「ぐあぁぁぁ!!」
烈火「粗方片付いてきたなぁ!」
猿子と星降の無双により、デモンズのほとんどが倒されていき、数えられるほどの数にまで減った。2人が本部へ応援に行くことも視野に入れ始めたその時、1人の男が飛び出してきた。
???「お手並み拝見、といこうか。」
烈火「!」
男の接近に気づいた猿子がガードのために棍を上げると、男の持つダガーナイフとぶつかる。
烈火「へぇ、結構速ぇヤツいるじゃねぇか。」
???「今のが速い、か。あまり期待値は高くないな。」
男は1度猿子から距離を取る。すると男は左手を自身の背後に隠すような姿勢を取る。その間にも他のデモンズが襲いかかってくる。
ミチル「おりゃー!」
「ゴホォ!?」
烈火「残りはアイツだけか!」
2人は残った1人の男も他のデモンズ同様に無力化しようとした。しかしその時、男が前に出した左手から、何かが物凄い速さで撃ち出された。
ミチル「うわっ!?」
それに何とか反応し、首を傾けた星降だったが、こめかみ辺りに赤い線が奔る。銃かと思われたが銃声も無く、男の左手には武器らしきものは持たれてなかった。
ミチル「今のって……」
烈火「なかなか面白いことしてくれんなぁ!〔如意棒〕!」
棍の先端から雲が放たれ、男の目の前で雷雲へと変わる。しかし雷が迸るより速く、男は高速のバックステップで後ろへ下がる。
烈火「何!?」
???「なかなかに良い技だ。 私ももう少しだけ〔流す〕とするか。」
すると男は自身の左手にダガーナイフを当て、なんと自らの手で腕を斬ったのだ。男の予想外の行動に、2人は驚愕する。
烈火「アイツ、いったい何してんだ?」
ミチル「そういう趣味の人……いや……!」
その時星降が注目したのは、男の左手だった。腕につけた傷は大きいが、男の左手人差し指にも僅かながら切り傷があり、赤い血が滲んでいた。それが何を意味しているのか考えを巡らせていた、その時だった。
???「〔赤き月夜の行進曲ルナ・マーチ〕。」
男の左手の傷から、なんと血が噴き出したのだ。噴き出した血は無数の三日月型の刃となり、猿子達へ襲いかかる。
烈火「血を武器にしやがった!!」
ミチル「それも全く隙間がない……!」
???「隊長なのだろう?これくらいで果ててくれるなよ? まだまだ彩り足りない。」
刃と化した血が雨のように猿子達へ降り注ぐ。得物を持たない星降は刃の範囲内から逃れるも、猿子は正面から刃を受け止める。棍で弾いていくものの、その勢いは凄まじく、猿子も押され始める。
烈火「チィッ!こんなヤツが紛れてやがったとは……!」
???「……フン。」
猿子が血の刃に押されている最中、男は左手を翳し、再び猿子めがけ何かを撃ち出してきた。それを見ていた星降は声を上げる。
ミチル「猿子君!左目!!」
烈火「!」
星降の言ったとおり、刃の雨をすり抜けて迫るそれは、猿子の左目の目の前まで迫ってきていた。反応した猿子が顔を逸らすも、それは猿子の額を斬りつけ、後方へと飛んでいく。
烈火「〔指弾〕かぁ……!なかなか粋なことしてくれんじゃねぇかよ……!」
男が飛ばしていたのは指弾だった。男は左手人差し指から流れる血を使い、小型の刃を形成すると親指で弾いて飛ばしていたのだ。しかしそれよりも、刃の雨を掻い潜って的確に急所を狙ってくる男の正確さに、2人は驚いていた。
ミチル「こんな人がいたなんて……!吾妻派の幹部なの?」
???「吾妻派?私はそんな連中に組したつもりはない。 私はただ指示を受けてここに来てるだけだ。」
烈火「テメェほどの実力者がどうして今まで名前が上がってこなかったのかが分からねぇな。」
???「当然だ。私は表立って活動するなんてことはしないからな。」
烈火「お前……何者だ?」
猿子から問いに、髪にウェーブがかかり、所々に赤色のメッシュを入れた男は笑みを浮かべながら答える。
???「私の名は〔三途 充遙〕、デモンズで最も……美しい男だ。」