S8  88-3  復讐の武者 | レクイエムのブログ

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コークとサイダーから五十嵐の凶行を知った雅楽代が島永に報告すると、島永の判断は早かった。すぐさま診断待ちの患者を別の病棟へ案内し、第1病棟1階部分を完全に閉鎖した。


椒「すげぇ……病院なのに要塞みたいなんだぞ……」


狛璃「ここはSWORDの関連施設ということで襲撃も想定して避難プログラムや防衛システムが組まれています。」


島永が話していると、外からバイクの音が聞こえてきた。ヘルメットを脱いで病院内に入ってきたのは雲雀だった。


麗桜那「島永副隊長、報告は聞きました。現在雲雀隊で動けるだけの人員をこちらに向かわせています。」


狛璃「島永副隊長、感謝致します。」


麗桜那「それと……あなた方は星降隊の隊員ですね?突然のことで申し訳ありませんが、こちらの防衛を手伝っていただけますか?」


真鈴「はい!もちろんです!」


朝陽「妹の命が狙われてるんです。俺も黙って見てるわけにはいきません。」


麗桜那「とても頼もしいです。 そして、あなた方が話にあったデモンズ構成員ですね?」


雲雀は確認を取るようにコークとサイダーを見る。隊長が目の前にいることで2人は緊張するも、頷いて返事する。


麗桜那「あなた方の処遇は後ほど判断させていただきます。 場合によっては、情状酌量の余地も……」


その時だった。雲雀の連絡用デバイスから声が聞こえてくる。巡回中の隊員からだった。


SWORD隊員『雲雀隊長!ただ今病院前の通りで五十嵐を……ッ!』


朝陽「五十嵐!?」


麗桜那「五十嵐……!もうここまで……! 無理に交戦をしないでください。牽制しながら病院まで下がってください。」


SWORD隊員『あの男ヤバいです!こちらの攻撃を全く……!きゃあっ!!』


悲鳴と共に通信が終了してしまった。


麗桜那「もしもし!聞こえますか!? 状況の報告を!」


椒「……!」


その時だった。花がただならぬ気配を察知した。窓が強風に煽られるようにガタガタと揺れ出す。そして次の瞬間、正面の自動ドアが蹴破られ、強風が吹き込んできた。


麗桜那「こちらの戦力が揃う前に……!」


朝陽「アイツが……!五十嵐……!!」


強風のなか、床を踏みつける足音が聞こえてくる。五十嵐だ。片方の腕には自身の得物である金棒、そしてもう片方には先ほどの通りで調達したであろう、道路標識が握られていた。五十嵐の顔には冷たい怒りが貼り付いていた。


雷汰「雲雀 麗桜那……コークとサイダーがたれ込みやがったか。それにしたって動きが早いな。」


コーク「ヒッ……!」


サイダー「コイツ……マジでヤバい……!」


真鈴「うあ……!」


五十嵐から発せられる圧を前に、その場にいるほとんどが気圧されそうになるなか、雲雀だけは怯むことなく、五十嵐を見据えていた。


雷汰「SWORDはやってることが分かんねぇな。ウチを壊滅させたと思ったら、今度は裏切り者を守ってやがる。 矛盾してると思わねぇのか?」


麗桜那「いいえまったく。 それよりも五十嵐 雷汰、吾妻派という巨大な派閥を失った今、どうして今になって裏切り者に固執するのですか?」


雷汰「吾妻派もデモンズもまだ終わってねぇんだよ……!こっからいくらでも再建してやるよ……! テメェらSWORDは必ず潰すとして……まずは裏切ったヤツら全員を粛清して威厳を取り戻す!」


そう叫ぶと五十嵐は雲雀めがけて突進を仕掛けてきた。金棒を標識を同時に振り上げ、叩きつけてくる。雲雀はなんとか回避するも、 床が大きく凹む。


麗桜那「話では聞いていましたが、本当に凄まじいパワーですね。」


雷汰「今は退いてろ雲雀 麗桜那!俺の狙いは萩原だぁ!」

 

そのまま跳ね上げるように五十嵐が2つの得物を振り上げようとするも、突如標識を握っていた手が滑り、標識が手から離れる。標識を握っていた五十嵐の手がなにやら濡れていた。


狛璃「ここは多くの方が療養される病院です。そんな場所でどうしても狼藉を働くというのなら、あなたも〔治療〕しますよ?」


雷汰「退く気はねえってことだなぁ!なら雲雀隊も潰して!裏切り者共もまとめて始末してやる!」


五十嵐が叫ぶと同時、周囲をスズメ面のグラムが囲う。


朝陽「宵に手出しなんかさせるかよ!」


麗桜那(烈火から聞いた話によれば、五十嵐のグラムは時間経過で強化される……!なら、 強化される前に叩く!)


五十嵐の体に風雷鎧武が纏われる前に決着をつけようと雲雀も前に出る。その時、五十嵐は金棒を地面に着け、風雷鎧武を纏おうとする。


雷汰「ちょうどいい……!〔今の力〕がどこまで通用するか、試してやる!」


朝陽「!?」

 

五十嵐の体に甲冑が現れた、その時だった。まるで五十嵐を中心に巨大な台風が現れたかのように周囲を強風が襲う。強風に巻き込まれた雲雀達は容易く吹き飛ばされてしまう。


椒「わぁっ!」


麗桜那「くっ……!」


風がある程度落ち着くも、依然病院内には激しく風が渦巻いている。そして現れた五十嵐の姿に、雲雀は目を丸くする。


麗桜那「その姿は……!」


雷汰「猿子 烈火から情報は聞いてたんだろうが、無駄だな。 吾妻さんを失ってから、俺のグラムは〔変わった〕。」


なんと、甲冑の所々が欠けてはいるものの、五十嵐の全身に風雷鎧武が纏われていたのだ。朽ち果ててもなお動き続けるその姿はまるで、 妄執に駆られる落ち武者のようだった。


雷汰「〔風雷鎧武・骸〕。 さぁ、徹底的にやろうか。」