S8  79-7  上げれぬ悲鳴 | レクイエムのブログ

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──病院は突然の火事によりほぼ全焼、中に取り残された病院関係者や患者は、誰1人として助からなかった。


──俺は……響の骨さえも拾うことができなかった。全部、焼けちまったから。


ニュース『病院を放火したとして、20代の男が逮捕されました。 取り調べに対し……』


叫平「……なぁ、俺らってどうしてこんなに金貯めてんだろうな?」


『えっ…… 贅沢するため、ですかね……?』


──響が死んでから、アイツに使ってた金は使い道を失った。ただただ貯まっていく金を前にしても、何の感情も湧かなかった。


──ただ1つだけ、俺には引っかかるものがあった。


叫平「……コイツ、本当に放火したのか?」


──ニュース番組で度々報道されるやつれた顔の男、裁判にかけられれば間違いなく極刑だろう。だが、俺にはソイツが犯人だとは思えなかった。とても計画的に犯行を組めるヤツには見えなかった。


叫平「有り余った金、ここに使ってみるか……」


──俺は無駄に貯まった金を使って裏社会に情報を募った。本当に報道されているヤツが犯人ならそれでもいいと思った。だが、俺の読みは残念ながら当たってたんだ。


情報屋『あぁ、あの放火の犯人か。 アイツはただの身代わりだよ。』


叫平「……やっぱりそうか。」


情報屋『本当に病院を放火したのは竹中ってヤツさ。 ヤツは極端な優生思想の持ち主でね。病気や疾患を持つ人間はこの日本にいらないんだと。 精神科もやっていたあの病院を〔浄化〕と称して燃やしたのさ。』


叫平「そんなヤツが何で捕まらねぇ?あんな派手にやったんだから、手がかりくらい掴めるだろ。」


情報屋『それが……竹中は警察官僚の息子なんだよ。』


──話はたいてい想像がついたものだった。竹中の親は自身の保身、そして出世のために息子が行った数々の事件を隠蔽してきたんだと。特段そのことに怒りを感じることはなかった。


──だけど、情報屋と別れた後、俺の中に1つの感情が芽生えていた。


『明日の社会科見学、楽しみだね!』

『うん!ボク、将来は消防士さんになる!』

『街のトラブルは決して見過ごさない!ベテラン刑事に密着!完全密着警察25時は今夜放送!』


叫平「……誰1人として、ヒーローなんていやしねぇじゃねぇか。」


──目の前で燃え盛る火を前にダラダラと消火活動してた消防隊、自分の保身のために事件を揉み消した警察、この世界でヒーローだの正義の味方だのと讃えられる連中の正体は、偽者ばかりなのだと。


叫平「こんなヤツらに頼ってられるかよ。 響の仇は、俺が取る。」


──俺は単身、竹中が率いる極左団体に乗り込んだ。驚くほどにヤツらを始末するのは簡単だった。これまでケンカしてきたヤツらの中ではっきり言ってドベだった。悲鳴を聞かせるだけでバタバタ倒れていきやがる。


竹中『お前は今の日本が焼け野原であるとは思わんのか!?この国を変えたいと……!』


叫平「うるせぇよ。死ね。」


──ノックノック・スクリームでアイツの首をゆっくり噛みちぎってやった。こんな殺し方したのは、後にも先にも、この時だけだった。こうしてヤツらのアジトでボーッとしていた所に、アイツが現れた。


雷汰『おいおい……どうなってんだこりゃあ。 これ全部、お前がやったのか?』


叫平「誰だ?お前。」


──どうやらデモンズの方でも竹中のことは追っていたそうだ。そのまま俺は五十嵐に連れられ、吾妻さんに会うことになった。どうやらこの組織は、たった1人の王を生み出すつもりのようだ。


千狛瑠『音本 叫平、お前のことは調べさせてもらったわ。 組織ごと私の下につきなさい。そうすればお前のやりたいこと、全て叶えてやるわ。』


叫平「……それならよ、警察も、国家権力も、俺らに太刀打ちできなくなるのか?」


千狛瑠『えぇ、いずれそうなる。 私は裏も表も、全て牛耳るつもりよ。』


叫平「……なら悪い話じゃねぇな。」


──俺は吾妻さんの下につくことにした。何人も俺の組織から兵隊にされたが関係ない。世間のヒーロー気取りのバカ共に痛い目遭わせるようならそれでもいい。


──あの日、響を助けられなかった偽者共を、俺は絶対に許さない。