先週はヘルマン・ヘッセの
「デーミアン」共読会。
先週の箇所では
聖書史の授業のシーンがあって、
カインとアベルという兄弟のお話しについて
主人公シンクレアとデーミアンが語る。
カインとアベルというのは、
ご存知最初の人類である
アダムとイブの二人の子で
上の息子がカイン、下の息子がアベルだ。
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二人はそれぞれ神様に
自分の作物を捧げるのだけれど
カインは野菜を、アベルは羊を捧げる。
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神様はずっとアベルの捧げものを
喜ばれて受け取るので
カインは腹を立てて、
アベルを殺してしまう。
聖書に出てくる最初の殺人である。
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神様はアベルがいないことに気づき
カインを問いただし、
カインはその地から呪われ追放される。
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その時にカインは、
誰でも私を見たら私を殺すに違いない
その罰は追いきれないと嘆く。
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神様はカインに
彼を殺すものは七倍の復讐を受けると告げて
カインに一つの印をつける。
その後カインは東の方に旅して行きました。
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~~閑話休題
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このお話しには
不思議な所がいくつもある。
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最大の謎は、
神様に愛されたアベルが殺され
殺人者カインが死を免れる印をもらう
ところだろう。
キリスト教的には、
捧げものの種類ではなくて
その時の精神が大事だったのだと
言われているけれども。
(この辺がお父さんとの会話のあたり)
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その後に制定された十戒では
殺人は禁止されて、
目には目を方式で、命には命なのだけど
ユダヤ人の都市にはアジール(避難所)の
街があって、
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殺人者もそこに逃げ込めば
殺された者の親戚の復讐から守られた。
この辺りの習慣にカインの印は繋がって
いくのだろう。
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だけどもう一つ僕が思い出すのは
ユダヤ人が「イスラエル人」と呼ばれる
元となったヤコブとそのお兄さんエサウの
話しだ。
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ヤコブは「ヤコブの梯子」で有名な
天から降りてきた神様の使いと
それと知らずに格闘して一晩負けず
「イシャラー(勝つ者)」「エル(神)」
という名を与えられる。
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そのヤコブの兄弟の長男が
エサウなのだが
お母さんに可愛がられていた末っ子のヤコブが
策によって財産を受け継ぐ権利を得てしまう。
(お母さんの名前はリベカという)
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これに似た話は多分世界中にあるけど
国名に冠しているのは中々大規模だ。
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それでまた思い出すのが、
日本の古事記、天孫降臨神話だ。
国を治めるのが何故【孫】なのか。
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梅原猛は、時の権力者である持統天皇が
自身の子であった草壁の皇子が早死にして
孫の文武帝に継がせる必要があったことと
関連づけている。
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つまり、権力の集積とその維持の争いがあり
それを背景に神話や物語が利用されている。
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そういう意味で原初の暴力と
子どもの世界という別の意味でまた
原初の暴力であるクローマーの話しは
深い関連性がある。
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ただ、排除された者カインの印
といえば
僕がもう一つ想起するのが光源氏なのだ。
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彼は天皇の寵姫の子だったが
母が身分が低く後ろ盾がないので
「源」の姓を賜って家臣に降る。
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つまり、光源氏は
「印」を押された末子なのである。
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ここまで、連想していたことを
つなげてまとめておいた。
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結論、または問い。
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道徳とか正しいことの衣の下に
このようなものが隠れているならば
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そして、クローマーも醜悪ならば、
その子はどこへ進めば良いのか。
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