燈冶「クッ……!」
戒亡の放った炎を躱してすぐさま、燈冶が反撃に出る。マグマから握り鉄砲を生成し、戒亡に向ける。一方の戒亡はトゲの中にいながらも、自身の周囲に火球を無数に作り出す。
戒亡「1発だけで対抗するつもりか!? 〔百日葬〕!!」
燈冶「!」
握り鉄砲を放ってすぐに、 燈冶は回転して爆発する火球を回避する。一方の燈冶の放った弾は、炎と化した戒亡の体をすり抜ける。
燈冶「カウンター失敗だなぁ。 !」
自身に向けられた視線に気付いた戒亡が横を向くと、葵の放った水の弾丸が迫る。その大きさから、戒亡はすぐさまそれが牽制の1発でないことを悟る。
理央人「〔ランチャー〕。」
葵の放った水の弾丸が大きく破裂する。しかしそれは戒亡に当たることなく、更に地面から突き出した巨大なトゲによって防がれてしまった。
理央人(防がれた!)
ナッシュ「おいおい!いい大人が寄って集ってボーイをいじめてんなよ!」
その時、回り込むように駆けてきた辰崎が襲いかかってきた。手には金属でできた特殊警棒が握られている。それを振り上げると同時、棒状の警棒の先端が尖り、表面からは更にトゲが生える。
ナッシュ「ちょっと相手させてもらうわ!」
理央人「うっ!」
辰崎が振り回す警棒を葵が回避すると同時、死角から彗が飛びかかってくる。しかしそれさえも、辰崎は反応して振り向きざまに彗の南蛮鎌に警棒をぶつけ、火花を起こす。
ナッシュ「おっと!それは見えてるぜ!」
彗「いきなりやって来て面白ぇことしてくれんなぁ……!まずはテメェの腕から飛ばしてやるよ!」
ナッシュ「ソイツは勘弁だなぁ!仲間とバスケできなくなるだろ!」
彗と辰崎が火花を散らしてぶつかる中、葵は冷静に状況を分析する。先ほどまで戒亡を上手く牽制できていたものの、辰崎の乱入によって覆されてしまった。
理央人(彼も戒亡と同じ広範囲攻撃持ち……そして炎となった体ならトゲの中でも何の問題も無く活動できる上、近距離攻撃は潰される…… 何より、遠距離攻撃もトゲを盾にされてしまえば防がれる……)
葵の読み通り、近距離から詰める手筈だった燈冶もその攻撃が潰され、黎花と共にトゲの外から戒亡を攻撃しているといった状態だった。そんな状況を見た葵が指先に水を溜める。
理央人「だったら……剔るつもりで撃つだけだ!黎花さん!」
戒亡「!」
黎花「!」
黎花の名を叫ぶと同時、葵の指先から勢いよく水が撃ち出される。凝縮され、回転まで加わった水の弾丸はまるでレーザービームのように伸び、トゲを破壊しながら戒亡に迫る。そんな水の弾丸を、戒亡は素早く避ける。
戒亡「ゴリ押しかぁ!」
理央人「ゴリ押し?見通しが甘いよ。 〔ショット〕。」
躱したはずの水が破裂し、周囲に飛び散る。水滴は戒亡の体に触れた途端たちまち蒸発するも、周囲を水浸しにする。その中に黎花が氷の矢を放つ。
黎花「捕らえるわ。」
戒亡「チッ!鬱陶しいなぁ!」
氷の矢が着弾すれば一気に氷が広がり、炎の体の戒亡は一溜まりもない。実体に戻ればトゲに体を貫かれる。確実に戒亡を捕獲したと思われた、その時だった。なんと戒亡は炎の体のまま、空中に飛び上がったのだ。
燈冶「逃げた!」
黎花「空中に飛び出すなんて何を考えてるの?格好の的よ。」
当然黎花はそんな戒亡を狙い撃とうとする。戒亡を追って上に目線を送ったその時、誰もが目を見開く。
戒亡「えーと……こうだっけ?」
理央人「なっ……!」
戒亡が飛び上がった空中、そこから遥か上に、4体に分裂したビカミングアッシュがこちらを見下ろしていたのだ。ビカミングアッシュ達が一斉に口を開き、口に火炎を貯める。
ナッシュ「えっ!?ちょっと……戒亡ボーイ!?俺も巻き込むつもりかよ!?」
戒亡「黎花、お前の技真似させてもらうわ。 そうだな……〔金燃苦逝〕。」
戒亡が地上に向かって指を向けた瞬間、ビカミングアッシュの口から一斉に火炎放射が放たれ、地上を深紅の業火が覆った。