S8  98-9  止まぬ嵐 | レクイエムのブログ

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幸浩「まずいな……!」


五十嵐を中心とした辰崎、巽が振るう猛威、その全貌が司令室のカメラに映し出される。果敢に立ち向かう福園達だが、その健闘も虚しく、全滅が見え始める。


幸浩「他の隊から援軍を要請できるか!?」


SWORD隊員「ダメです!デモンズ本部からSWORD本部までは距離があり過ぎます!中間地点の星降隊、雲雀隊は救護で動けません!」


幸浩「かくなる上は……!」


必死に闘う福園達を見て、西園寺は腰の銃に触れる。そのことを察した叶人川が視線を向けることなく止める。


真澄「HEY!まさか自分が出ようだなんて考えてないよね?」


幸浩「しかし……!」


真澄「司令塔が前線に出るなんてお粗末な組織がやることだよ。役割分担はきちんとされてるんだ。闘いが終わるまではそれを全うするべきだ。」


幸浩「……すまない。」


叶人川に説得され、西園寺は腰を下ろす。こうは言った叶人川だが、彼もまた最後の希望に託していた。


真澄(状況を打破できるとすれば……〔彼〕か。)


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悟詩「こりゃあちっとマズいな……!」


戦況が全滅に近付いていることは福園も分かっていた。全身にトゲを生やして怒りのままに暴れる辰崎、怒りにより本来の力を発揮する巽、そして目の前の五十嵐は、災害そのものだった。


雷汰「余所見とは随分余裕だな、福園 悟詩!」


周囲の状況に目をやった福園を余裕と捉えたのか、五十嵐が迫ってくる。それに対し福園は毅然として返す。


悟詩「あぁ余裕だよ。〔俺〕が見てるからな!」


自身の射程圏内に福園が入るまであと1歩と迫ったその時、突如五十嵐が立っていた地面が音を立てて崩れ落ちた。その瓦礫に足を取られ、五十嵐の動きが止まる。


雷汰「何!?」


???「〔地盤変化魔法アースクエイク〕!これ以上悪いことはさせないんだから!」


空中を見上げると、スカート姿の少女のような福園の姿があった。


雷汰「また妙なヤツを召喚しやがって……!」


悟詩「湊!まだいけるよな!!」


裕次郎「無論だ……!」


五十嵐の動きが止まった隙に福園が湊の元へ駆け出す。それを見た五十嵐が崩れた地面から脱出しようとする。


雷汰(連携技か!させるか!!)


魔法少女福園「させないよ!〔氷結魔法アイスブロック〕!!」


魔法少女の福園が杖を振るうと、五十嵐を瞬く間に氷が覆い、その動きを阻止する。その隙に、構えていた湊のスクラマサクスの側面に福園が乗る。


悟詩「思いっきり振れぇ!!」


裕次郎「〔ホールイン・ワン〕!!」


湊が力強くスクラマサクスを振り、福園を飛ばす。斧を構えた福園が勢いよく飛んでくると同時、五十嵐を覆っていた氷が砕ける。


悟詩「一撃で決めてやらぁ!!」


雷汰「その根性、大したもんだ福園 悟詩!だがなぁ!!そんなんで俺の首をやれるかぁ!!」


砲弾のように飛んできた福園に対し、五十嵐はなんと片腕を突き出してきたのだ。そして五十嵐と福園がぶつかったその時、肉が爆ぜる音が聞こえてきた。福園の斧は五十嵐の肩に深々と刺さっていた。しかし福園の頭部は、五十嵐の大きな腕に掴まれていた。


悟詩「が……あぁ……!」


雷汰「ようやく捕まえたぞ……!」


悟詩「だが……!テメェの腕1本潰したぞ……!これでバカでかい金棒を振り回せねぇなぁ……!」


雷汰「それがどうした……?死んだらそこまでなんだ……! なら、死ぬまでとことんやるまでだぁ……!!」


吾妻の考えを継いだ五十嵐のリミッターは既に外されていた。福園を助け出そうと、湊と魔法少女の福園が迫ってくる。そんな2人に対し、五十嵐が行ったのは、何も無い空間で金棒を振り回すだけだった。


裕次郎(牽制?何か仕掛けてくるか?)


魔法少女福園「待ってて!今助けるから!」


悟詩「何だこの風の感じ……まさか!?」


五十嵐が金棒を振るう度に周囲に吹く風が勢いを増していく。そして五十嵐の金棒がより早く回転し始めたと同時、なんと五十嵐を中心に巨大な竜巻が生まれたのだ。


裕次郎「何だ!?引き込まれる……!」


魔法少女福園「きゃあ!!」


巨大な竜巻に引き寄せられ、湊と魔法少女の福園の体が飛ぶ。そして掴まれていた福園も空中へ放り投げられる。


雷汰「3人まとめて吹き飛ばしてやるよ。」


悟詩「ヤベェ……!」


強風に煽られて3人は体の自由が利かない。そんな3人を待ち構えるように立つ五十嵐の金棒が帯電し、青白く光り出す。そして片手でも振り上げられた金棒に、強い殺気が籠もる。


悟詩(今度こそアレ食らったら……!3人まとめて終わりだ……!)


金棒を持つ五十嵐の腕が隆起する。そして3人がちょうど目の前に飛んできたタイミングで、五十嵐が金棒を振るう。


悟詩「ぐうぅぅぅ!!」


せめてもの抵抗のため福園は腕を前で交差する。それでも迫ってくる眼前の死に覚悟を決めた、その時だった。


雷汰「!?」


金棒が振るわれることはなかった、五十嵐が金棒を振りかぶった姿勢のまま動きを止めていたのだ。そのまま福園達の体は風で飛ばされ、竜巻から解放される。


裕次郎「攻撃を中断した……?」


悟詩「いや、あれは……!」


五十嵐も、自分の体が動かないことに理解が追いついていないようだった。そんな五十嵐へ、背後から声がかけられる。


雷汰「体が……動かん……!何故だ……!」


???「俺が増援部隊を片付けてる間に随分荒らしてくれたみたいだなぁ、デモンズ。」


悟詩「……遅ぇっすよ。もっと早く来てくださいよ。」


口では悪態をつきながらも、福園の口角は上がっていた。そこには最強戦力ともいえる、1人の男が立っていた。


史郎「ここからはお前らの思い通りにはいかねぇぞ。 全員ここで終わりだ。」