デモンズの動きが全く見られなくなってからしばらく経った頃、各地でとある事件が頻発するようになった。
双牙「ここも……ですか。」
通報を受けて駆けつけてきた岳と一条の目の前には凄惨な光景が広がっていた。現場は貸しビルの一室、長らく使われていなかったその部屋中に血痕がこびりついていた。
アンナ「酷い……」
双牙「ここに利用していたのは?」
警官「目撃情報から割り出すに、ここを使っていたのは半グレ組織〔イエローアーカイブ〕です。聞き覚えは?」
双牙「はい。知ってますよ。 ……また、〔デモンズ〕の傘下組織だった組織ですね。」
ここを利用していた組織はデモンズの傘下にあった。ここ最近、デモンズの傘下にあった組織が次々と襲撃を受け、壊滅させられる事件が多発している。現場はいつも凄惨な現場となり、同一人物による犯行だと考えられる。
警官「床や壁についた痕を見てください。大きく凹んでいるでしょう?凶器はおそらく鈍器かと思われます。」
双牙「随分と高い位置についていますね。この凹み具合を見るに、相当重量のあるものを人の身長ほどに振り上げて殴ったと見える。」
アンナ「岳さん!これ見てください!」
一緒に現場を見ていた一条があることに気づく。床に広がる血痕、その下の床に一条は注目していた。よく見ると血痕が広がる床に焦げ痕があった。
アンナ「血で隠れちゃってますけど、これ焦げ痕ですよね?」
双牙「確かに。ですが焦げ痕はこの一箇所だけ。付き方も妙だ。 まるでここだけに〔雷〕が落ちたようだ。」
アンナ「そうなると、まさか犯人は……」
巨大な鈍器を軽々と振り回し、雷を操る。一条と岳は誰が一連の襲撃事件の犯人なのか辿り着いた。
双牙「どうやら、吾妻の影はまだ我々に纏わり付いているようですね。」
─場所が変わり 五十鈴病院─
真鈴「お、終わったみたい。」
待合室で待つ汐凪と花の元へ雅楽代が戻ってきた。2人は雅楽代の付き添いとして五十鈴病院を訪れていた。
椒「どうだった朝陽?妹と話せたか?」
朝陽「……いや、全然だ。」
雅楽代が五十鈴病院を訪れていた理由、それは自身の妹である宵と話すためだった。全身のケガに加え黒泥を使用したことによる副作用の治療のため今は五十鈴病院にいるものの、あと少しで回復次第、宵はコキュートスへ送還されることになる。それまでに雅楽代は妹と話しておきたいのだ。
朝陽「あの夜は一度心開いたと思ったんだけどな……今は……」
真鈴「まぁ無理も無いか。宵ちゃんにとって大切な人が死んでるんだもん。」
宵が再び心を閉ざした理由、それは吾妻の死だった。吾妻の死が伝えられたとき、取り乱しはしなかったものの、宵は硬くその口を閉ざしてしまった。 病院関係者はもちろん、SWORD隊員に対してはより一層その心を閉ざしてしまった。
朝陽「話しかけても何も答えてくれなくてさ……」
椒「うーん……宵の好きなもの持ってくとかじゃダメか?」
朝陽「初めのうちは持っていってみたけど、未だに口つけてくれないんだよ。」
雅楽代は深く待合室の椅子に腰を落とす。するとふと雅楽代はあることを2人に聞いてきた。
朝陽「なぁ、お前達はさ、吾妻のこと、許せるか?」
真鈴「え?どうしたのいきなり?」
椒「許せるわけないんだぞ!アイツは貢を殺したんだぞ!」
真鈴「ま……私も。ちょっと許すってのはできないかな。」
仲間だった本多は吾妻と交戦し、その命を落とした。同期の雅楽代達はもちろん、星降隊の誰もが吾妻を許せないだろう。
朝陽「だよな。その点については俺も同じだ。 貢を殺した吾妻を許すことはできない。だけど、あの人が宵の面倒を見てくれてたんだよな。」
真鈴「あ……」
デモンズの末端に誘拐され、辱められた宵を助け、面倒を見ていたのも吾妻だった。もし吾妻が手を伸ばさなければ宵も最悪の結末を迎えていたかもしれない。そう考えると、雅楽代は吾妻を憎みきれなかった。
朝陽「貢を殺したのは許せない、だけど宵の面倒を見ていた。そう考えると、吾妻を失った宵にどう接していいか分からなくてな……」
椒「朝陽……」