風に煽られ、空中にいる神成達に風の刀を防ぐ手立ては無い。そのまま両断されるかと思われた、その時だった。
魔法少女福園「〔障壁魔法 クリアフルシェル〕!」
悟詩「お前……!」
巽との決着がついた魔法少女の福園が神成達の前に飛び込み、透明なバリアを展開して風の刀を受け止めた。しかし風の刀は止まることなく、徐々にバリアを浸食していく。
魔法少女福園「こっちの私も頑張ってるって分かってちょっと嬉しかった……!絶対、負けないでね!」
悟詩「……当たり前だ!」
魔法少女福園「神成先生も、負けないでね!」
史郎「……おう、向こうの俺にもよろしくな。」
バリアが砕かれる瞬間、魔法少女の福園はこちらを見て笑いかけた。そして福園達を守ってバリアと共に散っていった。周囲に吹き荒れる風が収まることには、その姿は無かった。
悟詩「やってくれたなぁ……!五十嵐ィ……!」
雷汰「まさか女のお前に庇ってもらって命拾いするとはな。 だが、〔空断刀〕は風だけじゃない。」
骸骨の武者が再び刀を振り上げる。刀を構えた瞬間、雷が落ちる。そして生み出されたのは、青白く光る巨大な刀だった。
史郎「ま、そのくらいはやってみせるよな。」
雷の刀を前にしても神成は冷静に、集中力を上げる。
史郎(上手いこと離れて自分と武者の両方がシルエットダンスの風を浴びないようにしてやがる…… どっちかを止めてもどっちかは攻撃してくるな。 なら……)
雷汰「〔空断刀・轟雷〕!」
雷の刀が振り下ろされる。ギリギリまで引きつけた神成が骸骨の武者めがけ、シルエットダンスの風を放つ。骸骨の武者の動きが止まると同時、五十嵐が仕掛けてきた。
雷汰「〔嵐中霹靂〕。」
史郎「チィィ!」
全身に雷を帯電させた五十嵐が強烈な勢いで突進を仕掛けてくる。ロングナイフを1本しか持っていない神成とパワーで劣る福園では受け止めきれないと判断したのだ。
雷汰「この一撃でどちらか片方だけでも終わらせる!」
悟詩「……なめてんじゃねぇぞ落ち武者野郎!!」
その時、福園が叫び、五十嵐の前に立つ。〔嵐中霹靂〕を真正面から受け止めるつもりだ。五十嵐は攻撃を中断することなく、福園めがけ突進してくる。
史郎「福園ォ!」
悟詩「隊長、アンタも〔俺達〕をなめないでもらいたいなぁ!」
五十嵐が追突する直前、福園の目の前に巨大な段ボールが落ちてくる。そこから飛び出したのは、ティラノサウルスの福園だった。五十嵐の突進を頭突きで受け止める。ティラノサウルスの福園は仰け反るも、五十嵐もバランスを崩す。
雷汰「ぐぅぅぅぅ……!」
悟詩「来てくれて嬉しいぜ! さぁ!次だ!」
ティラノサウルスの福園が消えると同時、再び別の段ボールが届く。同時に福園が駆け出すと、段ボールの中から鎧武者の福園が飛び出す。
武者福園「向こうも鎧か……ならば、狙い所は分かる!」
悟詩「合わせさせてもらうぜ!」
武者の福園と共に五十嵐へ飛びかかる。五十嵐もすぐに体勢を立て直し、金棒を振り回して応戦する。そこはまさに、斬撃と打撃の嵐と化す。
雷汰「負けるかぁ!」
悟詩「ここで終わりだぁ!五十嵐ィ!!」
雷汰「こんな所で引けるかぁ……!俺は……!吾妻さんの意志を継いで……裏社会のトップになるんじゃあ!!」
渾身の力を込め、五十嵐が金棒を横に振るい、福園達を薙ぎ払う。そして金棒を突き上げ、骸骨の武者同様に金棒を支柱に風の刀を作り上げる。
雷汰「〔空断刀・双頭〕!」
反対側の骸骨の武者も五十嵐の動きに呼応し、雷の刀を振り上げる。挟まれた福園と神成に危機が迫る。しかしその時、弾かれた福園が動く。
悟詩「そんなモン……振らせねぇよ!」
咄嗟に福園は、自身の得物である斧を目いっぱいに投げつけた。金棒を振り上げる五十嵐に受け止める術はない。福園の斧は、金棒を振り上げる五十嵐の肩に突き刺さる。
雷汰「うぅ!?」
しかし五十嵐は折れない。肩から血を吹き出そうとも、無理やり金棒を振ろうとする。
雷汰「死ぬまでとことんやってやる……!吾妻さぁぁん!!俺に力を……貸してくれぇぇ!!」
骸骨の武者と共に五十嵐が金棒を振り下ろそうとする。その時だった。万力の握力で握っていたはずの五十嵐の手から、金棒が離れた。五十嵐の体は既に、限界を迎えていたのだ。
雷汰「な……」
史郎「無理して動きすぎたな。これで今度こそ終わりだよ。」
気がついたときには既に、神成が五十嵐の懐に侵入していた。骸骨の武者が雷の刀を振り下ろすより先に、神成の刃が五十嵐に届いた。
史郎「もらったぁ!!」
雷汰「あ……」
神成のナイフが、五十嵐の胸から腹へと、袈裟に捉えた。