人気のない雑居ビルの一室が突然蹴破られる。夜闇に紛れ、数人の人影がある部屋に1人の男が堂々と侵入してくる。
猛虎「お邪魔します~」
「何だ貴様!?いきなり入ってきて……!」
人影の1人が声を上げる。しかしその時、男の眉間を銃弾が貫く。いつ抜いたかも気づかない程の速射を柴が見せた。
猛虎「そこは『邪魔するなら帰ってぇ』って返さんかい。お笑いも理解できひんの君ら?」
「コイツ……!柴 猛虎か!」
「構わん!容赦なく撃ち殺……」
人影達の迎撃の準備が整う前に、柴が正確な銃撃で次々と命を奪っていく。
猛虎「君ら遅すぎや。大阪に帰ってたこ焼き買ってこれるわ。」
それは一瞬の殺戮劇だった。部屋の中にいた人影を柴は瞬く間に皆殺しにした。外の雲が晴れ、月明かりが差し込む部屋の中には、血溜まりに沈むスーツ姿の者達が横たわっていた。
猛虎「コイツら……FBIか。盟神先生も国際警察に狙われるなんて大変やな。ただでさえSWORDとのケンカでてんやわんややってのに。」
柴によって殺されたのは、盟神をマークしていたFBIの捜査官だった。いち早く彼らの監視に気づいた盟神が剣崎を介し、柴に抹殺依頼を出していた。仕事完了の連絡をするため、スマホを開くと、剣崎からのメッセージが入っていた。
猛虎「お、なになに…… おっしゃあ!ボクもケンカに加わってええって許可降りたで!これでちっとは楽しめるやろ!」
血溜まりの中を、柴は小躍りするように跳ねていく。この男の本格参戦、それは未来、SWORDに地獄をもたらすことになる。
─夜が明けて SWORD 猿子隊本部─
アンナ「ハァ!」
猿子隊の訓練場では木刀を手に、一条が三蔵に挑んでいた。木刀同士がぶつかる度に甲高い音が鳴る。一条の素早い身のこなしと振りに、三蔵はついていくのがやっとのように見える。
玄匠「!」
自身の首を守るように縦にした木刀に、一条の木刀が当たる。特別甲高い音が響き、2人は手を止める。
玄匠「スピードも上がったが、太刀筋に迷いがなくなった。いい動きだ。」
アンナ「ありがとうございます……!」
玄匠「だが、目線や息遣いでタイミングや太刀筋が大方読めちまうな。そこはまだまだだな。」
アンナ「はい!」
玄匠(とはいえ、それだけ見て何とかギリギリ防いでたけどな。能力発動したら見えてる間に並大抵の相手なら斬っちまうな。)
一条が張り切って稽古をする傍ら、風島は猪原と組み手に取り組んでいた。猪原の女性離れした体躯に圧倒され、風島にあっという間にのされ、座り込まれていた。
剛「あ、あの……ギブ……!ギブっす……!」
八戒「聞こえないね。もっとデカい声で言いな!」
秀悟「その辺にしとけ八戒。ソイツ潰れちまうぞ。」
佐古の静止が入り、風島が解放される。
剛「ハァッ、ハァッ……!」
八戒「まったく……情けないね。 同じ隊のお嬢ちゃんはもう一本始めたよ。」
猪原の言うとおり、一条は再び三蔵との稽古を再開していた。
秀悟「あのお嬢ちゃん、結構張り切ってんじゃねぇか。ちと力みすぎてる気がするけどな。」
剛「……アイツ、少し張り切りすぎてるんですよ。 同期が1人、足潰されてますから。」
先日、雅楽代が五十嵐と交戦し、片足を失いながらも五十嵐を追い返すことができた。そのことはたちまちSWORD全体に広がった。話を聞いた一条はいつもに増して、訓練に励むようになった。
剛「これ以上、知ってるヤツが傷付くのが嫌なんですよ、アイツは。」
八戒「抱え込みすぎな気もするけどね。 ホラ!アンタも早く立つ!あの子に遅れを取っちゃダメだよ!」
剛「いやグラム能力無しでアンタにどう勝てと!?」
秀悟「それも自分で考えるんだよ。相手に倒し方聞いてどうする?」
再び訓練が始まろうとしたその時、1人の隊員が慌てて駆け込んできた。
SWORD隊員「すみません!至急応援に来てくれる人、いますか!?」
秀悟「おーどうした?」
SWORD隊員「猿子隊管轄のスポーツジムで、暴漢が1人暴れてるとのことで……!ジムから通報が入りました!」
八戒「で、それでどうして応援が必要なんだい?」
SWORD隊員「相手がガスバーナーに火炎瓶も持っていて……迂闊に近寄れないんです! それに……ドラッグ中毒者のようで……!」
玄匠「普段から無痛者相手でも動きを抑える訓練やってるだろ。 まったく……佐古、猪原。応援に行ってやってくれ。」
八戒「了解。 せっかくだからアンタもついてきな。」
猪原は軽々と風島を掴み挙げると、佐古と共に現場へ向かおうとする。
剛「え!?俺も!?」
アンナ「はい!私も行きます!」
一条も挙手をし、佐古達と共に現場へ向かうこととなった。