あれから・・・
少しずつだけどみんな元気になってきました。
俺も真美さんも美香さんも。
少しずつだけど笑顔でいられる時間も増えた気がする。
だけど・・・・・・11月30日、真美さんが心身からくる過労で玄関先で倒れる。
娘Kがトクさんに電話し、言葉が発せられないため無言でいるとトクさんは嫌な予感を察したという。
トクさんは仕事場から俺に電話し「すぐ真美さんの所へ行ってくれ!」と!
トクさんはこの日、仕事のため遠くにいて、すぐ戻れなかったからだ。
俺は会社で図面製作をしていた。午前10時になろうとしていた頃に電話を受け車をとばして真美さんの家に向かった。
チャイムを押すと泣きながら娘Kが玄関を開けた。
すると玄関先で倒れてる真美さんを発見!
意識がない・・・俺は青ざめた・・・そして、すぐ救急車を呼んだ。
真美さんの顔に血の気がない・・・貧血で倒れた?
救急車が到着し状況を聞かれたが、何も説明できず俺がここにいる経緯だけを伝えた。
娘Kと一緒に救急車へ乗り込み病院へ向かった。
そしてトクさんと息子Tの高校にもすぐ連絡した。
しばらくすると、トクさん、息子T、順番に病院へ到着した。
医師の話だと過労とストレスで急な貧血で倒れたということだった。
その際に頭を打っているとのこと。そして意識がない。
でも安心していいということだった。
でも入院した方がいいということで2日ほど入院することになった。
俺は少しホッとした・・・もし真美さんが・・・最悪のことが頭をよぎったからだ。
息子Tも「よかった・・・よかった・・・・」と言って涙を流していた。
夕方には美香さんも病院に到着し、俺とトクさん美香さんはベットの横で真美さんが目を覚ますのを待っていた。
息子Tは一旦家に帰った。そして夜には病院へ戻ってくる予定。
娘Kは不安定なためトクさんの家に預かることとなった。
娘Kは真美さんの側を離れるのを嫌がったが兄である息子Tが説得し、トクさんの奥さんが迎えに来てKを連れて行った。
そして息子Tが病院へ戻る少し前の7時ころ真美さんが目を差ます・・・
そしてガバッて起き上がり「ハルちゃん!」と言ってトクさんに抱きついた・・・
トクさんは優しく頭を撫でるだけで、そっと真美さんの背中に手を回した。
真美さんの頬には涙がつたっていた・・・
真美さんはハッとして、「お兄さん?ごめんなさい」と言ってトクさんから離れた。
真美さんが「ハルさんと間違えちゃった。ごめんなさい」と言うと、トクさんは笑顔で「いいよ。気にしなくて」と優しく返した。
ここ最近、真美さんは少し元気なって笑顔も取り戻しつつあった・・・
だけど、心は癒えてなんかなかった・・・・・・
ハルさんへの想いが消えることはない・・・・・・・・・・・・・・
真美さんが目を覚まし、息子Tも病院へ到着。
Tは真美さんに抱きついた。
「もう・・・・心配かけるなよ!元気でいてくれよ!」と真美さんにしがみつき泣いた。
息子Tも抑えていた感情が溢れた。
しばらくしてトクさんの奥さんと一緒に娘Kも病院へ到着。
Kも真美さんに抱きつき、ただひたすら泣いていた。
息子Tも娘Kも真美さんが倒れたことでショックを受け不安になっていた・・・
また、この二人も父親を亡くし、心は癒えてはいない。
まだ18歳と13歳・・・当然だ。
俺はこのとき、この二人のハルさんと葵さんの子供達に全力で支援することを誓った。
もちろん血を分けた自分の子供も大切だが、同じように自分の子供のように支えてやりたいと思った。
そう・・・・ハルさんが俺にしてくれたように・・・・
もうハルさんと葵さんには何も恩返しできないが、ハルさんと葵さんが安心して眠れるように・・・・
俺が支える!そう誓いを立てた。
ハルさんと葵さんは俺の両親だ!だからハルさんと葵さんの代わりに俺が支える。
そう思った瞬間だった。
しばらくして全員、帰路についた。
トクさんは娘Kを連れ、美香さんが息子Tを連れて帰った。
俺は、その後・・・・真美さんと少し話した。
「T,Sちゃん・・・・ごめんね心配かけて」
真美さんが言った。
俺は首を横に振り「しばらく何も考えなくていいから自分の体休めて」と笑顔で返した。
「真美ちゃん無理しすぎ。もう少し周りを頼っていいんだから、もう少し自分の体を大切にしないとね」
と俺が言うと真美さんが微笑んだ。
そして真美さんが涙を流しだした・・・・・・・・
「T,Sちゃん・・・・苦しいよ・・・苦しくてたまらないよ・・・・」と言って泣き出した・・・・・
あの強い真美さんが俺の前で泣き出した・・・弱々しく感情をさらけ出し泣いた。
俺は正直、こんな弱々しい真美さんを見るのが初めてで・・・動転した。
真美さんが言葉を発する・・・
「ハルちゃんがもういないことは解っているのにさ・・・・」
「もう会えないって解っているのに、会いたくて会いたくて・・・気が変になりそうなの」
「ハルちゃんが好きで好きで・・・たまらない!苦しいだけなのに・・・」
「もう会えないって解ってるのに、もういないって解ってるのに、恋心だけが膨らんでどうしようもない・・・」
「どうにかなってしまいそう・・・・」
「ねえ・・・・・どうしたらいいかな・・・・」
俺は真美さんの苦しみが痛いほど解った・・・・そして一緒に泣いてやることしかできなかった。
俺は真美さんにこう言った。
「ねぇ真美ちゃん。ハルさんは真美ちゃんの心の中に生きてるよ!」
「ハルさんずっと真美ちゃんのこと見てるはずだよ」
「そのハルさんへの想い、大切にしてあげてほしい」
「泣きじゃくる真美ちゃんを今、抱きしめてあげたいけど俺にはできない」
「話を聞いてあげることぐらいしかできないけど、いつでも聞いてあげるよ」
こんな気のきかないことぐらいしか言えなかった。
すると真美さんは微笑み「そうだね」とだけ言った。
真美さんも・・・・・癒えてなんかいなかった。
今もハルさんへの想いが溢れ、どうしようもない感情にもがき苦しんでいた。
俺はどうしたらいい?ハルさん教えてよ!?
こんなふうに思った・・・・・・
こんな素敵でカワイイ真美さんを残して、息子Tと娘Kを残して逝っちまってよかったのか?
夜の空を見上げて、ハルさんに問いかけた・・・・・・・
病院の帰り、息子Tの所に寄った。
チャイムを押しても返答がない・・・・電気の明かりは付いている・・・・
「上がるよ?」と言って玄関のドアを開け、俺は家に入った。
リビングには誰もいない。
俺は二階に上がり息子Tの部屋に向かった。
そして・・・・部屋の前から息子Tのすすり泣く声が聞こえる・・・
「父さん・・・・父さん・・・・」
息子Tの声が聞こえる・・・・
俺は部屋に入らず、家をそっと出ることにした・・・・
息子Tも、また・・・・・
心は癒えていない。
今も亡き父親であるハルさんへの想いが溢れ・・・・・苦しんでいる一人。
普段は毅然として大丈夫に見えるが、真美さんや妹を支えるため強く見せているT。
でも今も苦しんで悲しんでいる・・・
俺はなんか・・・・せつなくて・・・・たまらなくなった。
息子Tは小さい頃は泣き虫で、空手での組手の練習でも泣いてばかりいた。
今で心も体も強くなった。
でも、まだ18歳だ。
弱くて当たり前だった。
俺は勘違いをしていた。
息子Tだった必死なだけで、悲しみから癒えてなんかいない。
今度、「辛いときはいつでも相談に来い!」と言ってやると心に決めた。
息子のTの心のサポートも、しっかりしてあげなきゃと心から思った。
そうじゃないと息子Tも娘Kも真美さんも壊れてしまう・・・・・
俺は悲しんでいる場合じゃないと悟った。
俺も両親の愛情を知らない。
でも・・・そんなときハルさんが、葵さんが、その仲間が・・・俺を寂しさから解放してくれた。
息子Tと娘Kの寂しさは痛いほどよく解る!
俺は、そのどうしようもない寂しさを理解できる。
まだ十代・・・両親を亡くし不安しかないだろう・・・・
でも俺が居る!トクさんも美香さんも、そして真美さんだっている!
強く生きてほしい!
ハルさんと葵さんの血を分けた子供達だ!絶対にできる!強く生きれる!
必ず、俺たち大人達が導く!安心して恐れずに自分の道を行け!
そう心の中で応援した。
いろんなことを決意した夜だった。
真美さんが二日間の入院を経て退院し、今は家族3人落ち着いて生活している。
まだまだ大変だが・・・・
その後、トクさんや美香さんと話し、ハルさんが残した家族を支援することを3人で決めた。
ハルさんが残した家族が元気になるまで、心の傷が癒えるまで、周りの協力と支援が必要だと3人で確認した。
俺ができること・・・・・全力で協力する!
それが俺のハルさんと葵さんへの恩返しだ!
寂しさだけを残し逝ってしまったハルさん。
ほんとうに罪深い男だ。
でも大好きだったハルさんが・・・・葵さんが・・・・安心できるように
残された俺たちはやらなければいけない。
ほんとうは・・・・・
心残りだっただろう・・・・人任せになんかしたくなかったはずだろう?・・・・
そうだよね?ハルさん?・・・・・・・・
葵さんも、きっとそうだよね?・・・・
二人の意志は俺が引き継ぐよ!
頼りないかもしれないけど・・・・
全力で必死で・・・・少し重た過ぎるけど、二人の意志は俺が受け止める!
どうか俺を見守ってほしい・・・・俺がんばるからね!
そう思うと、今もハルさんと葵さんの笑顔が、俺の中で浮かぶ。
ハルさん!葵さん!そして宗二さん!
来世でもきっと会おう!必ず!