何をどうやって来たかが少しは解ると思うんだ」

 

「そしてハルさんを慕い集まった”超”が付く一流の技術者達は、ハルさんに育てられた人材」

 

「ハルさんがやってきた仕事を少しでも理解できるチャンスだとも思う」

 

「そしてハルさんが全てを賭けてやってきたこと、走り続けてきたこと、色々なことが詰まった会社だ」

 

「そして社員全員が、真美さんのことウエルカムだよ!」

 

「事務仕事は嫌い?Excelは使いこなせるでしょ?実務能力は申し分ないし、行動力も天下一品うちの会社の看板娘になってよ!」

 

「それに融通効くし、今まで以上に自由に動けると思うよ?」

 

「給料だって真美さんが納得するだけ出せるし、ハルさんの分もプラスしたって社員は誰も文句言わない」

 

「ねぇ?一緒に働こうよ?真美ちゃん!」

 

こんなことを言って真美さんを説得し、俺は食い下がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると再度、真美さんから答えが返ってきた。

 

「あのね・・・Excelも使いこなせるし事務仕事は問題ないと思う・・・」

 

「給料のことに関しても、ありがとね。そこまで、あたしをかっってくれて嬉しかったよ」

 

「ハルさんがやってきたことも知りたい気持ちもあるし、人間関係に不安もない」

 

「むしろ状況を把握してくれてる社員さんたちなので、安心して働けると思う・・・」

 

「でも・・・事務仕事が嫌いなんじゃなくて、座ってる仕事が嫌なの・・・」

 

 

 

 

 

 

俺は・・・

 

真美さんは活発で、一つの場所にじっとしていない女性だということを忘れてた・・・不覚だ。

 

そして真美さんが続ける・・・

 

「道具の整理や材料の整理に管理、掃除や社員さん達の身につけるモノの洗濯、現場への届け物・・・いろいろやらしてほしい」

 

「危ないからと言って、お姫様扱いはされたくないし、特別扱いも嫌!」

 

「もちろん受付や事務仕事もやるけど・・・いろいろな手配や管理までやらしてほしいの・・・」

 

 

 

 

俺は正直言って驚いた・・・

 

真美さんは特別扱いは嫌で、みんなと同じ扱いならいいと言うし、

 

なんでもやらしてくれと条件を付けてきた!

 

たしかに・・・真美さんなら何をやらしても、やりこなせてしまうだろう。

 

それくらい優秀な女性なのだ。

 

要は「事務員として」というのに、「それだけでは嫌」ということなのだ。

 

 

 

 

俺は真美さんに

 

「自分のやりたい仕事があれば会社内で自由にやってくれればいい」と、答えた。

 

社員も誰も反対する者も、文句を言う者もいないだろう・・・

 

そして俺も一つだけ条件を付けた。

 

「用意するのは事務員の制服だけ。作業服は用意しない!」

 

「現場での作業以外で自由にやってもいいが、”現場で作業させろ”ってだけは無しね」

 

「現場での作業は甘くない!過酷で危険だ!そのことだけ理解をお願いします!」

 

真美さんは頷いて、「よろしくお願いします」と言って頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうやって真美さんは11月から、うちの会社で働くことになった。

 

給料は能力に応じてで、こちらの勝手な評価でいいと言った。

 

こちらの評価に文句は言わないとも言っていた。

 

 

 

ハルさんは笑顔で話を聞いてるだけだったが、真美さんが了承した後にこう言った。

 

「ははははは!マー坊らしいわ!この、じゃじゃ馬め!」

 

「T,Sよ!おまえにこのじゃじゃ馬を制御し使いこなせるか?乗りこなせるのか?」

 

と、ハルさんが口を挟んだ。

 

即座に真美さんのデコピンがハルさんの額を襲う(笑)

 

そして俺はハルさんに答えた。

 

「俺をいつまでも昔の俺と思わないでくれ!真美さんを使いこなせてみせるよ!」

 

「超高性能なスーパーカーを乗りこなせてみせるよ!」

 

するとハルさんが笑顔で「がんばれよ!」とエールをくれた。

 

もちろん俺にも・・・真美さんのデコピンが飛んできたのは言うまでもない(笑)

 

そして・・・

 

「人間を物扱いしないで!」って真美さんに二人揃って怒られた(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺は、無限の可能性を持つ女性(真美さん)を会社に引き込んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、ひとつハルさんと真美さんから報告があった。

 

ハルさんと葵さんの息子である”T”が空手を辞めるという。

 

そして総合格闘技を始めるらしい。

 

ハルさんは了承し応援しているという。

 

俺も、もちろん応援する。

 

この”T”は、俺の息子の憧れであり良い兄貴的な存在だ。

 

俺がハルさんを慕うように、俺の息子もTを兄のように慕っている。

 

優しく強く、精神的にも成熟し頼もしいT,S。

 

この先も、Tと俺の息子の関係は、俺とハルさんのように続いて行くのだろう・・・

 

 

 

この先・・・息子とTが、どんな未来を築いて行くのか楽しみの一つでもある。

 

 

 

T・・・総合格闘技がんばれよ!

 

そして、この先も息子の良い兄貴でいてくれ!

 

 

 

 

俺は血より濃いものがあると信じてる人間のひとりです。

 

血より濃い絆。

 

大切にしてほしいです。

 

 

 

 

こうしてハルさんと真美さんは、台風の準備があるのでと言って帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、思い返してみると・・・・

 

ハルさんと出会ってから俺は心を取り戻し、劇的に回る輪の中で過ごし、成長していった。

 

このハルさんと一緒にいることで、いろいろな経験をし、悩み苦しみ、楽しくおもしろかった!

 

こんな素敵な人生をくれたハルさんには感謝している。

 

そしてハルさんを通して出会った、葵さん、叶、真美さん、嫁、宗二さん、美香さん、トクさん・・・

 

みんな素敵な人達ばかりだった。

 

そして今の俺がある・・・・

 

もちろん辛いこともたくさんあった・・・

 

でも今、俺は幸せを感じている。

 

 

 

 

そして未来を背負う、宗二さんの息子、俺の息子、トクさんの息子と娘、ハルさんと葵さんの息子Tと娘のK・・・・

 

血より濃い絆を創り、未来を楽しく謳歌してほしい。素敵な未来を!

 

考えてるだけで楽しくなってきます。

 

「みんな進む道は違えど志は一つ!未来へ!」

 

ハルさんが、よく若い頃に言っていた言葉・・・

 

最近よく胸に響きます。