S8  98-11  止まぬ嵐 | レクイエムのブログ

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ナッシュ(あのドデカい刃、トゲを簡単に斬っちまうか。 だがな、残り2人は重傷、面で制圧する!)


辰崎が地面に触れ、トゲの波状攻撃を仕掛ける。突き出されるトゲを前に、湊達は3方向に分かれて回避する。


裕次郎「いくら広範囲にトゲを生やせるとしても、範囲は決められているはずだ。」


辰崎から距離が離れるほど巨大になっていくトゲ、その侵攻が止まった時、そこが射程距離だと湊は見抜いた。そして自身の目の前で止まったトゲを両断し、空中に飛ばす。


裕次郎「〔ホールイン・ワン〕。」


空中に浮いたトゲへスクラマサクスを振るい、打ち出す。トゲは勢いを増し、ミサイルのように辰崎へと迫る。咄嗟に体をトゲで覆った辰崎だったが、自身と同じ硬度を持つトゲが体に突き刺さる。


ナッシュ「ぐぅ!!」


燈莉「今です!」


辰崎が怯んだ隙に燈莉が弾丸を放つ。すると空中で弾丸は先ほど湊が打ち出したようなトゲに変貌する。辰崎は咄嗟にそれが幻覚だと見抜く。


ナッシュ「また幻覚か……さっき通用しねぇところを見せたばっかりだろうが!!」


飛んでくるトゲを振り払うため、腕を横に振るう。腕には弾丸を弾いたような感触が奔る。しかしそれと同時、辰崎の顔に何かが当たった。


ナッシュ「うっ!!」


燈莉「幻覚は見せることで相手を翻弄するだけではないんですよ。 〔隠したいものも隠せます〕から。」


燈莉は弾丸を放つと同時、礫も投げていたのだ。弾丸を打ち落とした辰崎だったが、後から飛んできた礫には気付かず、顔に当たる。咄嗟に目を守ろうと目を瞑ったため、隙が生まれる。


彗「そこだぁ!!」


ナッシュ「この……ッ!近付くんじゃねぇ!!」


彗を牽制するため、辰崎がウニのように全身からトゲを長く突き出す。しかし彗も戦闘の申し子だ。先ほど湊がトゲを両断したところをしっかり見ていた。


彗(トゲの先端は確かに危険だが、側面からの攻撃には弱い!)


滑り込むように辰崎に接近した彗が山鎌を振るう。彗が狙ったとおり、鋭いトゲの先端が切り落とされ、そこを足場に彗は辰崎の上に乗り、高く飛び上がる。


ナッシュ「何!?」


彗「弾丸や鎌で斬れねぇのは分かったけどよぉ、爆発ならどうだ? 〔マリンコード・ピンガ〕!」


彗から潜水艦型のグラムが現れ、辰崎へ魚雷を発射する。戒亡との闘いで使った魚雷だったが、まだ隠し球があったのだ。落下した魚雷が爆発し、辰崎は巻き込まれる。


ナッシュ「が……!」


裕次郎「今だ。畳みかけるぞ。」


爆発で辰崎が怯んだ隙に、湊達が一斉に仕掛ける。そんな3人に対し、辰崎は地面に向けて両腕を振り上げる。


ナッシュ「3人まとめて……串刺しだぁ!!」


両腕が地面に叩きつけられる。地面が盛り上がり、まるで津波のようにトゲが無数に、そして勢いよく湊達に迫る。


ナッシュ「負けるかぁ!!」


燈莉(さっきよりもトゲのスピードが上がった!)


彗「……これでようやく、丸裸になったなぁ。」


ナッシュ「!」


地面からトゲを生成したことで辰崎は元の姿に戻っている。それを見た彗が山鎌の1本を湊の方へ放る。そしてそれを見越していたかのように、湊は既にスクラマサクスを振り上げていた。


裕次郎「問題ない。このスピードなら、接近前に打ち出せる。 〔ホールイン・ワン〕。」


湊のスクラマサクスに山鎌が当たり、勢いよく飛んでいく。山鎌は勢いよく回転し、弧を描いて辰崎の元へ飛んでいく。そして山鎌は辰崎の背中を激しく切り裂く。


ナッシュ「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」


燈莉「さっきから随分と……好き放題してくれましたね。 彗ちゃんの分も、ようやく返せそうです。」


トゲ越しからでも燈莉は辰崎を狙い、銃弾を放つ。銃弾はトゲの山を跳弾しながら進んでいき、的確に辰崎の肩へ突き刺さる。弾丸が突き刺さったと同時、全身が痺れるような感覚が辰崎を襲う。


ナッシュ「が……あぁ……」


燈莉「〔麻酔弾〕です。これで大人しくなるでしょう。」


裕次郎「まずは1人、だな。」


度重なるダメージに加え、麻酔弾を食らった辰崎の体は力無く倒れる。


ナッシュ「くそっ……たれ……!」