「アルトゥロ・ウイの興隆」を観ました | Blessing Wind ことほぎ

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アドバンスカラーセラピスト、シンギングボウル・サウンドアルケミスト、LIFE Balanceアドバイザー 、ことほぎです。
13の月の暦、瞑想、ヨガ、呼吸法、アーユルヴェーダ。さまざまな学びと日々の出来事を記しています。ときどきSMAP(または新しい地図)。


数日前、KAAT(神奈川芸術劇場)で草彅剛さん主演の舞台を拝見してきました。
ネタバレを含みます、これからご覧になる方はどうぞご注意くださいませ。


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言わずと知れたあのヒトラーをモデルにブレヒトが描いたものであるということ、そこに演出の白井晃さんがジェイムズ・ブラウンの曲を散りばめているらしいこと、公式HPなどで公表されたウイ役の草彅さんがとてつもなくクールでカッコいい(そして恐ろしい)こと…そのくらいしか前知識を持たず、出かけて参りました。

今回も大激戦のチケット。
S席は当たらずA席1枚をかろうじて自力で取ることができてラッキーでした…公演中に(演者さんの)インフルエンザによる休演もあったので、観られることに一層の感謝の念を抱きつつ。

私の座席はほとんど天井席(と言っても舞台までの距離はそんなに遠くないです←スマコン比)。
3階席で確か後ろから3列目だったかしら…ただ、ど真ん中だったのでほとんどストレスなく作品に集中できました。
(まさか観終わった時に「ああ、1階席じゃなくて良かった…」と胸をなでおろすだなんて思いもよらなかったけど。)

アルトゥロ・ウイというギャングのボスを演じる草彅さんの、滴る色気と凄まじいエネルギーに圧倒され魅了され、絶え間なく流れるアップテンポのソウルナンバーとダンスに撹乱され、赤と黒を基調とした衣装と舞台美術・照明に心を掴まれ、つまりは舞台上から放たれる強烈な熱量にグイグイと身体を持っていかれる感覚。

だけど、どうしてもその独裁者に同意したくない…その熱狂の渦に身を投じるのは危険だと心が叫び続ける感覚。

いい具合に笑えるシーンもあって、油断しているとあっという間に「そっち側」に引き込まれそうになる…ご機嫌なリズムに手拍子なんてしているうちに、どんどん「あっち側」の思うツボ…それを本能的に感じるから、ずっとどこかで身構えてしまって疲れました😅

私は(自分で言うのもヘンですが)本来ノリのいいタイプでして、好きなアーティストだったらコール&レスポンスは大好きですし、拍手も声援も惜しみなくするほうで、スマコンなんてもう熱狂を超えて発狂(笑)というのか発作というのか発病かもしれない?くらいのレベルでステージ上のひとたちとの同化を体感し、光り輝く粒のひとつになれる無上の喜びを知っているので…例えばもし1階席で観ていたらもっと音楽に身も心も揺らしただろうし、ウイの姿や演説にもさらに酔っただろうし、この作品を盛り上げたい!というサービス精神も手伝ってラストシーンではひょっとして手を挙げたかも…?(いや、挙げないまでも葛藤したかも)と思うのです。

(手を挙げるというのは、保身のため悪に流され洗脳されていくことのたとえです。そこに集団心理という問題も加わり、さらには自分の利益のためなら他がどうなっても構わないという人間の弱さ、醜さ、恐ろしさのことでもあります。)

(だけどこの作品において手を挙げることを「ダメ」と言っているわけじゃないんですよ、熱狂に飲まれる大衆というとても重要な役回りを果たしてくださった皆さん、どうもありがとうございます…と思っています。それでもやっぱり、嫌だ!絶対に手を挙げるもんか!と3階席で硬直していました。)

舞台上の演者さんたちが一丸となって挙手を迫り、そうしない客席に向かって発砲する演出…それを3階から俯瞰する恐ろしさ。

ぐったりしながら帰る電車の中でパンフレットを熟読し、脳裏に刻まれた草彅ウイの超絶イケてるビジュアルに悪酔いしながら、ああやっぱり白井さんスゲェ…(言葉が乱暴で失礼!)と思っておりました。

あの作品にジェイムズ・ブラウン。
そして草彅剛。

スゲェ。

それから、ブレヒト…驚いたことに彼がこの作品を書き下ろしたのは第二次世界大戦中だというのです。なんて命知らずな…!
言い換えれば、これは命がけの作品でもあるわけです…設定は変えてあるけれどナチス批判だということは明らかですからね。

いま、これを日本で演ることの意味。

舞台上に時々降りてくるスクリーンに浮かんだ時代背景の説明やヒトラーの言葉があれやこれやと重なっていく…。

「熱狂する大衆のみが、操縦可能である」

この言葉を、最後の最後にトドメとばかりにぶっ放してくる見事さ。

パンフレットの中で白井さんが、五輪に浮かれる現在の日本に触れていました。

個人的には私は五輪よりも去年の(異様に感じられた)「バンザイ」に重なってしまいました。
ここでその話題にシフトすると中途半端になりそうなので、わかる人にだけわかればいい…と書き逃げしますけどね。

そしてここ数日でまたどんどん広まっているらしいウィルスのこと…不安や恐怖というものも、一つの熱狂と捉えれば同じこと。

ヒトラーは「人々が思考しないことは、政府にとっては幸いだ」という言葉も残しているわけで。

思考せよ、と本能が叫びます。

なぜ?
ほんとうに?
どうしてそうなったのか?
何が本筋で何が虚飾なのか?

元来、直感型で熱狂を好む人間だからこそ。
(もちろん何に対しても右脳で判断しているわけではないし、誰彼構わず熱狂するのでもないけれど。)

一瞬、すごく話が逸れます。
私の中の熱狂は、SMAPをおいてほかにはないです。
彼らが揃った時の圧倒的な波動に、また全身を浸して熱狂したくてたまらず…その日を待ちわびています。
だからそのとき、もし彼らがその熱狂を利用して
YESと答えろ…とでも言ったならなんでもYESと言ってしまいそうな自分がいます。
(断じて、そんな人たちじゃないけど。)

だからこそ、熱狂は人ごとではないのです。
陶酔を知っている。
我を忘れて魔力に取り込まれる快感。

自分のそんな部分を利用されないように。


…舞台に話を戻しましょう…。

毎回思いますけど、草彅剛という役者は凄いですよ…(語彙がなくて残念)。

ウイという弱く醜悪な人物をあそこまで魅力的にみせてしまう。
枯れてはいても野太い声、リズムを取りながらフェロモンを撒き散らす細い腰、おどけたり眉根を寄せたり恐喝したり笑ったりする世にも美しい造形での豊かな百面相…ああ怖い。

カーテンコールで少しずつ少しずつ「ウイ」から「つよぽん」に戻っていく姿がまた、あーもうなんだこのひと!と何故か地団駄ふみたくなる感じ…いわゆるギャップ萌えですかね💦

バリータークに続いて共演していた松尾諭さんも良かったなぁ…あの作品での関係性がオーバーラップすると頭の中で倍音が鳴り響く感じでしたよ…キャスティングの妙…!

白井晃さん、天才だなぁ。
カーテンコール、白井さんにも出てきていただきたかったなぁ!
そういえばバリータークの時、劇場にいらしたっけ…TVでみるよりとても華奢な印象だったけど、あんな骨太な作品を練り上げるエネルギーの持ち主…これからもどうぞ、SMAPメンバーをよろしくお願いします!(何目線だ😅)

2月2日が千穐楽。

私は今回、一度だけの観劇となりましたが観る機会を得られて本当に良かったです。
全スタッフ&キャストの皆様、ありがとうございました。

他に書きたい話題がいろいろたまっていますが、とりあえず本日はこれをUPいたします。
読んでいただき、感謝です。