ハワイ往復の飛行機で読めたのが、「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著)。久しぶりにキンドルではなく本を買ったが、Kindleの癖でペンで線を引いてしまう。この本は1937年出版で、14歳の学生向けに最初は書かれたそうだが、増版を繰り返し、来年には宮崎駿が映画化して公開されると言う。

 

主人公のコペル君は、叔父さんが話すコペルニクスや物理の説にちなんだニックネーム。亡くなった父親の弟(叔父さん)との手紙のやりとりや、会話で話が進む。

 

 

 

 

 

叔父さんとのやりとりは、地動説や万有引力の話など人間が地球を含めた壮大なところに存在する意味から始まる。と言っても難しい話ではない。今の私の興味である物理のレベルに合っていて、面白い。彼は戦前の私立男子校に通い、同級生は政府や民間トップの良い家庭のお坊ちゃん達だが、ひとり豆腐屋の息子がいる(浦川くん)。それでなくても、ノロマだったり運動が苦手でいじめられがちな浦川くん。家業を手伝うため学校を休む浦川くんを、コペル君が訪ねて勉強を教えてあげる。その豆腐屋さんや行きがけの景色から、世の中の流通の仕組みに気づくコペル君。

 

浦川君とは、これがきっかけでコペル君のグループと一緒に行動するようになる。

この本はリーダー格の子が先輩に囲まれていじめられるシーンがクライマックス。この時、浦川君はリーダー格の同級生をかばい、一緒に殴られる。しかし、コペル君は怖くて出ていけない。この事件の少し前に、このリーダー格の同級生の家に行き、一緒に遊んだ際、もし先輩がいじめる事があれば結束して反抗すると誓ったのに。コペル君は自分の不甲斐なさを悔やみ熱が出て、学校を何日も休んでしまう。叔父さんに相談すると「起こってしまった事を許してもらおう等と思うな。でも思いの丈を手紙にして同級生に送るのはどうか」と提案され、手紙を書くと、翌週には同級生達が家を訪ねてくる。PTAで問題になり、先輩は処分されたと。

 

ブッククラブでは、「(今の日本で道徳の授業がないらしいが)この本が自分達の時代には読まれていなかったのは何故か?」「戦中はリベラルで出版禁止になったのは何故か?→自分で考えて行動する、というのがリベラル。そして上級生に反抗するなどは当時の締め付けに逆行する行為。贅沢な暮らしぶりも。」「戦後、80年近く増版されているのは、人間とか人生の根本の心理を突いているから」

 

(この日のブッククラブはメンローパークのLeft bankで。フレンチ風ブランチであっという間に満席)

 

 

当時のお母さんの話ぶりや展開が小津安二郎の映画を観ているようだった。宮崎駿が作成中の映画も観てみたい(変にファンタジー化されないと良いけど)。